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1章16話 アイザと食事

 お昼ご飯をどこで食べるか迷っていると、アイザがちょうどいいレストランを見つけたようだ。


「あそこがおいしそうです。マスター、入ってみませんか?」


 アイザの誘いに乗り、中に入ると筋骨隆々の店長が声を掛けてきた。


「らっしゃい! 二名か? 空いているところに座ってくれ」


 豪快な店主が元気に出迎えてくれた。 

 言われた通りに空いている席にアイザと並んで座る。


「お客さん、何にしやす?」


メニューを見るにどうやらここはパスタ専門店のようだ。


「じゃあ、僕はボロネーゼで」


「私はアラビアータでお願いします」


「あいよ! 少々お待ち」


 そう言って店主はパスタを作り始める。

 専門店だけあってパスタに関してはかなりの腕があるらしい。

 しばらく待った後、注文したパスタが来た。

 とてもいい匂いがして量もかなりある。


(うん、パスタと具がよく絡み合っていておいしいね!)


(ええ、塩加減もちょうどいいです。当たりを引きましたね、私の目は狂っていなかったようです)


 そうして、パスタを食べ終わって料金の銅貨八枚を払い店を出た。

 腹ごしらえも終わり、何か二人で依頼を受けようかと考えていたら、路地裏で子供二人が襲われているのが見えた。

 しかも襲っているのはアイザが戦ったヴェス何とかの取り巻きではないか、捕まったのにまた性懲りもなく人に迷惑をかけているらしい。


(アイザ、衛兵呼んできて)


(了解しました、マスター。すぐに呼んできます)


 アイザが、衛兵を呼びに行くのを見ながら、連中にケンカを売るために感情を切り替えてから子供の前に出る。

 口調が変わって荒くなるがこいつらなら別に気にしなくていいだろう。


「おいお前ら! 俺の連れを襲った挙句、今度は子供を襲うとは大した根性しているじゃないか。今度は俺が相手になってやる、かかってこい!」


「じょ、冗談じゃねえ! あいつと同じくらい強い奴の相手なんてしていられるか!」


 そう言って彼らは、僕が戦うまでもなく逃げて行った。

 ……アレ? 逃げちゃった……。

 何だ……拍子抜けしたな。

 どうやらヴェス何とかよりも情報収集能力があって、学習能力も高いようだ。

 それにさっきのことが相当なトラウマになったらしい。


「ありゃりゃ、逃げれちゃったか。君たち大丈夫?」


「だ、大丈夫。助けてくれて、ありがとう……ございます」


「あ、ありがとうございます……」


 どうやら、まだ襲われた恐怖から抜け出せていないようだ。


「ああ、そんなかしこまらなくていいよ。僕はアルティマっていうんだ、アルって呼んでよ」


 できるだけ子供たちを怖がらせないように明るく、子供っぽく話しかける。


「じゃあ……ありがとう、アル兄。僕の名前はレジー、こっちは妹のイリス」


「イリスです。よろしくお願いします!」


 どうやら少し心を開いてくれたらしい。


「レジー君とイリスちゃんだね。よろしく! 取り敢えずここを出ようか」


 それからレジー君とイリアちゃんを連れて人気の多いところに来た。

 あとはアイザと衛兵を待つだけなので、暇つぶしにさっきのことについて聞く。


「二人は一体どうしてあそこにいたの?」


「実は……お母さんが病気なんだ。あの人たちに話を聞かれたのか、良い薬があるよ分けてあげるって言われて、付いていったらなんでもいいからとっとと金出せって急に言ってきたんだ」


「私達お金なんて持ってないのに……」


 なるほど、まあ二人とも服はよく洗われていて奇麗だしお金持ってるって勘違いされたのかな?

 それとも他に理由があるのか……まあいいや、過ぎたことは気にしないでおこう。


「あー、それは大変だったね。でも、もう知らない人について行っちゃだめだよ? いい?」


「うん、もうあんな奴らに付いていかない! イリスまで危険な目に合わせちゃったし、もうこんなのこりごり……ごめんねイリス、馬鹿なお兄ちゃんで……」


「そ、そんなことないよ。お兄ちゃんあの人たちが危ない人ってわかった時から私のこと守ってくれていたじゃん。そんなこと言わないで!」


 兄妹仲いいなーと思っているとアイザが衛兵を連れてきたようだ。


「君たち! 大丈夫か、怪我はないか?」


「うん、悪い人たちに襲われたんだけどこのお兄さんが助けてくれたんだ」


「アル兄ちゃん凄いんだよ! 悪い人たちが慌てて逃げ出したんだもん!」


 あはは……それは虎の威を借りると言うか、アイザの威を借りると言うか……まあいいや。


「そうなのか。君、子供たちを守ってくれたんだね。感謝する。じゃあ君たち、おじさんが家まで送っていくからこのお兄さんとさよならをしてくれ」


「えー⁉ やだ! アル兄ちゃんと一緒にうちに帰る!」


「こらイリス! 我が儘言わない。アル兄だって、用事があるかもしれないだろ?」


 レジー君しっかりお兄ちゃんしているじゃないか、感心感心。


「ああ、僕なら大丈夫だよ。ちょうど暇だしね」


「いいの! やったー!」


 良かった、どうやら喜んでくれたらしい。


「いいの? じゃあ、イリスが喜んでいるからお願い!」


「お二人とも、私もついて行っていいでしょうか?」


 そうアイザが言うとイリスちゃんが少し警戒しながら聞いてきた。


「お姉さん、誰?」


「このお姉さんは僕の相棒のアイザだよ! 怖い人じゃないから安心していいよ」


「アイザです。このお兄さんの相棒です。よろしくお願いします」


 僕がアイザが危険じゃないことを説明すると二人とも警戒を解いてくれたようだ。

 それから二人に連れられ家の前までやってきた。

 親御さんへの状況の説明は、衛兵さんが買って出てくれた。

 説明が終わった後、衛兵さんは詰所に戻っていった。

 親御さんは説明を聞くとすぐさま頭を下げ、感謝をしてくれた。


「子供を助けていただきありがとうございました。私はこの子たちの母のシェリ……ゴホッゴホッ! シェリルです……すみません」


 シェリルさんは具合が悪いのか言い切る前に咳き込んでしまった。


「む、無理しなくても大丈夫ですよ、シェリルさん。僕の名前はアルティマです。アルって呼んでください」


「アルさんですね、大したおもてなしもできませんが、もしよろしければお連れさんも一緒にご飯を食べませんか?」


 僕は食事量に制限がないからまだ食べられるし、何よりこの家の家庭料理には興味あるけど……シェリルさん具合悪そうだし無理していないかな?

 倒れられても困るんだけど……。  


「アル兄ちゃんと一緒にご飯食べたい!」


「アル兄、お母さんが倒れないか心配しているんだろ。お母さんの代わりに僕が作るから安心して食っていってくれ!」


 ……レジー君お見事、大正解。

 よく僕の思っていることを言い当てたね、凄いや。

 シェリルさんはそう聞くと申し訳なさそうにしながらレジー君に聞いた。


「レジー、いいの? 無理していない?」


「大丈夫だよ! 料理はお母さんのお手伝いで何度もやっているから。お母さんは休んでいて」


 そう聞くとシェリルさんは嬉しかったのか若干涙目になりながら、じゃあお願いするわね、と言った。


「レジー君がそこまで言うならいっしょに食べようかな」


「やった~! じゃあアル兄ちゃん、家に入ろう!」


 そうして、イリスちゃんに連れられて三人の住んでいる家に入った。

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