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第四話 迫り来るにんじん

 こんにちは。まったく(自分の)恋愛フラグが発動しないヒロイン(自称)です。

 先日、無事に交際開始(?)した村崎君に「改めてお礼を言いたい」とラインで呼ばれ、ただいま再び学校帰りのファーストフード店inヒロインでございます。

 いやいやヒロインポジじゃねーだろむしろ恋愛相談される友人ポジっつかもうこれ恋愛地蔵じゃねえか、と真剣に悩んでいた私は気づいた。気づいてしまった。

 私は神様にこう願ったのだ。


「行く先々でイケメンに出会うイケメンパラダイスな人生プリーズ!」


 よく考えたらイケメンに愛されまくる逆ハーやりたい、と一言も言ってない。

 イケメンと恋したい、とも一言も言ってませんでしたうっかり!!!

 確かに間違ってない!イケメンには会いまくっている!ただ私とは恋愛フラグが建たないだけ!

 ちくしょう契約不履行だ!いや、契約の穴を突かれた!

 まさかこのまま私はひたすらイケメン(ただし同性に恋をしている)に出会い続ける宿命なんじゃなかろうな!と頭を抱えていたら村崎君が来て「なにやってんだ?」と怪訝な顔で聞かれた。

「きみに言われたくないよストーカー」

「お、おう。

 悪い」

 しまった思ったまま言っちゃった。まあ村崎君も自覚あったのか謝ってくれたけど。

 つか椅子に座った村崎君の前に置かれたトレイに載ったハンバーガーの数えぐいな。さすが運動部男子。食い過ぎ。

「まあ助かったぜ。

 おまえのおかげで兵藤さんと付き合えたし」

「むしろ私はなぜストーカー行為から交際に至るというアクロバット展開を見せたのか神様に聞きたい所存」

「オレは身辺警護をしていただけでストーカーじゃねえ!」

 いや自覚なかったな。ストーカーの自覚なかったな。

 さっきのは私が阿修羅みたいな顔してたから反射的に謝っただけかい。


「やはりおまえのせいか」

「「ぅおあっ!?」」


 とかやってたらいきなり頭上で怨霊のような声が響いて二人そろってびびってしまった。

「って赤坂!?

 びっくりさせんなよいつの間にいたんだよ幽霊かよ!

 むしろ新垣かよ!

 声かけろよ!」

「どうした赤坂君!

 顔とオーラが怨霊みたいだぞ!

 あと村崎君、新垣君にさりげないどころじゃなくド直球で失礼だからその言い方やめよう!」

「うるさい今声をかけたのだよ。

 むしろおまえのせいだ村崎!」

 飛び上がりかけた私たちをそっちのけで、赤坂君はなんかめっちゃ据わった目で村崎君指さして言い放った。

 犯人はこいつだ!みたいな指さし方だ。まあ確かに村崎君は「おまわりさんこいつです」だったけど!間違っちゃいないんだが!

「いや意味わかんねーよ!」

「確かに村崎君を犯人呼ばわりしたい気持ちはわからなくも、いえ、詳しい事情はなにもわからないから経緯を説明していただきたいけど、確かに村崎君はおまわりさんこいつですだわ」

「ひでぇ!」

 率直なコメントしたら村崎君がショック受けた。

 ストーカーは黙ってらっしゃい。

「なぜこいつがうまくいってオレがフラれたのか理解が出来ないのだよ!

 これはもうおまえの呪いのせいだ!

 おまえのせいなのだよ!」

「ひでぇ風評被害だな!」

「言いたいことはわかるんだけどさすがに暴論が過ぎるわ。

 いや半分以上正論ではあるけど」

 私は「さすがにそれは飛躍しすぎ」と一瞬思ったがよく考えると正論だと気づいた。

 だってなんであれでうまくいっちゃったんだ村崎君は。

 なんか村崎君が「おまえほんとひでぇな!」とか騒いでるけどスルーします。

 だってあれほんとに「こんなの絶対おかしいよ!」だもん。

「って言うか待って。

 え?

 フラれたの!?」

 いっかい普通にスルーしてしまってから気づいた。気づいて叫んだ。

 え?フラれた?鷲尾君に?

「ああそうなのだ!

 おまえがうまくいってオレが失恋するとかこの世の理不尽だ!」

 赤坂君はそう叫んでテーブルに突っ伏した。

 まあ、うん、すごい気持ちわかる。

 だって原作読んだ私から見ても、エスパダの中で特にまともなのは赤坂君と鳴瀬君だと思うのだ。

 努力を怠らず、チームのエースと認められ、最後は仲間と一緒に勝利を目指した。

 まさに青春。

 赤坂君なんてとんでもない努力家で仲間たちに認められた最高のエース様。

 そんな彼が失恋して、練習サボりまくってストーカーまがいのことした村崎君が成就する。

 うん、おかしいな。

「あの、赤坂君。

 言ったらなんだけど、鷲尾君は極めて普通の感覚の持ち主だったんじゃないかしら?

 ストーカーの告白を素直に受けちゃった兵藤さんは妖怪だから仕方ないのよ」

「おまえひでぇなマジで!」

「はっ、つまり鷲尾は人間だからうまくいかなかった、と…!?」

「だから兵藤さんは人間だよ!

 たぶん!」

 混乱の極み状態だったせいで謎のフォローをしてしまった私に、混乱状態で思わず納得(?)してしまった赤坂君。

 ただし村崎君は言い切ってやれよそこは。たぶんなのかよ。

 しかしどうした恋愛フラグパイセン。

 かつてないほど仕事が早いな。むしろ仕事失敗してないか?

 ガチで笑えないやつじゃないかこれ。

「というか、告白しちゃったんだね。

 ほんとに」

「いや…」

「いや?」

「カラーリング的ににんじんみたいな195センチのイケメンのことは好みかと聞いた」

 吹いた。

 いや吹いたわ。真顔でめっちゃ睫毛ばさばさのイケメンにこれ言われて吹かないやついる?

 村崎君も「ブッフ!」って吹いたわ。気持ちはわかる。

「待って!

 ちょっと待ってにんじんってどゆこと!」

 腹筋崩壊しかけながら叫んだ。いやだって意味わからん!

「あれだたぶんユニフォーム着たらカラーリングがにんじんになる…!」

「ああ髪色が緑で胴体がオレンジだと…!

 あとさりげなく自分でイケメン言うな…!」

 村崎君の言葉に納得はしたような気がするが腹筋は重傷になった。

 やめろ殺す気か。笑いすぎて腹が痛い。息が出来ないよパトラッシュ。

 確かに赤坂君の高校のユニフォームはオレンジだからな!確かに赤坂君が着たらカラーリングがにんじんになるな!

「へ、返事は?」

「呼吸困難に陥りながらにんじんは無理と言われた」

 赤坂君は死霊のような表情と声で答えたが私と村崎君は笑いすぎて死にそうである。

 ヒーヒーいってる。めっちゃ死にそう。よかったファーストフード店、ほかに客いなくて。いたら笑いの二次災害があちこちで起こるわ。とんだにんじんパンデミックですよ。

 どうにか十分後に笑いが収まってから、私は真顔で言った。

「ごめんそれそもそも告白だと認識されてない」

 ごめん赤坂君、それ告白の様相を呈してない。伝わってないのだよ。

「鷲尾ってあの笑い袋的なやつだろ?

 それたぶん最初のにんじんで腹筋崩壊してそのあと頭に入ってねーと思う」

「私でもそれ言われたらにんじんのあと頭に入らないわ」

 村崎君も同意してた。そりゃそうだろ。

 にんじんが出た時点で腹筋崩壊するよ。そのあと頭に入るわけねーだろ。舐めてんのか。

「おまえそれでよくオレをバカに出来たな!

 おまえのほうがひどいっつの!」

 なんか村崎君が笑いながら言ってるけど私に言わせれば五十歩百歩です。

 むしろやらかし度合いはきみが百歩のほうや。

「つまり、オレは失恋していないということか!?」

「ないない。

 仮にフラれたとしてもフラれたのはきみじゃなくにんじんだ」

「フラれたにんじんって意味わかんねーよどんなパワーワードだよ」

 私の言葉にまた村崎君が軽く吹いたけど私も意味わかんないよ。なんでにんじんがフラれる事態になるんだよ。にんじんが解せないよ。

「わかった!

 では仕切り直す!」

「え、仕切り直しってなにを、ってちょ、赤坂君。

 まさか」

 すちゃ、とスマートフォンを手に持った赤坂君に私と村崎君はびっくりした。

 え?まさか今すぐ告白のやり直しする気か!?

 どうやらそのまさからしく、赤坂君は鷲尾君に電話すると繋がった矢先に、

「鷲尾。

 告白はにんじんではなくオレだ」

 無駄な決め顔で赤坂君はそうおっしゃった。イケボで。

 私と村崎君は吹いた。電話の向こうでも「ブッフォ!」ってイケボ聞こえた。

「今、盛大に噴出した声が聞こえたんだが」

「私もだよ。

 スピーカーでもないのにばっちり聞こえたわ」

 笑いを堪えながら言った村崎君に私も同様の状態で答える。

 スピーカーにしてないのに電話の向こうで鷲尾君が腹筋崩壊してる声が聞こえるんだが。なにやってんだ赤坂君。

「だからにんじんではなくオレだよ!」

 とか必死で訴えてるな。きみが崩壊させているのは鷲尾君の腹筋だ。鷲尾君の腹筋に追い打ちをかけるな。むしろとどめ刺すな。

「赤坂君ストップ。

 タンマ。

 貸して!」

 いかんこのままじゃ鷲尾君が笑い死ぬ、と察した私はどうにか赤坂君からスマートフォンを借り、耳に当てた。

「ごめんなさいお電話変わりました。

 東京国際の元マネで旭丘マネのものです」

 極めて簡潔に自己紹介したら鷲尾君の笑いが止まった。

『え、なんで?』

 いやそうだよね。なんでおまえが赤坂君の電話に出るんだって話だよね。

 私もこんなカオス空間に居合わせるつもりはなかったんだわかってわかれよわかってくれ。

「いやさっき赤坂君の告白を聞きまして、いやあの、赤坂君のことで大事なお話が」

 あ、やばい。笑いすぎたせいで頭が回ってねえ。腹筋崩壊しすぎたせいで言いたいことがまとまらねえ。にんじんの威力が強すぎた。

 とか焦ってたら電話の向こうがしん、と静まりかえった。

 あれ?

『…いや、いいよ』

「鷲尾君?」

『赤坂に告白されたとか、わざわざオレに言うことじゃないし。

 赤坂がいいならいいんじゃない?』

 そう言って鷲尾君は電話切っちゃった。

 あれ、つか、名前の「九郎ちゃん」呼びじゃなく「赤坂」呼びになってたな?

「…あれ、なんかすっごいテンション低いっていうか声低かったんだけど、なんか私マズった?」

 私はそこはかとなくやばい予感がして村崎君をうかがう。

 村崎君はなんとも言えない顔をしていた。

「あのよー、おまえ笑い過ぎて頭回ってなかったんだろーけど、さっきの説明、おまえが赤坂に告られた報告みたいに聞こえね?」


 ……………………………………………………。


「あーっ!

 あーっ、ちがっ、困ります鷲尾君困りますアーッ!!!!!!!!」

 しまったそうだよそう誤解される言い方しちゃったよ私のアホ!

「ああああああああああなにやってるのだよおおおおおおおお!」

「いやそもそもおまえがにんじんとか言わなきゃそいつもやらかさずに済んだんだぞわかってるか!?」

 ムンクみたいに叫んだ赤坂君に村崎君がド正論!

 ツッコミありがとう村崎君!この恩はあと一時間くらいは忘れない!

「あああああああああああもううううううう仕方ないのだよ直に会いに行って仕切り直してくるのだよ!!!!!!!!」

「そうだ行け赤坂!

 走れ赤坂!」

「メロスみたいに言うな村崎君。

 その場合、セリヌンティウスは誰になるんだよ」

 頭を抱えたあと鞄を掴んで立ち上がった赤坂君に村崎君が叫ぶがそれはなにかちがうぞ。

 いや間違ってはいないがメロスみたいな言い方やめろや。

「オレが好きなのはにんじんではなくおまえだと言って来る!」

 そして赤坂君は謎のパワーワードを置き土産にファーストフード店を飛び出して行った。店員さんが吹いた。

「だからいい加減にんじんから離れろ!」

「もうにんじんはいいよ!」

 村崎君と私が叫んだけどたぶん聞こえてないなあれ。

「あ、鷲尾君に今からにんじん、じゃない赤坂君が行くから動かないでって送りたいけど番号もアドレスも知らん」

「にんじんって言うのやめろよ。

 オレ、知ってるからラインするわ」

「あ、ラインやってるんだね。

 鷲尾君と」

「新垣に聞いてさあ、あっ」

「えっ?」

 スマートフォン操作しながら話してた村崎君が謎のやらかした声をあげた。

 えっ、何事?

「今からにんじんが行くからその場から動くなって打っちまった」

「アホ!

 おまえもにんじんて言ってんじゃん!」

「だってしょうがねえだろあいつがにんじんにんじん言うから!」

「まああれは洗脳されるけどな!

 え、送っちゃった!?」

「ちゃった」

「送り直して!

 大至急!」

「えー、あっ、やっべ!」

 私の声に急かされ、村崎君は再びスマートフォンを高速で操作しはじめ、また謎のやらかしましたボイスをあげた。

 オラなんかめっちゃ嫌な予感するぞ!

「待ってさっきの以上にヤバいのあんの!?」

「にんじんが惜しくば動くなって送っちまった」

「人質かよにんじん!」

 もうなにがなんだかわからないよ!こんなの絶対おかしいよパート2!

 そして店員さんが死んでいます(笑いすぎて)。ほんと奇っ怪な客で申し訳ない。

 もう追いかけて誤解を解きたいがそもそも鷲尾君の居場所知らないしな!

 赤坂君はどこに会いに行ったんだろう。普通に自宅とかだろうか。

 そう現実逃避しながら待つこと数十分。


「あ、赤坂から報告来た」

「プリーズ」

「『オレが好きなのはにんじんではなくおまえなのだよ』と言ってきたって」

「だからいい加減にんじんから離れろや!」

「『オレもにんじんよりは九郎ちゃん好きだよ』って言われたってけどこれ通じてねえよな?」

「ないな!」


「赤坂はもううまくいったつもりでいるけど」と村崎君が言うのでこのあとめっちゃ必死で誤解を解きました。

 鷲尾君は死ぬほど爆笑したのち赤坂君とお付き合い了承してた。

 うん、やっぱりきみたち五十歩百歩だ。


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