光速の絶望と音速の風切り
注意
当方法律や物理、歴史等に詳しい訳では無いので違和感を感じてもフィクションってことで優しく見守っていただけると幸いです。
プロローグ
西暦2086年、人口の増加とともに異様なスピードで発展した世界。過疎地域と呼ばれるものはなく、高層ビルが箱に並ぶブロックのように敷き詰められている。自然など幾年も前に消え去ってしまったが技術力により室内で自然界で育つよりも質の良いものが無数に育てられるようになった。様々な資源も同様だ。核融合がメジャーな技術となり、空には人工太陽が浮かんでいる。生きる人々は不自由無く過ごしていた。2040年頃、世界共通言語として英語が使われるようになり言語の壁というものもなくなった。しかし、そんな平穏が長く続くわけがない。
第1章 絶望
西暦2086年5月22日、澄んだ空に全長60mの飛行生命体が飛来した。
仮名:unknown(以降個とする) 全長60m 全身が白く、巨大な羽と爪を持っている。目や鼻、口などは無いもののかなり人間に近い造形をしている。四足歩行。
意思疎通を試みようとした愚か者もいたが意味をなさず骸となっていた。むしろその行為が逆鱗に触れたのかしばらくは大人しくしていたがしばらくしてビルを粉々にし始めた。人々は混乱し、地下シェルターに逃げ込もうとするが個の前には意味をなさず、愉快な惨殺劇と化した。
第2章 邂逅
西暦2086年6月3日、人口が100人をきった。2週間前までは360億人が過ごしていたこの星がたった一つの生命によりこの有様だ。そして今日、個が消えた。なぜかは分からないが、我々にとっては好都合である。そうだ、自己紹介を忘れていた。
私は浅見 凪。24歳、男だ。
今はこの暗く、酸化して黒くなった世界で生きるために足掻いている。エネルギー供給が途絶えたこの世界の人工太陽はもう無い。本物の太陽は人工太陽ができた翌年、意図的に壊してしまった。しかし不思議なことに寒さは感じない。我々は数百年前より生命としても発展していたのかもしれない。とあるビルに入る。ここは食物を栽培していたビルらしい。なすが実っていた。それに手を伸ばす。
「あっ、」
「あっ、」
冷えた手と手がぶつかる。このあたりにはもう人はいないと思っていた。見たところ13歳くらいの少女だろうか。頭で情報を整理していると彼女が恐る恐る口を開く。
「あ、あの、ど、どうぞ...」
さすがに少女にここまで気を使われてしまっては顔が立たない。おそらく数日のうちに両親や親しい人を失っているはずなのに、こんなことを言える彼女に興味が湧いた。
「いや、君が食べな。向こうにも実っているから私はそちらをいただくよ。かわりっていうのも変かもしれないけど、君のことを教えてくれないかな。」
「う、うん、ありがとうおにいさん、!私はね...」
東雲 澄。13歳、女性。
第3章 希望
なにか不思議な雰囲気をまとったこの少女と共にすること3日。彼女についてわかったことは記憶が混濁していて自分の名前くらいしか分からないということ。しかし言語は理解しているようで不思議だ。パニックによる記憶障害だろうか?私は彼女が強い子なのだと思っていたが違うのかもしれない。本能として弱い彼女を守るために彼女の脳みそが情報をリセットしたのかもしれない。しかし、それゆえにこんな世界では長く生きられないかもしれないが彼女を守ってあげたい、そう思った。
「澄、何をしているの?」
「ねぇねぇ凪さん、これって食べれるの?」
「それは食べられないよ。ほら、こっちにトマトがあるぞ、これは食べられるから。」
こんな世界だ。誰かといるだけで安心するのは必然だがかなり心を開いてくれているようで嬉しい。しかし、会話の通り、本能的な部分の常識も欠落しているように思える。
「どうだ?おいしいか?」
「酸っぱい...!あまい!!!!!」
「そうか、良かったな。」
「凪さんは食べないの?」
「さっき食べたからな。澄に沢山食べて欲しい。」
意外なことに味や概念については思っていたよりも理解しているようだ。例えば色だとか、高低、重軽などだ。それにしてもそろそろシャワーを浴びたいな。温かくなくてもいい。せめて、水浴びがしたい。
「なぁ、澄。このあたりで水がある場所は知らないか?」
「知ってるよ!こっち来て!」
「ここは...温泉施設か。あれ、?温かいぞ、!」
この時代には珍しく源泉から湯を取っていたらしい。このあたりは食物も多く、温泉もあるときた。しばらくは生きていけそうだ。
「澄、先お湯浴びてくるか?」
「え、?なんで?」
「人間は体についてる汚れを水で流さないと病気になっちゃうんだぞ。」
「そうなんだ、よく分からないから凪さんがやって!」
まったく、世話の焼ける子だ。
近くにあった桶を取って少しお湯をかけてやると、
「これすごい!!!気持ちいいね!」
「そうだろう?じゃあ次は頭流すぞ。目を閉じてろよ。」
「うん、!」
そこらに散っているシャンプーの容器をとる。
「今から頭洗うからそのまま目を閉じてろよ。」
「、?分かった!」
澄を洗い終わったあと、私も自分の体を洗う。鉄錆のような臭いと皮脂の酸化した臭いが落ち、一気に気が楽になった。そんなこんなで2人とも綺麗になり、すっきりしたところで眠気がかなり限界だ。温泉施設だと思っていたが実は旅館だったらしい。布団がある。いつも地面で寝ていたからこれはありがたい。
「澄、眠いだろ。ほら、ここに寝転がれ。」
使えそうな布団がひとつしかないので添い寝のようになってしまった。しかし、人肌というのは心地よく、温かく、熟睡してしまうくらいには快適だった。
第4章 追憶
朝、と呼べるような空模様ではないが十分に睡眠を取り、目を覚ます。しかし、横に澄がいない。
「澄〜?どこだ〜?」
かなりの大声を出したが返事はない。途端、落ち着きを欠く。たった4日前に出会った少女にここまでの感情を持っていることに驚きつつ、しかし、私が守るって決めた少女だ。
その頃、澄はとあるビルにいた。私と初めてであったビルだ。彼女はなすの前で座り込んでいた。
「こんな世界にしたのはあなたなのよ?」
「誰!!!!!さっきから!!!!!私は何も知らない!何もしてないのに!!!!!」
彼女はあたりを見回す。しかしそこには誰もいない。
「そんな可愛らしい姿になっちゃって。何がしたいの?」
「...っ!」
彼女の頭にとある映像が浮かぶ。目の前でビルが崩れていく様子だ。いいや違う。彼女自身がビルを殴りつけ、人を淘汰していく様だ。
「もう気づいているでしょう?」
「知らない、こんなの知らない、知らない!!」
「嘘をつかないで。譚ア髮イ 貔�さん。」
その瞬間、彼女は全てを思い出す。まさに彼女自身が個であること。彼女は人類と手を取り合いたかったこと。自身の力を見誤ったこと。人類が弱いこと。自分の姿を恨んだこと。目の前の息のない少女になりたいと願ったこと。
「どうだった?あなたが望んだ姿は。」
「幸せだったよ。とっても、だからもう少しだけこのままでいさせて。」
「いいわよ、あと2日だけね。私は優しいから。」
第5章 残光
「澄!!澄!!!!」
「凪さん!ただいま!!!」
「澄!どこに行ってたんだ!!心配しただろ!!」
「見て!なす取ってきたよ!!!」
「まったく心配させるなよ。でも、ありがとな。」
頭を撫でてやると少し照れているようだ。
「えへへ、あ!そうだ!ねぇ凪さん。私あのビル行ってみたい!」
めずらしく建物全体が綺麗に残っている。おそらく複数人の生存者はこの建物にいたんだろう。出会ったことはないが。
「あそこか、何があるんだろうな。行ってみようか。」
「やった〜!はやく!!はやく!!!」
かなり広くて別々に探検しようということになった。事務所のようで中々物資として役立ちそうなものがない。それにしてもビルがなくてこんなに高いと見晴らしがいいと思い、すこし外を眺めていると信じ難いものを目にする。逆さまになって優しく微笑んだ東雲澄だった。風切り音が耳をつんざく。目に入る情報、聞こえる音、脳みそが理解を拒んでいる。
「澄、澄、、!すみぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
一気に1階まで駆け下りる。
「は、?」
そこには服でかろうじて判別できるようなまるで原型のない東雲澄が横たわっていた。即死だろう。守れなかった。守ることを拒まれた。それならば私の人生にもう意味などない。せっかくなら同じ場所でおんなじ死に方をしよう。そう思い、ビルの屋上に行く。そこには1枚の紙切れとたんぽぽが添えてあった。
「凪さんへ
私の本当の名前は譚ア髮イ 貔�です。あなたたちには個と呼ばれていましたね。とある事情で私は記憶を取り戻しました。この世界をこんなふうにした私の責任は重いと思います。私はあなたたち人類と仲良くしたかった。でも、自分の力を把握していなかったのです。ごめんなさい。怒ってください。私なんて死んで当然なのだから、自分を責めないでください。なす、おいしかったよ。色んな食べ物、気持ちいいこと教えてもらったよ。私はとても素敵な4日間を過ごせた!本当にありがとう。凪さん、どうか、生きてね。」
「なんだよこれ、!なんだよ、、」
私は、それでも私は、
最終章 共生
たんぽぽと共に飛び降りる。私は少女を許さない。私には東雲 澄が勝手に居なくなってしまうことが耐えられなかった。
西暦2086年6月7日 浅見 凪
東雲 澄 死亡
個 完全消滅
エピローグ
人類は必然というように絶滅した。地球のガンはようやく無くなったのだ。地球はとても喜んでいた。
あとがき
読んでくれてありがとう!
短編小説って難しいね!!!!!
でも書いててとっても楽しかったです!
言葉足らずなところとかあると思うけどご愛嬌で!




