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第19話 心眼のさとり

 "心眼"、それは心の中に有ると言われる目の存在。


 その力故に、恐れ慄かれた妖怪が一人……



長らくお待たせ致しました、第19話 心眼のさとり、どうぞ

前回までのあらすじ……



 一晩旧都に泊まった俺は、翌日にキスメ達と共に、さとり様とか言う人に会いに行く事にした。さとり様の事を聞く最中、さとり様の"ペット"の空と燐の事を聞いた。

 そして、噂をすれば影が差したのか、話の空と燐と出会(でくわ)した。その挙句に龍の勝手で戦闘を行ってしまい、空は瀕死の状態にまでされてしまった。


 まぁ、龍と戦って"瀕死で済んだのは幸い"だろう……いや待て、幸いなのか?


 そんな疑問を抱えて、空の傷を治した後に、引き続き『さとり』と言う人の下まで向かう事にした。だが俺には嫌な予感しかしなかった……まさか、な……








「き、気を付けてくださいね〜……」


 空との戦闘後、龍はキスメ、ヤマメ、パルスィのカタカナ三人組を呼び戻し、燐に恐る恐る見送られつつ再び先へ進み始めた。カタカナ三人組は先程の顔面蒼白から立ち直ってはいたものの、気配は相も変わらず死んでいた。


「おい、お前等」


「「は、はい! 何で御座いましょう!?」」


「いい加減にその面と様を如何にかしろ、目で見なくても気配で"視える"んだ、さっさと立ち直れ」


 若干の苛立ちを交えた龍の問い掛けに敬語で応えるキスメとヤマメ、一方で言葉は出ないが構えは執るパルスィのちょっと可哀想な状況を見る事が出来てしまった。龍、お前の見せた惨状で如何やって素早く立ち直れってんだ……。


 これから先が物凄い不安なんだ、不安なんだ、が、俺はどうも嫌な予感を覚えて違う不安を禁じ得ない。まさかなんてのは思わない、ただ思うのは龍では無く、中身である"俺自身"だと言う事。


 この嫌な予感を拭う事は叶わない、何よりこの予感、俺の頭の中にハッキリと浮かび上がってくる。最近どうも調子が良いのか悪いのかわからないが、何かこう、力が湧いてくる。


 それが悪い事とは言わない、寧ろ喜ぶべき事だろうな。この『力が湧いてくる』ってのは、つまり龍の力が上がってるって事も含まれているので……あれ? 喜ぶべき事なの? 龍の力が上がってるって、これ以上に上がってるって、えっ?


 ま、まぁ、そこは余り気にしない方向で、何か面倒臭いので、放置の方向でお願いします。


 と、暫くの徒歩の末、見えてきたのは地底内でかなりの大きさを誇る、教会のような西洋の建物だった。窓と言うより、『ステンドグラス』と呼ぶべき窓からは地底内でも最も怪しい光を覗かせていた。


「つ、着きました……ここが、案内目的地の『地霊殿』です……」


「なるほど、ここか」






龍、恐らくラスボスのお出ましってヤツだよな、これ……



あぁ、間違い無くな。さとり、こいつの力は、試す価値が有るだろうよ






 龍が昂ぶっているって事は、どうやら相当な相手らしい。確かに、建物からでもわかる。感知能力が上がってるかもしれないが、相手は何か"嫌な能力(ちから)"を持っている、そうだ、それも精神に関与するモノ……


「どうぞ……恐らくさとり様は帰ってる頃だと思うので……」


 地霊殿の扉をヤマメが開けて奥の道へと手を差し出す。差し出された手の先に足を運び、遂に地霊殿内部に踏み入ったところ、その内装は見た目通りと言うか、(かえ)って捻りが無いと言うか、外装まんまに教会の様相を呈していた。


 だがやはり人外(ひと)が住んでいるとわかるのが、紅魔館と同様の洋館質である事だ。しかしそれは同時に紅魔館と同様の危ない連中が居ると言う事を如実に示している事に他ならない。


「────悪いんだけど、私達はここから先には進めないわ。貴方一人で会って頂戴」


 ふと案内が止まったのは、入口からずっと奥まで進んだ先に堂々と構えている重厚な扉の前だった。どうやら案内はここで終わりらしく、後ろからパルスィが一人で会うように言ってくる。


 なるほど、この扉の先にさとり様が居るのか、一体どんな人なのだろうか。ただならぬ、とだけは確実に言えるだろうが、"この世界の事だ"、容姿は人の形を必ず成している筈だ。


 龍は口を開く事も無く、ただ黙って扉を押し開き、中へ入って行った。入った部屋は黒? いや白? 否、どの色を探しても当たらない不気味な色をした部屋の中心に、紫髪の幼い少女が日の光のような眩しい明かりの射し込むステンドグラスの窓を背に佇んでいた。


 少女は扉が重い音を立てて閉まるのと同時に閉じていた目蓋を開き、龍の姿を真っ直ぐ見詰めた。ふと目に入ったのは少女の胸の辺りに浮かぶ"赤い玉のような何か"。その赤い玉からは、何本も配線(コード)が伸びていて、それぞれ一本一本が体の一部に繋がっている。


 すると、赤い玉は『目蓋』のように開き、その中身を覗かせた。見ると、赤い玉の中には"眼球"らしき白く中心に模様の入ったガラスのような透き通った球体が有り、まるでこちらをじっくりと見ている様だ。






何だ、あの赤い玉……本物の目みたいにリアルだ。まるで心の中を見られている気分だ……






「えぇ、その通りです。私は今貴方を『視ています』」


 俺は驚いた、突然言葉を発したと思ったら、『こちら』の言葉に合わせて喋っている。普通ならば『突然何を独り言を』の言葉が掛かるくらいだが、俺は面と向かってその言葉を吐きつける事は断じて出来ない。






まさか、『読んだ』のか? 『さとり』の能力(ちから)は、まさか、心を見る能力なのか?






「察しが良いと言いますか、素晴らしい洞察力ですね。そうです、私の能力は『心を読む程度の能力』、読心能力です」


 間違い無い、的確に『こちら』の言葉に返答出来ている、俺の、龍に投げ掛けた筈の言葉が、読まれている。そんな俺を余所に、龍は俺の問い掛けに応えないどころか、口を開こうともしない。


 俺を無視、と言うより、状況判断をすると、どうやら龍は既にさとりの能力に気付いていたようだ。恐らくは、名前を耳にした時"くらい"かなり前から察しはついていたと思われる。


「なるほど、本来の"貴方"と今の『貴方』は別のようですね。差し支えが無ければ御名前を教えて頂けませんか?」






俺は拳咲 龍神、龍の中に居る……なんだ、えっと────本体です、一応。






「俺は龍神、名の通り、"龍の神"だ」


 心の中身を読み取れるって事なら、俺の言葉が彼女には聞こえてる筈だ、なので俺は龍を通す事無く自己紹介を敢行した。と、名前を聞いたさとりなる少女の様子が急に変わり、表情が素人目でもわかる程変化していた。


 ズバリその表情とは、目前の存在に抱く『恐れ』だ。


「……龍神、拳咲 龍神さんですか……。どうやら、龍神様であるのは間違い無いようですね……まさか、目の前に幻想郷の最高神が居るとは、恐縮の至りです」


「おいやめろ、まるで目上に対して相手しなれてない奴の中途半端な礼儀正しさは要らねぇ。話すのは面倒だ、察してみろ心眼使い」


 龍の荒い言葉にさとりは『わかりました』と一言だけ口にして、こちらに向けて"(まなこ)"を翳して読み取り始めた。数秒後、さとりは驚愕の後に真剣な面持ちに変わった。


 え、ってか、あれ? 龍が察しろって言ったなら俺にも考えがわかる筈なのに、何で龍の声が聞こえないんだ? おかしい、何かがおかしい。っつか、こいつ考えを別個に出来る器用な真似が出来たのか……


「────わかりました。私で良ければ御相手致します。その代わり、手加減が出来ませんが、構いませんね?」


「当たり前な事を抜かすな、無論本気で来い、暇潰しくらいにはなってもらうぜ」


「承知しました、しかしその前に遅れた自己紹介をさせて頂きます。私は古明地(こめいじ) さとり、この地霊殿の主です。では、行きます────」


 龍の自分勝手な行動にて、再び戦闘と相成り、その最中で緊張と不安を感じている俺だ。何か嫌な予感がする、龍じゃない、事の方向は俺だ、俺はさとりに『触れてはいけない』気がする……








続く

次回、東方龍神録、復活版──第20話 耐えるべき痛み です、お楽しみに


次回は龍では無く龍神君がピンチ!?

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