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『さてと~。まずはお疲れ様二人とも。ずっと連絡ないから心配してたんだよ』

言葉とは裏腹に明るい口調で話すフィア。するとノアは今までの状況をフィアに説明しながら協力を煽る事にし、それを快く受け入れてもらった。

『なるほど……。水が原因で両者が争うなんて悲しいよね。うん、良いよ協力する。それにこっちもその影響が強く出始めているから解決してくれると助かるもの』

「……つまり、そっちに影響がなければ手伝うつもりもないと、そう言う事」とノア。

『うっ、ま、まあ~。そうとも言うかな~』

ノアの指摘に声を裏返しながらあさっての方を見るように呟くフィア。

「ん、相変わらずのしたたかさ」

「う~。ノアちゃんも相変わらずの毒舌ぶり」

そう言い合いながら互いの性悪性格を確かめるように言葉を交わすノアとフィア。

「ははは、まあ長い話はあってからすれば良いじゃないか。今はとりあえずこっちを終わらせるのが先決だろ? 違うか二人とも?」

暫しの間。そんなたわいの無い話を黙って聞いていたクロームだったが、二人が話し始めると終わらないのを知っている為に横槍をいれる事にした。

するとしばしの沈黙の後、二人からは対照的なため息が毀れた。

「はぁ……まさか君に指摘される日が来るなんて、ん。かなり屈辱」

『はぁ~。クロ君、すっご~い。昔の人はよく言ったものよね。かわいい子には旅をさせろ。そうだよね。クロ君もやっぱり旅をすると賢くなるんだね』

「二人とも、どういう意味だそりゃあ!!」

思わず声を上げるクローム。しかもどっちも褒めていないのが悲しいと言った表情で唯一近くにいるノアを睨むが、それを無視するかのようにノアはフィアに言った。

「ともかく……。さっき伝えた通りこの大陸の一連の水枯渇騒動は【溢水石の出入り口を自在に調節出来る】【もしくはその方法を知る者がいるのが原因】とも思えるんだけど、それだとどうしても。ん、幾つかの疑問が取れない。それでフィアに頼んで確認の為にここに居る精霊とコンタクトして欲しいと思った。だから……よろしく」

『そう、話は分かったわ。それじゃあ私の意志を送るから水晶を泉に向けておいてね』

「ん……了解」

ノアは頷くと水晶を持ち泉に向けた後、自らの意思であるエマを水晶に送り込んだ。

刹那、水晶から眩い光が毀れだし泉に反射して遠い地にいるその姿を二人の前に現した。腰まである長い緑髪と少し大人びた表情。そして精霊聖歌クラスの象徴たる白のトレンチコートを綺麗に身に纏い、胸元には銀色のロザリオを身につけ振り返ると二人に向けて静かに笑みを浮かべた。

『ふふ、それじゃあ二人とも始めるね』

そして実体化したフィアはそう呟くと静かに胸元にあるロザリオを両手で握り締め言葉を唱えだした。

【――この地を織成す精霊とマナよ。女神と理の名の下に、その大いなるリアを私に貸し与えたまえ――】

すると握り締めた手の隙間から光がこぼれ出し、その光が当てられた空間から様々な球体の光が跳び出し色々な光を放ちながらフィアの周りをクルクルと円を描きだし。

【願わくば、全ての流れに奇跡の兆しを示したまえ……白の精霊セント・シェリル!】

それと共に両手を広げた瞬間。フィアの両手とロザリオを繋ぐように球体は集まり陣を描き、そこから一筋の光が泉に向かって流れ、揺らいだ姿を二人の前に現していった。

『ふぅ、それじゃあ私はこの辺で失礼するね。二人とも。後はがんばってみてね』

「ん……。お疲れ様フィア」

「早めに王都に向かうからよ。ちゃんと待っていてくれよな、フィア」

そしてそれとは対照的に水晶から光が消え、笑みを浮かべたフィアの姿が目の前から消えた。水晶に蓄えていたマナを消費して精霊の召喚技を用いた為である。

(それにしても、もう一度ここに来る事になるなんて、不思議な縁……)

ノアはそう思いながら水晶を地面に置きしばし光の集まる泉の光景を眺めていた。


《 誰……ですか? 私を意識の海より呼び起こすのは? 》

すると波紋を揺らすように静かな泉に鳴り響く声。それはどこか懐かしくそして儚げであり、ノアの姿を見て少しだけ驚いたような声色を浮かべた。

《 あなたはあの時の……では私達ウェル・アクアの声が聞こえていたのですか? 》

その声は二人の脳内に響き渡り、ノアは答えるように頷き意思を返した。

『ん、始めまして。私はノア。この大地に共に生きる民の一人。あなたをこの地に住まいリアを行う水の精霊の一人と見込み、再び話を聞かせて貰いに来ました』

《 そうですか。ええ良いでしょう。こうして人の子と話すのは往く幾年月。私としてもあなた方、小さきモノに、是が日にも伝えなければ成らない事がありますから、その言葉お受け致しましょう 》

水の精霊はそう言うとその姿をはっきりと現し二人の前に姿を見せた。

それは陽光に透けるほどの長い水色の髪と泉のように住んだ体を持ち、全てを包み込むような自愛を持った目で二人を見つめていた。

――元来精霊とは、英知の塊とされる英霊。そして純粋な人の魂により構成された属霊とは違い。太古の世界より生き続ける事を定められた人とは異なる種族である。その存在は世界に満ちるマナをリアする事により水や風、火や土の元素を作り出す力持っていた。彼らがいつどこからこの地に現れたかは正確には定かでないが、言える事は精霊とはこの世界において長き時の中でもっとも全ての流れを見てきた種族であると言う事。それ故に淀んだ嘘を嫌い、心の澄んだ者を好み、何よりも姿形は見る人の心により異なると言う事であった――

ノアは静かに頷くと自らの心に知りたい言葉を記した。

『精霊よ。私は問いたい。この地は水の大陸と聞く。だが道中あなた以外にこの大陸で水の精霊の気配を感じる事は、ん。出来なかった。それは何故?』

《 応えましょう、蒼く小さき者よ。それは遥かな昔、この地によって多くの同胞がその存在ごと、かの者に喰われたからです。かの者は今だその意志をこの大地に根付かせています 》

ノアは答えに頷くと次なる問いかけを心に描いた。

「……精霊よ。私は問いたい。この地から多くの水が消えた、それはかの者の意思が関係している。そう捉えて構わない?」

《 応えましょう、小さくも賢い者よ。かの者の意思は確かに多くの水と共に沈んでいます。しかし、その五体は今だ大陸に散らばり、強き意思のみで繋がっているのです。水はかの者を表し、かの者は水を表す。その問いかけに意味は成しません 》

ノアはその言葉を聞きながら、今までの情報を整理して納得したように頷いた。

無論、クロームも同じように頭に声は響いていたものの、その意味をさっぱり理解できてはいなかった。だがふて腐れながら首をかしげるクロームを見て精霊は静かに微笑んでいた。まるであなたはそのままでいい。そう言わんがばかりに。

『ん、分かった。では最後の問い。ウェル・アクアよ、かの者に付いて教えて欲しい』

《 ええ、応えましょう。二人の小さき者よ。かの者はほろ暗き海底より深き闇より身を起し、溢れる大地をも飲み込み、生のびる為に多くの精霊もまた飲み込みました。しかし、世界が消えた後現れし者によってその身を幾千に砕かれ、眠りに付いたと思われていました。ですが、かの者は今だ待っているのです。その身を取り戻す事を、そして再びこの世に君臨する事を 》

精霊はそう言うと、遥か遠くの空を見上げながら身を震わせこう言った。

《――かの者は混沌であり、万物の水を司るもう一つの精霊とマナの形なのです――》

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