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101話 フェイマの街 10

「そ、そんな・・・全滅!?」

 ピッケは愕然としていた。まさか、物の数分で自分の精鋭たちが、無力化されてしまうとは、露にも思わなかった。

 三つ目蛞蝓はその場でぴょんぴょんと嬉しげに跳ねているし、悪魔兵兵隊長は魔法で花火を上げてるし、黒岩大蜘蛛はガチガチと足を鳴らしているし、吸血蝙蝠は、戦闘終了後すぐにロードの肩に留まると寝てしまった。

「なんじゃ、弱いのぅ。テルアなら、シヴァたち相手でも、ひけをとらんぞ」

 その言葉に、ピッケは戦慄する。どれだけそのテルアは化け物じみた戦闘力を有しているのだ。

 だが、逆にこうも思う。もしも、彼らの手助けを得られればそれは、最強の力になるのでは、と。

 ピッケの瞳に冷徹で計算高い光が宿る。

 その様を酔ったふりをしたジャスティスが何気なく観察していたことにも気づかずに。


(ふーむ。これは、少々困ったことになりそうじゃな)

 ピッケは油断ならない相手だということをジャスティスはとっくに見抜いていた。だが、自らの目的のためにはピッケを利用するのが近道と思い、あえてピッケのことを魔物たちには黙っている状態だった。躍り以外に眼中にないと言わんばかりの態度で、ナーガは我関せずの態度を貫いている。

「皆様の強さ、このピッケ、しかとこの目で見せていただきました。こんなに強い皆様に、恐縮ではあるのですが、折り入って頼みがあるのです。よろしければ、お話だけでも聞いて頂けませんか?」

 ピッケは悲しげな顔をして、頭を下げてくる。そんなピッケの演技に騙されたふりをするジャスティスと、本当に騙される魔物組。

「まぁ、皆様であれば簡単な仕事になりましょうが・・・」

「あー、わりぃ。俺いち抜けー」

 先程の戦闘でも手出ししなかったナーガが手を挙げてピッケの言葉を遮る。

「え? あ、あの・・・」

「思う存分踊れたし。俺、テルア探しに行きてぇし? じっちゃん、後よろしく」


 ピッケが何か言う隙を与えず、ナーガはさっさと広間から出ていく。

 その一片の迷いもない後ろ姿は、逆に清々しいぐらいであった。


(まぁ、そうじゃろうな。むしろ、その方が良いわい)

 ナーガが得意とするのは弓術。つまりは弓だ。しかも、今装備している弓は急所を射抜くと一撃死が発動する、凶悪無比な能力を持った魔弓だ。

 迷宮や外でならばともかく、街中での使用は危険すぎる。


 他の弓も持っているが、攻撃力が段違いに落ちるのだから、あまり使いたくないのだろう。遠距離攻撃は得意でも、ナーガは近接戦ができるわけではない。

 ナーガは、信頼できる前衛がいて、初めてその真価を発揮できるのだ。

 加えて、ナーガは思慮深く、案外用心深い。このピッケを信じている様子がないことから、手の内をさらすのをあえて避けていた節がある。

 ナーガがテルア探しを再開すると聞いて、他の魔物組もそれに続こうとしたが。


「待ってもらえませんか? あなたたちが探している人物は、どうやら私たちの探し人でもあるようです。つまり、私たちもテルアという彼の居場所を知りたい。どうでしょう? 私も彼とは話をしなければならないようですし、ここは一つ、協力しませんか?」

(ふむ。つまりは・・・お誘いということ化)

 ジャスティスが断ろうと口を開くと、そこからまるで意図せぬ言葉が出た。

「構わん。テルアが早く見つかるなら、それに越したことはないしの」

 言ったジャスティス自身が驚いた。言うつもりのなかった言葉に、魔物組はナーガを追いかけるのではなく、ジャスティスの指示に従う構えだ。

 こうなってはもうこの流れを止められない。ジャスティスは久々に自分がゲームキャラであることを思い出した。


「ロード。お主、知っておったな?」

「ん? イベント強制力のこと? まぁ、オイラこの街にはよく来るから、たまーに今のジャスティスみたくなることだってあるぜ」

 どうやら、隠しイベントが発生してしまっているらしい。ジャスティスがいくら力が強くても、一応はゲームキャラ。ゲームのシステムにまで逆らうことはできない。

 仕方ない、と腹をくくる。

 魔物組を巻き込んでしまうことがかなり不安だが、このイベントが終わるまでは付き合ってもらうとしよう。

 こうなると、ナーガの行動もゲームイベントの内だったのかもしれない。

(まぁ、テルアが起こしたイベントのようじゃし。大丈夫じゃろ。ナーガもおるし)

 ナーガとテルアのコンビは、実はものすごくバランスがいい。その二人のコンビであれば大抵の事は乗りきれると、ジャスティスは無責任にも思うのだった。


次→6/3 19時 すいません。本当に起きられない(。>д<)。8時予定変更します。

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