1章3話 エルヴィス君の家へ
夕方が近くなり、綺麗な夕日が見えている。
僕たちは、数分ほど歩きエルヴィス君の家に到着した、開拓中の村にしてはなかなかいい家だ。
「ようこそ我が家へ!さあさあアルさんどうぞ中に入ってください」
そういってエルヴィス君がドアを開けると質素だが決して安くないであろう内装が目に入ってきた、開拓中の村の貴族の家としては十分だろう。
……使用人や執事がいないことを除けば。
「では、アルさんご飯を作るので少々お待ちください」
そういってエルヴィス君はご飯を作る準備を……、え、まって、貴族の、しかも家主であろう人が調理するの⁉︎
こういうのって雇った料理人にやらせるもんじゃないの⁉︎
「待って、普段からエルヴィス君が調理してるの?」
「ええ、父が使用人を一切つけなかったのでやるしかないんですよ。料理の腕はまだまだつたないですが精一杯頑張りますね」
いやいや、さすがに泊まらせてもらうのにご飯まで作ってもらうなんて申しわけない!
「エルヴィス君実は僕、料理できるんだ。ここは客人である僕に任せてくれないかな?」
「ええ⁉︎ いいんですか? 正直まだ慣れていないんでそんな僕が作った料理をお出しするのは正直嫌だったんですが……」
謙虚だな~。
「よし! じゃあ、決まりだね。作るから、エルヴィス君は座って待ってて」
「はいそこに食材が入っているので自由に使ってください」
えーっと、これは冷蔵庫か?
……なるほど、中に魔力の結晶である魔石を入れることで中を冷やせるようになっているのか。
それにこっちは魔石を使ったコンロか、まあ焼くのは自分のやり方でやるとして、問題は冷蔵庫の中身だな。
ふむふむ、でっかい肉に畑でとれたであろう野菜にパンにしそみたいな香草か。
うん、じゃあ今日はシンプルにステーキサンドと野菜スープにしよう。
じゃあまずはプラズマブレードで材料を切って……、肉は球状のプラズマシールドを発熱させた中で均一に焼いてさらに香草をプラスして臭みを消す!
「よし、できたよエルヴィス君! ステーキサンドと野菜スープだ。ささ、食べて食べて!」
そういって料理をエルヴィス君の前に置いた。我ながらおいしそうだ。
「わー! おいしそう……、では、いただきまーす」
そういってエルヴィス君は僕と一緒に料理を食べ始めた。
(……少しがっつきすぎじゃないか? それに、そろそろ感想の一つや二つほしいな~なんて……)
(大丈夫ですよマスター。マスターの料理の腕は一級品なんですから。それにあんなに食べているんです、まずかったらあんなに食べませんよ)
そして、そんな僕の不安をよそにエルヴィス君は食べ終わったようだ。
「すごいおいしかったです! このステーキサンドは肉が均一に焼けていて肉汁もたっぷりある。それに、この野菜スープも野菜が柔らかいし野菜のうまみが出てきたスープもおいしい。こんなおいしい料理を作れるなんてアルさん凄いです!!」
よかった。どうやら満足してもらえたようだ。
そして食器の片付けも終わり僕はエルヴィス君にこの大陸のことを教えてもらうことになった。
「まず、ここは大陸の中央付近にあるアードリアン大樹海開拓村、通称アードリアン村です。そして、この村は樹海の南にある平原森林国家コルニーに属しています。他に四つの国がありますよ」
へー、この大陸には五つの国があるのか。どの国も特色があるのかな?
「そしてこの大陸の主要な通貨は石貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、ミスリル貨、オリハルコン貨ですね。各貨幣十枚で一つ上の貨幣一枚の価値を持ちます。まあ、オリハルコン貨なんて国の取引ぐらいでしか使われないので一般の人が見るのはよくてミスリル貨までですね」
オリハルコン貨か、いつか見てみよーっと。
「あと、貨幣の流通は教会が担っています。教会は聖魔法が使える人が多いですが空間魔法が使える人も多いです。各地の教会には空間魔法使いが常駐していて貨幣を転移させて輸送することで貨幣の価値が変わらないようにしています」
何そのトンデモ教会……、めちゃくちゃ政治的に重要じゃん……。
「そして、この大陸の人類の人種ですが、人族とドワーフ族、エルフ族に獣人族、そして数の少ない鬼族などの人種がいますね。これらをまとめて人間もしくは人類と言います」
へー、結構たくさんの種族がいるんだね。
「この村にはありませんが町にはたいていの場合鐘があります。朝の鐘と朝中の鐘、昼の鐘に夕の鐘、そして夜の鐘があります」
そうしてこの世界の情報を色々学んだ。
そして夜も更け、そろそろ寝る時間となった。
「ではアルさんは、この部屋を使ってください」
そういって案内されたのは六畳ほどの部屋だ、よく清掃されていて綺麗な部屋だ。
「ありがとね、エルヴィス君。今日は疲れたでしょ? ゆっくり休んでね。おやすみ~」
「はい、おやすみなさいアルさん」
それから、エルヴィス君や村のみんなが寝静まったころ……。
「マスター、この世界はどうですか?」
「とても面白そうだよ! 僕が想像する異世界って感じ! ……よし、じゃあ明日に備えて寝るか。おやすみ、アイザ」
「おやすみなさい、マスター」
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