7月8日の死
1、序盤は、会話文がありません。
2、この物語は主に自論を元に造られています。
以上のことを頭に置き読んでいただけると幸いです。
今日、7月8日。俺、斎原 敬斗は・・・・死んだ。
〆
それは、いつもの今日だった。 朝起きて、一人でダラダラしている。 そんな何気ない、いつもの日常の1ピースだった。
その日、俺は外に出たんだ。 特にいく宛てもなく、ぶらっと散歩に行くみたいに。
適当にコンビニにでもいって、立ち読みでもして帰ってこればいい。 そんなこと思って、ひょいっとサンダルで外にでたんだ。
7月。
じめじめとしていた梅雨も終わり、日差しがジリジリと照っている。 ちらほらと蝉も鳴き始め、緑がいっそう生い茂る。それが7月。
高校生になって二度目の7月だった。 別に、7月にそんなに思い入れがあるわけじゃないが・・・そうだな、7月といえば『夏休み』か。
世間一般で『リア充』とか呼ばれてるやつがそこらじゅうに出没する時期、それが『夏休み』。
俺は、リア充なんて存在とは間逆の世界を生きている部類の人間だ。だから夏休みを楽しみだとは思わない。
学校でも一人、家でも一人、ずっとそうやって生きてきた。 別に悲しいとか、寂しいなんて思ってない。 慣れてるからな。 それに一人の方が楽だ。 へんな気使わなくて済むしな。
だから、俺はこの安穏たる日常を崩さない。 登校日であろうがなかろうが関係ない。 俺はただ、ダラダラゴロゴロと過ごすだけである。
というわけで、夏休みまであと2週間と迫る今日、日曜日。 7月8日午後12時、ダラダラと外に出てきたわけだが・・・暑い。 今日みたいに日がさんさんと輝く日に、熱中症対策せずに外になんて出るんじゃなかった。 戻るか? いや、コンビニに言って涼んだ方が効率がいいか。
直射日光を肌に感じながらヨロヨロとコンビニというオアシスを求めて歩く。 道路には陽炎が見え隠れしている。
そんな俺の右手には松林。 左手には、水遊びをする子供たちが見える。 微笑ましい限りだねぇ。
いくら一人が楽とはいえ、やはり無邪気に遊ぶ子供たちの笑顔は見ていて心が和む。 俺には幼いころの記憶がないから、ああやって水遊びをしていたかなんて知らない。 興味もない。 ただ、
どうして俺は一人なのだろう。
確かに一人は楽だ、さっき俺が言ったように。
けど、幼いころの記憶がない俺には、なぜ身内がいないのかがわからない。
俺は時々、そんなことを思う。
そして、松林を過ぎて少しいったところにあるコンビニ。そこが俺の目的地だ。
家からそう遠くはない距離だ。 けど、この日差しの中帽子もかぶらずに日向を歩いていると、汗をかく。普通に疲れるし、「暑い!」と叫びたくもなる。でも、俺はそんなことに体力は使わない。 もったいないじゃないか。 限りある体力だ有効利用しないとね。
横断歩道で立ち止まった俺は空を仰いだ。 雲ひとつない青い空だ。 たしかこういう空を『快晴』というらしい。学校で習った。
視線を戻すと、信号は青に変わっていた。
コンビニで何を読もうかと考えながら、鼻歌交じりに横断歩道を渡る。
信号が点滅しだした、少し早足になる。 うっとおしい信号だ。点滅すんじゃねぇ、焦るだろ。
そもそも、信号なんて誰が考えたんだ。 大発明だな。 嫌いだけど、信号。でも実際のところ、信号できて7割ほど事故が減ったらしい。 学校で習った。
横断歩道を渡り終え、コンビニが見えてきた。
日曜日の昼。 ファミレスじゃないが、混む時間帯だ。 もっとも、ファミレスなんか行ったことないからどのくらい混むのかわかんないけど、結構混むらしい。これも学校で習った、気がする。
案の定、コンビニは平日のときより混んでいた。 毎日のようにコンビニに通っている俺が言うんだ間違いない。
いつもよりたくさん停まっている車の間を抜け、コンビニに入る。
全身に駆け抜ける冷気。 冷房が効いているのが身にしみてわかる。 さすが我がオアシス。
とりあえず、漫画コーナーへと舵を取る。 どうやら店内は大変賑やかなようだ。 当然、漫画コーナーにも人はいる。 40歳ぐらいのおっさんもいれば、小学生くらいの小さい子まで。 今日も漫画は絶好調のようだ。
適当に、そこら辺のやつを手に取る。 毎日のようにコンビニに通っている俺だが、手に取る漫画なんて適当だ。 前と同じものでもあれば、違ったりもする。 だから、その漫画のストーリー性は全くといっていいほど理解していない。 『ストーリーを覚えるための脳内メモリーを使うだけ損している』と、俺は考える。 実際、今回手に取ったやつも前とは違うものだった。 でも、そんなことは関係ない。 どうせ内容なんて理解していないし、しようともしてないのだから。 だから俺はその漫画の一節一節に描かれた内容を楽しむ。 それだけで十分に満足できる。 どうせたわいもないただの立ち読みだ。 少し満足できたのなら、それで十分だ。
俺は漫画を数分読み、2、3回ほど鼻で笑うと本を棚に戻した。
俺は漫画が面白かったら、サンドウィッチを買って帰るのが日課だ。
今日のはそこそこ笑えたので、いつものように190円のたまごサンドを買って帰ろうと食品コーナーに舵を取った。
食品コーナーにつくと、棚がすっからかんになっていた。 日曜日の昼、恐るべし・・・。
買おうと思っていた、たまごサンドはなく唯一レタスサンドだけが棚に残っていた。
しょうがないので、190円のたまごサンドをあきらめ、40円高い230円のレタスサンドを手に取り、レジへ持っていった。
毎日のようにコンビニに通っている俺にとって店員の人は隣のおばちゃんみたいな存在だ。
俺は230円をレジに置き、さっさとコンビニを出た。
体にのしかかる日差し。 足取りが重い。
オアシスを出た俺は、店内と外の温度差にやられかけた。
暑い。それ以外の言葉が出ない。 8月になったらどれほど気温が上がるんだ、どうにかして対策を練らねば・・・。
俺はレタスサンドを左手にそのまま抱えて、来た道と同じ道を帰った。
そして差し掛かる横断歩道。 信号。
運良く青だった信号をゆっくりのっそりと渡っていた。 そのときだった、
俺は車に撥ねられた。
唐突に、ただ唐突に。
  
全身が軋む様に痛い。 体が宙を舞い、地面にたたきつけられる。 言葉も出せず、心の中で痛いと呟くだけで精一杯だった。
俺、死ぬのかなぁ・・・。 いや、もう死んだのか・・・。
薄れ行く意識の中そんなことを思った俺が最後に見たものは、自分の身体から流れ行く真っ赤な『血』だった。
そして俺は、意識を失った。 撥ねられてからほんの数分、いや数秒で、俺は・・・・死んだ・・・・。
まさに一瞬の出来事だった。
瞬きする間もないとはこのことだ。
・・・・・だから信号は嫌いなんだ。 事故がいくら減ろうが起こっていることに変わりはない。 0%じゃないんだ・・・。
こうして、俺の儚い人生が幕を閉じた。 道路に散らばったレタスと共に。
次回は1ヶ月後ほどになると思います。
読んでいただいた方、有難う御座いました。




