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20/21

part20

「どうやら二人は分かったようですよ。兄さんももう少し考えてみますか?」

「もういいっす」

 観念したのかぐったりと肩を下げ、聞き役に徹することにするようだ。

「つまり、第一の犯行こと毒殺の犯人は彼女だったというわけでしょう?」

「僕も言いたかったのに」

「そうですね、そうだと思います。人を殺した直後にぐっすりと眠れる人間なんてそうそういないですよ。化けて出るんじゃあないかと怯えるのが普通の反応です。だから彼女も亡霊という言葉が出たのでしょう」

「じゃあつまり、毒殺の犯人は斎藤優香で決まりなんだな?」

「百パーセントとは言えませんがそうだと思いますよ。犯行に使用されたワインは貴重な品だったらしいですし、若い妻に開けてとねだられれば開けてしまうのが男の性というものらしいですし」

「なるほどな、動機はなんなんだろうな」

「お金にがめつい人らしいですし、遺産関係とかですかね。そこらへんまで求められても期待には応えられませんよ」

「ああ、とりあえずは分かった。それで?」

 とぼけたようにおうむ返しする玖音。

「それでとは?」

「決まっているだろう。毒殺の犯人は分かった。であれば次は刺殺の件だろう」

 もちろん玖音とてそこに触れるつもりではある。

「斎藤義人を殺したのは斎藤優香です。であれば、刺した時点で彼は死んでいたことになるでしょう。死んだ人間を刺したのでは果たして殺人罪は適用されるのですかね。犯人は見つかったのですからこれで一件落着でも良いのでは?」

「良いわけあるか。殺人未遂でも何でも罪にかけてしょっぴいてやる。悪い冗談はやめてさっさと教えろ」

「分かりましたよ、兄さん相手には一度煙に巻かないと気が済まないのですよ。私自身子供っぽいとは自覚しているのですが、なかなかどうしてやめられそうにもない」

 玖音は何でもできてしまう、特に社交性がある兄に対しては劣等感を抱いているのだその意趣返しとして意地悪をしてしまう。それが自分の品位を落としていることはとうに理解しているのだが、やめられそうにもない。

「そして話を戻しますが、刺殺? の方の犯人は目黒芳江だと思います」

「それはどうして?」

「ほら、給仕服ってひらひらしていてクラゲみたいに見えませんか?」

 ひらひらと手を泳がす玖音。

「全く見えないが」

「安心しました、見えたとしたなら末期です。真昼に良い眼科、いえ精神科を紹介してもらわなければいけないところでしたね」

「他の人の服装に比べてそうだという話なんだろうが、それにしても無理があるだろう」

「私も無理があると思いますが、当時の彼女の状態はかなり劣悪なものだったでしょう。おそらく、彼女にとってクラゲは恐ろしいものという認識なのでしょう。小さい頃海に行って刺されて溺れ死にそうになった経験があるとか、そういった潜在意識が彼女にそう幻覚を見せた。それにスカートのひらひら具合と深夜三時というだけあって周りは暗かったことでしょう。役満とは言いませんが満貫くらいは条件はそろっているのでは。鰯のかしらも信心からとも言いますし、いえこの場合幽霊の正体見たり枯れ尾花ですかね」

 今の説明でも清は納得しきれていないのか難色を示す。

「う~ん、なんだかな~。斎藤優香の時は納得できたんだけどな。クラゲとか支離滅裂なこと言っていたし、彼女の精神状態がそう見させたというのはなるほどな~~って納得できるのだけれど、その相手が目黒芳江とまでは確定させられないのではと思ってしまうんだよ。まあ、毒殺の件の犯人を見つけれくれただけでこっちとしては諸手を挙げて喜べるのだけれど、あとは警察に任せてくれればいいよ」

「そうですね、あとは警察の出番だと私も思います。であれば一応、私の考えていた補足理由についても聞かなくても良さそうですね」

 いけしゃあしゃあと清をからかう玖音。

「玖音、少し清さん相手に煽りすぎじゃあないか? 確かに清さんは可愛らしい反応を見せてくれる人だけれど、清さんだって情けない思いを噛みしめて仕事のために玖音に頭を下げているんだ、そんな子犬に目の前のお肉を取り上げるような真似を何度もしなくてもいいんじゃあないか」

「フォローしてくれようとしてくれる気持ちは嬉しいが、葵君。全然フォローになったないからね。むしろ葵君が本気で俺のことを子犬のように思っていることが知れて逆に傷つけているからね」

「そうですね、葵の言う通り少しは優しく接してあげないとだめですね。いいでしょう、教えてあげます」

 もうどうてもいいやというような感じで感謝を伝える清。

「ウン、アリガトネ~~」

「肝は毒殺犯と違い、ターゲットが斎藤優香さん、斎藤義人さん両名共であることです。三兄弟や斎藤塔子は斎藤義人に対し、恨みを抱けど彼女に対して恨みを持っているわけではないでしょう。斎藤優香を襲う理由として刺殺の現場を見られたなどの偶発的な理由ではないのだとすれば、犯人は彼女の殺害に明確な殺意や目的があったと推測されます。それに、彼らはお金には興味が無さそうですので白であるとみて良いでしょう」

「なるほど、消去法か」

「あと、彼女斎藤義人さんと肉体関係にあったのかもしれませんよ。そりゃあ、ぽっと出の金目当て丸わかりの自分よりも若い女にコロッといかれれば殺したくなる気持ちも生まれるというもの」

「へぇ、そうなのか。なんでそう思うんだ」

「反応的に、そうだと思っただけです。女の勘ってやつかもしれませんね」

下手くそなウインクを披露する玖音。

「探偵の勘だと思うぞ、俺は」


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