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幸せものさし

作者: 橙色

俺の身長は171㎝だ。

体重は日によって多少前後するものの、おおむね61~62㎏。

ちなみに19歳である。

自分で言うのもなんだが、見事なまでの平均的な値だと思う。

この俺の情報をもとになんとなくググってみたりはしたが、ほとんどのサイトで平均であった。『ド』が付くほどの、完膚無きまでにド平均、言ってしまえば普通なのである。


身体的特徴だけではない。


頭の出来も、まぁ普通なのだ。

小・中学校ではほぼ勉強せず中間ほどの成績、高校は市内では一応トップの進学校で、東京の某有名国立大学にも、年に数名受かる者がいる程度。週に1、2度復習をし、宿題も8割方真面目にこなし、テスト前は1日2、3時間勉強するというそこそこの勉強量で、得意不得意の差はあれど、合計点は平均点付近であった。普通に友人はおり、暇な放課後はカラオケに出掛けたり、時にはスポーツをしたり、皆でばか騒ぎをしたりと、それなりに楽しかった思い出はある。

そしてなんとなく自らの学力で十分な二流大学に妥協して入り、特筆すべきことのない日々を送っている。


まだ過去を振り返るには時期尚早なのかもしれないが、このような道筋を辿った者は多いと思う。個人的な思い込みなのか、それはわからない。


ただまぁ何が言いたいのかというと、俺が自分を出来る限り客観的に見つめてみた結果、なんて普通で、ありきたりで、つまらない人生を送っているのだと絶望してしまった、ということだ。

あまりに自己中心的な考えであり、まわりの人間からは、俺は現実がまるで見えていないと思われるだろう。実際そのようなことを言われてしまった。


だが考えてみてほしい。


俺のこの考えは、間違っているのだろうか。


誰もが思い浮かべるような幸福な人生ってなんだ。普通の人生が幸福なのか?あくまで俺の思い浮かべる普通の人生であるが、真面目に働く日々を過ごし、結婚し、子をなし、穏やかに老いていく人生が幸福なのか?それとも、お金持ちになり、好き勝手に生きることなのか?やりたいことを職にし、十分な収入を得、悠々自適な日々を送ることなのか?……いや、それは確かに幸福だろう。そんなことが現実に可能であるならば、何より幸福な人生であるといえる。ならばそれを追い求めることが幸福か?例え叶わなくとも。というかそもそも普通ってなんだ。誰が決めた?


幸せの定義は、各々によって違う。


それぞれが持っている、幸福を測る為の『幸せものさし』は、形も決まっていなければ、何にあてるものなのかすら定かではない。持ち主ですら、その本当の姿に気付くことはない。日常の様々なものにものさしをあててみては、あれではない、これも違う、と絶えず試行錯誤を繰り返す。


俺はもちろん、きっと他の誰にも、幸福とは何か、という問いに迷い無く、かつ誰もが納得できるような答を返すことは出来ないだろう。だか、それでも俺は知りたい。俺にとって幸福とはなんなのか、どんな人生を送ればいいのか、なぜ俺はこの世界に生まれ落ちたのか……。


命を与えられ、世に生まれた落ちたその瞬間、同時に死という避けることのできない運命を誰もが背負わされる。それなのに、人は、親は、真面目に生きろと言う。死ぬために生き続けろと。俺は一体どうすればいいのだろう。死というゴールが見えているこの出来レースで、俺は何を成せばいい。ただ生きていくことが正解なのか?それすら難しい人だっている。そんな世界を目にしたことはないが、知識としてなら知っている。だがそれでも、罰当たりだとしても、俺は思う。ただ生きるだけの人生なら、何の意味があるのか?そんな人生を歩んでから死ぬことと、今死ぬことに違いは見いだせない。


唐突ではあるが。というかこれまでの話だって唐突であったが。


だから俺は文章を書くことにした。

物語を生み出すことに、ものさしをあててみようと思った。

自らの思い描く世界を、現実にアウトプットする。それだけで何か意味のあるような気がした。

ただ生まれ、死んでいくというレースを開催したやつに、世界に、あるいはもっともっと大きな『何か』に反抗できるように思えたから。なんでもいい、ただ爪痕を残したいんだ。


そんな反抗的な態度を世に遺して、誰に知られずとも、例え本心からでなくとも、「幸せだった、ざまぁみろ」と言って、笑いながら死んでいってやるんだ、いつか。






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