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5-2

ノアが宣言すると同時に横に手を上げると、後ろにいたクロームが即座に容易していた属霊の剣を取り出し老人に切りかかった。だが老人は即座に手を魔界の棘に変えるとその攻撃を弾き返し、奇襲を難なく防ぎ憤怒の表情で声を荒げた。

『愚か者共めが何故我の存在を認めん! 我は混沌・我は邪龍。我はこの水の大地そのものの存在。何人たりとも我意思に背く事は逃れられん!!!』

「ふざけんじゃねぇ。そんな事実をそう簡単に受け止める訳にはいかねぇんだよ! 俺がその歪んだ存在ごと――糺してやるッ!!」

クロームはそう言って剣に意思を込めて波動を纏いながら邪龍に牙を剥く。

「ん、たとえどんな理由があるにせよ。人の心を踏みにじった行為を許すわけには行かない。あなたはここで再び眠って!  英霊よ。放て、フェザーアロー!!!」

ノアはすぐさま指輪に語りかけて英霊の力を使役した。

しかし連続で行われる攻撃も邪龍から放たれる水の波動によっていとも簡単に無力化されてしまう。その強大な衝撃波で壁まで吹き飛ばされる二人だったが、英霊が即座に舞いその衝撃を和らげ二人を乗せて再び邪龍に向かおうとするも、身を引き裂かれるような殺意と高まる波動によって近づく事も出来ない。

「くっ、なんて力だよ、こんちくしょう!!!」

「これが、人と邪龍ウェルクルトとの力の差? そんなの、認めない!!」

『はっ、その程度の力で我が倒せるものか! もはやこの世にエデンの民も使者も存在せん! 誰も我意思を止めるものなど存在せんのだ!!』

邪龍はそう言い放つと禍々しい光を放ちながら水晶を掲げ、宙に浮かびこう告げる。

『水晶に在りし大陸の水よ。復活の時は来た。最後の調和を今こそ飲み込み、我肉体となり共に愚かなる人類に終焉の魔の手を与えん!!!』

刹那、足元に置かれていた溢水石の結晶体がふわりと宙に浮かびだし、もの凄い量の水を吐き出すと、それらを飲み込むかのように老人の体に吸い込まれていく。そして二人がその行動を止めようと攻撃をするが水の壁に阻まれ本体までは届かなかった。

「ちっ、駄目か……。もっと爆発的な力じゃないねぇとあの障壁は貫けねぇぞノア。別の英霊星獣のエレメント化で何とかできないのか?」

「確かに……エレメント化なら何とかアノ壁を打ち破れるけど、でも英霊の余力を考えると無理は出来ない。それに鳳、兎、羊と一つの指輪で英霊は三体までしか呼べないから、学園に帰って帰還させないと新たに強い英霊を呼ぶ事も出来ない」

「つまり、八方塞って事かよ。ちくしょう!」

そうこうしている内に老人の姿は見る見るうちに水を飲み込み変化を遂げていく。

それは全く癒しを感じさせない薄汚れた水で構成された巨大な龍。しかし完全体にはなれないのか、水の壁を保ったまま不協和音にも似た言語で二人に語りかけてきた。

『愚かなものだな。ここまで肉体を取り戻せばもはや我に敵は無い。なのに、何故諦めない。何故未だに抗おうとするのだ?』

哀れみに似た感情で言葉を継げる邪龍ウェルクルト。だがその言葉とは裏腹に今度は纏う水を鞭のようにしねらせ、二人に向かって攻撃を企ててきた。

ノアは即座に召喚技によって攻撃を打ち落とすも、形の無い水はすぐにもとの一部に戻ってしまい全くというほど通用していなかった。

(くっ、一か八かエレメント化で応戦する? でも、もしそれでも届かなかったら本当に打つ手がなくなってしまう。だからといってこのまま応戦していればこの子のマナが力尽きるのは時間の問題。……はっ!)

そしてノアが思考に時間を裂いていた瞬間を狙って今まさに、天井に張り付いていた邪龍ウェルクルトの牙が振り下ろされた。

ノアはとっさに攻撃を避けようとするが、雨の如く無数に降り注ぐその牙を逃れるすべは無かった。だが最後の一本だけ避けきれないと衝撃を覚悟し波動を強めた瞬間。

「この、大バカやろうッ!!! なに呆けてやがる!」

それを庇うようにクロームの剣が水の牙を剣で切り裂いた。

しかし、物理攻撃の利かない水に対してクロームの攻撃はまさしく焼け石に水。

ノアが喰らうはずだった衝撃だけを利き腕にモロに喰らってぶっ飛ばされ、転がるようにノルンとルルのもとに落ちていった。

「ぐっ、がはあああああああーーーー!!!!」

(っ! クローム!!)

ノアはすぐさま旋回すると英霊を邪龍に向かわせ、自らは飛び降りてクロームの元に向かった。

するとクロームは腕ならず体中に酷い傷を負っており、焼けるような痛みに耐えるようにしかめっ面を強めていた。

「……ちっ、ドジった。これじゃあ、剣は握れねぇ……。ったく、何やってんだよノア!!

ここは戦場だぞ。死にたいのかよ!!」

「―――っ、ゴメン。油断してた」

ノアはそう言いながら苦渋の表情を浮かべるが、クロームはそれ以上何も言わず、左手に付けていた腕輪を外すとノアに放り投げて辛そうな表情でこう言った。

「反省しているなら、いいさ……。聞けノア。こうなったら遠慮する必要なんてどこにも無ぇ。俺がこの二人を死んでも守ってやる。お前はあの邪龍を倒す事だけ考えろ。なーに盾くらいなら腕輪なしでも呼べるからよ。気にすんなって」

親指を立てながらそう言うクローム。もちろんノアにはそれが強がりであるのは見て取れた。召喚技士にとって召喚の媒体を渡すのはほぼ生身の人間と変わらない事を示している。そしてそれを渡すという事はもはやノアに全てを託しているのを意味していた。


だからノアは、腕輪を受け取るとクロームの顔を澄んだ瞳でじっと見た後、ノルンとルルを見てこう言った。

「ん、分かった……二人とも、そのバカをお願い!!!」

ノアは腕輪を身に付けるや信じられない速度で走り出し、応戦していた英霊の背に飛び乗るとそのまま邪龍ウェルクルトの元に向かった。邪龍ウェルクルトはそんなノアを見て観念したと思ったのだろう。大きな口をあけて大いに笑い声を上げた。

『ふッははははは、もはや残すはお前だけか、力無き召喚技士よ。ならば真実に辿り着いたせめての慈悲だ。仲間共々仲良く大いなる息吹の元に送ってやろう』

言葉と同時に今までに無い波動を一点に集中させ、ノアそして遠くにいるクローム、ノルン、ルルを狙い撃つかのように標準をあわせる。

するとノアはそんな邪龍の顔付近に上昇し、静かに呟く。

「真実なんてそんなの。どうでもいいの。私はね。めんどい事が嫌い、退屈も嫌い。人と関わるのも、誰かに命令されるのも全部嫌いなの―――だけどね」

そしてゆっくりと上げた表情には全てを射抜くような瞳が輝いており、邪龍ウェルクルトを不倶戴天の如く睨み付けるとこう言い放った。

「本当に一番嫌いなのは、何も出来ず他者の想像に負ける自分が大、大、大っ嫌いなの! 

だから、あなたの想像する今に最も近い未来。私が全部――『覆して』やるッ!!」

ノアは強い口調でそう告げると即座に英霊に触れ詠唱を始める。

【――世界を統べし理の旋律よ。その声を聞き、存在を知り。かの者の姿を我身に宿らせ、

仮初の獣として内なる力を我に貸し与えん!】

『ぐははは、今更エレメントの技法などなんの役に立つ。ならばお前だけこのまま未来永劫、魂ごと転生せぬように砕け散るが良い!!』

邪龍ウェルクルトは猛る咆哮と共にそう謂うと全身を震わせ空間に鋭い氷の刃を作り出し一本の禍々しい光の矢へと姿を変えた。

そしてそれを見た途端、遠くにいたクロームは声を荒げる。

「なっ、……マジかよ! あれはノアの十八番。シルヴァント・ノヴァ? まさか、あの破壊クラスの一撃を邪龍ウェルクルトも放てるって言うのかぁ!」

クロームは即座に意思を盾に変えてノルンとルルを守るように構えた。

するとそんな行動をあざ笑うかのように邪龍ウェルクルトは言葉を吐き捨てる。

『愚か者どもめ! たかが英霊の力。混沌を携えた我が扱えぬとでも思ったか。ならばその身に味わうが良い。内なるマナよ。我敵を焼き尽くし、魂をも砕き塵へと変えよ!』

「んっ、く、はぁああああああああああああああああ!!!!」

だがノアは宙でエレメント化が終わり、大きな白銀の翼を身に宿すと攻撃もせず、今度は指輪と腕輪を目の前でクロスさせたままこう唱え始めた。

【幾戦のマナを携えし気高き魂よ、今こそ来たれ! 時空を超えて私の元へ、そして――】

途端にノアの指輪とクロームから渡された腕輪が光だし、交互に瞬きながらその波動を強めていき、指輪から出た文字の羅列がノアの体を中心に巡り今度は腕輪へと見る見るうちに吸い込まれていく。

『さあ――見果てぬ永劫の闇にその身を埋めよ! 召喚技士よ!!』

しかし邪竜ウェルクルトが放った強大な負の一撃が淀んだ閃光を帯びたまま微動だにしないノアに直撃する。激しい爆発音が木霊し微かに反れた破壊の閃光の一部がクロームの元に伸びるが、それを何とか盾でいなし飛び散った閃光は柱を悉く打ち抜き、最後には天井の残骸を跡形も無く消し去り、地上に向かって伸びていく。

そしてそこから地上にあった大量の水が押し寄せ、さながら滝の如く光景を作り出り上げ、その悪夢のような力をまざまざと見せつけられ三人は次々に声を上げた。


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