沙織の障害
翌日いつもの場所に沙織は気まずそうに立っていた。
「おはよう!今日はいいもの持ってきたんだ!」
美夏は昨日のことを気にしていないようだ。
「おはよう。で、いいものって?」
美夏はバックの中をゴソゴソ探して、一冊の本を取り出した。
『相性チェック!友達関係と恋愛』キャラクターのちりばめられた本だった。
「これは、誕生日で占うやつなんだけど、まだ学校まで時間あるからやろ。」
「うん。まず美夏の誕生日は私の一週間後だから・・・で、あの人のは?」
「みどりの日だから・・・えっと相性は80%だって!!」
美夏は真剣に嬉しそうだ。
「やったじゃん!」
「えっと沙織と、お相手は・・・。」
「あの人は、10日前に誕生日だって騒いでたよ。」
「てことは・・・95%!!!すごい!」
無邪気に喜ぶ美夏に結果と自分を重ね合せてみた。
友達の梨沙としゃべっているとたまに話に入ってくる。
昭とはそういう間柄だ。
全くの知らない人ではないが、親しい友達でもない。
「ねぇ。聞いてよ。男子達がしゃべってたんだけどうちらって恋愛対象外だって!ひどくない?」
梨沙がそういうのを聞いては怒ったふりをしながらも心の中で溜息をついている。
確かに沙織はルックスがそんなに良いという訳ではないし、運動も得意ではない。
「おっ、なに話してんの?」こういう話題の時に限って昭が入ってくる。
「あのね。うちらが恋愛対象外とか言われてるから。ひどいねって。」梨沙解説するんじゃない!!
「確かに、恋愛対象っていう感じじゃない。・・なんて言うかあの頭がいい人ってだけかもしんない。」
昭の発言はザックリささった。
梨沙は「私はどうなのよ!」と怒っているけどもうどうでも良かった。
沙織は定期テストに於いて3年間学年トップの成績だ。
テスト前に頼られたり、難問を解かされたり、高校レベルの問題でも解ける。
でも、みんな一目置くことはあっても、恋愛対象?
やっぱり堅く見られてるんだろうな・・。
(ある意味手の打ちようがないな。)
また心で溜息をついた。
(95%の相性か・・私は良くない5%に入っているんだな・・)
悲しいけどそれを事実と受け取ろう。
そんな心のうちを見透かされないように明るく「学校行こうか!」と振る舞って、美夏と一緒に駆け出した。
自分でも痛々しいと感じた。