転移
目を覚ますと知らない世界だった。空は青く、木々が生え、元気よく鳥が囀っている。
「ここはどこだ?」
俺はスノー魔王と呼ばれる存在だった。俺の世界では魔法と化学が発展していた。結果戦争の規模は大きくなり一個人が持てる戦力も大きくなった。そんな世界で最強と呼ばれている存在が魔王だった。科学の発展により環境破壊は進み、魔法の実験で生物のほとんどは消え去った。緑も青も存在しない。鮮血の赤と灰色で彩られた。そんな世界だった。
この世界はまるで違う。だが魔力は存在する。何が起こっているのか分からなかった。俺は自分の記憶を遡る。
・・・
「飽きた」
「どうされましたか?魔王様」
「飽きたと言ったのだ」
魔導書も読み漁り、己より強き存在は未だ現れない。自然の存在しないこの世界ではやれることも狭い。
「あれを試すいい機会だ」
俺はメイドについてくるなと命令し、地下の実験室に入った。最近は魔法の実験などやっていなかったから埃まみれだ。だがそれでも構わない。
「よし、これでいいだろう」
俺は地面にとある魔法陣を描き出した。それは転移の魔法陣。だが普通の転移ではない。世界規模の転移だ。世界を乗り越えて別世界に移動する。実験をしたものはいたが帰ってきたものがいないためいつしか誰も研究しなくなった魔法。俺もその1人だった。唯一俺が諦めた魔法とも言える。普通の魔法なら失敗程度どうということはない。だがこの魔法だけは失敗すればそれで終わり。理論上は可能でも実際自分に使うにはリスクが高い魔法。奴隷などを買ってやらせてもいいが、それじゃあ失敗か成功かがわからない。だから最後まで残った。
「成功すればこの飽き飽きとした世界からおさらば、失敗すれば…わからないがまともな終わりではないだろう」
この魔法にはいくつか問題点があった。一つ目は世界の狭間を乗り越えること。狭間の存在自体は認知しているがそれを魔法で乗り越えた人物は未だ存在しない。乗り越える時に膨大な魔力が吸われることだろう。これの解決策としては、通常の転移魔法に吸収の魔法を足して、狭間を越えられるようになるまで自動的に俺から魔力を吸うように設計した。次の問題は肉体だ。狭間を越えた時、肉体が持たない可能性がある。これに関しては魔力結界でどうにかするしかない。身体強化では無意味になる可能性が高い。魔力結界にいくつも効果を付与しておく。これで多分大丈夫…だと思いたい。最後の問題は魂だ。これに関しては魔法でどうこうできる次元ではない。もちろん魂に干渉する魔法もあるにはあるが、それはあくまで干渉だけ。魂を守るにしてもどのような攻撃が飛んでくるかがわからない状況では防御の張りようがない。だから魂もさっきと同じような対策を取る。思いつく限り全ての効果の付与。俺でなければ数百単位の魔術師が死ぬレベルの魔力を使わなければ転移は愚か付与すらまともにできないレベルの魔法だ。これで失敗なら人類は軽く見積もってもあと数千年は世界を超える転移はできないだろう
「どうなることか」
俺は魔法陣の中心に立ち魔法陣に魔力を入れていく。ものすごい勢いで魔力が吸われていく。結界が完成した。この時点で俺の魔力の十分の一が溶けた。狭間を超える方法がもっとわかればまだまだ改善の余地はありそうだ。そしてついに転移魔法を発動させた。
一瞬、体が…否、魂が揺れたような感覚を感じた。それと同時にものすごい勢いで魔力が吸われていく。多分狭間に到達したんだ。魔力がなくなっていき、久方ぶりの魔力不足というものを感じる。そこで俺は気絶してしまった。
・・・
とこのような流れまでは覚えている。そして目を覚ますと見知らぬ土地にいたということは転移は成功ということなのだろう。
「ふむ…いい結果だ。」
俺が立ちあがろうとした瞬間、頭痛と立ちくらみ、吐き気などが一気に襲いかかる…
「あれだけの魔力を使ったんだ…それに狭間を越えた…これぐらいは当然か」
おそらく後者の原因が大きいだろう。やはり俺が思いつく限りの全ての魔法結界の付与でも足りなかったということだろう。だが生きているということは既出の魔法でも大部分は防げたということだ。これは大きな発見だ。あとはゆっくり実験をしていき、狭間を解明すれば、俺は更なる高みへ行ける。
「これはいい展開d」オロロロロロ…
狭間の実験は危険だと思い知るのであった。




