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ホワイトスパイダーリリー  作者: 夜鳥すぱり
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2


 あの奇妙な出会いから、数か月俺は希望大学に無事合格できた。


 神様はやっぱり俺が良いことをしたと判断したに違いない。あれは人助けだったはずだ。命を救ったのだから、当たり前だ。良いことに違いない。絶対そうだ。そうだったら、そうだ。


 しかし何故か夜な夜な、あいつが夢に出てきて俺を殺しそうな目で睨み付ける悪夢にうなされる日が続き、合格発表の日まで寝不足に陥るはめになったが、晴れて合格するとあんな共通テストの日も、まぁ良いではないかと気楽な気分になってくるから不思議なもので、あれも、青春の一ページと思えば、悪夢もみなくなった。単純なものである。


 四月に入り、入学式のため、無事に合格した大学へと向かう。俺はあんまり目が良くない。本を読むのが好きなんだ。気づいた時には視力が落ちてて……まぁ、そんなわけで、目が良くないが、講堂の最前列にいるあいつを……見つけてしまったのだ。


 「ひぃっ……同じ大学っ! 」


俺は身震いをした。まさか、学部は違うだろ? 嫌な汗がスーツの中に流れる。

 入学式典が始まり、校歌やら学園長の挨拶やらが続き、生徒代表の挨拶。教頭が高らかに声を張り上げ、生徒代表の名前を読んだ。


 「代表、楠木静(くすのき しず)


 すると呼ばれあいつが「はい」と立ち上がり壇上へ。幾分、小さなどよめきが起こる。中には、「おい、あいつ」なんて声も。

 俺はスーツの中が、もはやずぶ濡れなくらい冷や汗をかいていた。


 (め……メガネをかけて来て良かった)


 幸い、あいつの強烈なインパクトのお陰で、俺を覚えているやつはいなさそうだ。

 汗をかきつつ、あいつに目が吸い寄せられる。


 静て名前なんだ。ちょっと性別が判別しずらい名前だけど……男? だよな。


 俺はあの日、メガネかけてなかったし、きっとアレがないのは、見間違いだったんだなと、処理してきたが。


 「うーん、わからん」


 式典がつつがなく終わり、今すぐ帰りたい気持ちで一杯だったが、指定学部の教室へいかねばならないと言われ天を仰く。くそ、逃げられない。今後の授業選択の説明を聞く必要が有るからだ。



 とりあえず、庭にでて自販機から、ホットコーヒーを選択し一服。

 悪い事なんか何もないみたいな、青空を見上げながら、俺の吐く憂鬱な息が見えそうだと思った。あの時は寒くて白い息さえ怨めしかったっけ。


 「邪魔なんだけど」


 いきなり、横からなじられ、は?と思って振り向くと、

 そこには、楠木静様が、あの可愛らしい大きなお目めで、俺を見上げ睨んでいた。


 「げっ! 」


 俺は、一歩、いや二歩退いた。その分、ずいっと近寄る静。


 「……何か……ご用で?」


 しまった。うっかり話しかけてしまった。しかも召し使いみたいな返事を。だが静は、俺の言葉など鼻から気にしてない風で、ずいっと俺に向かって封筒を差し出した。


 「これ」


 と静は、早く受け取れと言わんばかりに、その封筒を俺の手に無理矢理掴ませた。


 「え?」


 何の封筒だろうと恐る恐る中身をみると、1万円札が入っている。


(つ、つまり俺って、ばれて……る?)


 「な、なんだろうか? このお金は? 」

「要らないのかよ」


 むすっとしたまま静が言った。


 「え? くれるの?い、いる……かな」


 つまり、あの時のお金を返してくれると言うのだろうか。恐る恐る、俺は万札を受け取った。俺が、素直に受け取ると、静はプイっと、俺が入る予定の教室へ入って行った。


 うげぇ、学部も同じか。メガネ、意味なかった。めちゃくちゃ、気づかれてるし。でも、どうせなら、五千円も返して欲しかった。


 物凄い脱力感が一気に襲いかかる。あぁ、帰りたい。



 仕方なく、あいつの入って行った教室の扉を開け、なるべくあいつと離れて座った。

 しばらくして、随分よぼよぼ、もとい、お年を召した教授が入ってきた。


 「え~皆さま、今日はご入学おめでとうございます。私は経済学部学部長の長沼です。え~これから、皆さまは当大学の大学生となり学園生活を送る訳ですが……」


 長沼教授の話も上の空。俺は今、非常に窮地にたっていた。

 なぜなら隣の席の奴が、興味津々といった顔で俺をガン見していたから。


「ねぇ、君、共通テストの日、あいつ助けた奴じゃない?」


 (わーー黙ってくれ!)


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