1章8話 チンピラに絡まれた!
キタァー‼
「はい、なんですか」
「Dランクになったそうだな。俺はCランクのヴェストールだ。早速だが、先輩である俺がたっぷり指導してやる……」
そういっていかにもチンピラっぽい奴が話しかけてきた!
コレコレ!
こういうテンプレ的なのを待ってたんだよ!
いやー不謹慎かもしれないけど、やっぱりギルドと言ったらコレだよね!
「ヴェストールさん……。またですか……。もうじき新人いびりを禁止するルールができますので、時が来たらまとめて清算してもらいますよ!」
ギルドの上層部は無能じゃないらしい。
少なくとも新人が来なくなりそうな事案は見過ごさないようだ。
「うるせぇ! ルールができるまでは違反じゃないんだ! 好きなようにやらせてもらう!」
[……ッ!」
まだルールがないのでセリアさんは何もできないようだ。
「おいお前、俺が相手に……わかった」
ケイデンさん達は僕のサインに気付いて道を譲ってくれた。
こんなイベント逃すなんてもったいないからね!
「面白い! やってやろうじゃないか!」
「じゃあ早速くら……グエェ!」
彼が言い終わる前に足をけって転ばせ、床に叩きつけた。
背中を踏んで首に手刀を当てる。
はい、僕の勝~ち!
「ちくしょう! どきやがれー!」
どうやらまだ負けを認めていないようだ、じゃあ……。
「はい、さよならー」
そういって僕はドアを開けて外に向かってヴェ何とかを外に投げ、ドアを閉めた。外から悲鳴が聞こえた気がしたが、そんなことは気にしない。
「……アル、お前って結構えげつないことするな……」
「フフッ、私もちょっと彼に同情してしまいました」
どうやらえげつなかったらしい、まあいっか!
「すみません、私が何とか出来ればよかったんですが……でもこれに懲りてももう辞めるといいのですが……」
セリアさんは悪くないよ、まああいつが懲りることはないと思うけど。
そうして、ヴェ何とかと遊んだ(アルティマ基準)後、シャドーウルフのお金を受け取ろうとしたが……。
「ギルド鑑定課のグラーツだ、申しわけないんだが、ギルドとしてあのシャドーウルフを調べなくてはいけなくなった。調べた後は値段も上がるから支払いは少し待ってくれないか」
(アイザ、どうしてこうなったの?)
(どうやらシャドーウルフの魔化の痕跡とルーウェンさんから聞いた出現した時間帯、場所が気になるようです)
じゃあ、仕方ないか、まあお金は追加でもらえるみたいだしいいか。
「ええ、いいですよ」
「助かる! 金額には期待しておいてくれ! 上司に言って必ずいい値を付けさせる!」
そう言って、グラーツさんは急いで戻っていった。
そのあと、僕は冒険者の先輩である二人に宿のアドバイスを求めた。
「では、改めておすすめの宿を教えてもらえませんか?」
そう聞くと二人は少し考えた後に口を開いた。
「そうだな…うーん、思いつかん! ルーウェン頼む!」
どうやらケイデンさんには心当たりがないみたいだ。
「はぁそうですねえ、アルさんの実力からしてすぐに稼ぐことができると思いますので、天のゆりかごなんてどうでしょう」
「なるほど、確かにあそこは新人からしたら銀貨五枚と高いが、その分サービスが良いからな。だが、今日はもう遅くて依頼に出られそうにない。シャドーウルフの金はまだだし、アルはまだ仕事を引き受けていないが、そんな金あるのか?」
一応エルヴィス君にもらったのがある。
ただ、あれは記念に取っておきたいから他にお金が欲しいな。
「あるにはありますが人から貰ったお金なので、やっぱり自分で稼いだお金で泊まりたいんですよね」
二人はかなり悩んでいる。
どうやらそこの宿代を新人の僕が一日で稼ぐのは難しいらしい。
「ああ、そこまで考えてもらわなくても稼ぐ手段はあるので大丈夫ですよ」
そう僕が言うと二人は驚いたようで、感心したように口を開いた。
「へ~そんな手段をもう用意してるなんて、一体何をするんだ?」
「大道芸です」
「「大道芸?」」
それからしばらくして……。
「よっ! は!」
そうしてギルドを出た後すぐ隣で大道芸を始めた。
プラズマエネルギーで必要な道具を作り、右足でボールに乗りながら、右手で傘を回しその上でボールを転がし、左手で棒を二本持ちその上で皿を回す、そして左足でボールを蹴り続ける。
「いつもより多く回しておりまーす!」
一回これ言ってみたかったんだよね~!
夢が一つ叶った!
「いいぞ~!」
「もっとだ~」
「すごい!」
「とんでもない技術だな……」
「「………」」
ケイデンさんとルーウェンは驚いて声も出ないらしい。
そうして大道芸を続け、合計で銀貨五枚分のお金を手にいれた。
「すごいな…これで食っていけるんじゃないか?」
「宿代簡単に集まってしまいましたね……」
「まあ、食べていけますが一応冒険者になったので、せっかくだしこれからは冒険者らしく稼ぎたいなーと思ってます。では宿屋に行きましょう!」
「そうか……まあ、飯の種が多いのはいいことだしな。気にしないでおこう……」
「……では、天のゆりかごに案内しますね」
ルーウェンさんに連れられて、天のゆりかごについた。
一階建ての小綺麗な建物だ。
よく清掃が行き届いている。
「ここですよ。では、私たちはこれで失礼しますね。」
「じゃあな! アル!」
そう言って二人は帰っていった。
その後、宿屋に入ると従業員と思しき女性が元気よく挨拶してくれた。
「いらっしゃいませ! ようこそ宿屋天のゆりかごへ! 一名様ですか?」
「一人ですが、部屋は開いていますか?」
「はい! 開いておりますよ。料金は朝食、夕食付きで銀貨五枚、お部屋だけで銀貨四枚ですが、いかがなさいますか?」
やっぱりこの土地の食事が食べたいし、食事つきかな。
「ご飯付きでお願いします」
「では、料金の銀貨五枚をいただけますか? ……銀貨五枚確かに頂きました! こちらお部屋の鍵になります。朝食は朝の鐘が鳴る時間帯、夕食は夜の鐘が鳴る時間帯で、お部屋は手前から二番目です。どうぞ、おくつろぎください!」
階段を上がって部屋に入ると、六畳ほどの部屋に机、イス、ベッド、そして魔石を使った洗面台まである!
そうして夕食の時間に食堂に行った。
今日の夕食は、パンと魚のムニエル、魚介スープだった。
おいしくて、これだけでこの宿に来てよかったと思う。
ご飯の後、寝る前にアイザと雑談したりした後、ふわふわのベッドに寝転んで就寝した。
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