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Episode.05「目覚めの前兆」

主な登場人物


・セザール....本作の主人公の1人。“解放者”



特殊戦術チーム第7チーム“ズィープトシュトルム”


・ベルナール....本作の主人公の1人で男性兵士。援護班所属。“破壊者”

・エレクトラ....女性兵士。中核班所属。隊長

・ネージュ....女性兵士。中核班所属。副隊長

・ラウラ...女性兵士。中核班所属。新兵

・ヴィント....男性兵士。中核班所属。ベルナールの先輩

・ユージン....男性兵士。防衛班班長

・ハンス....男性兵士。防衛班所属

・エマニュエル....女性兵士。防衛班所属

・ティリス....女性兵士。援護班所属

・ハインリヒ....男性兵士。独立班所属

・シュテファン....男性兵士。独立班所属

1


地下道に入って暫く進んだところで一行は小休憩を取り始めた。

そんな中、ダンプポーチにしまった空弾倉に予備の弾を込めるベルナールの隣にラウラが座り込んだ。


「?」

「教官は、変わりませんね」

「何がだ?」

「半年前に教官が特別講師で来た際に実戦実習の担当をしてくださったの覚えてますか?」

「覚えてるよ。確かあの時もならず者に襲われたな」

「で、同じ様に銃弾から私や他の訓練生達を護ってくれた」

「特別講師で1日だけとは言え教官って立場である事は間違いない。未来ある訓練生を身を挺して護るのは当たり前だ」


ラウラは苦笑いを浮かべながらボトルの中の水を飲むと再びベルナールの方を向いた。


「その時も同じ事言って、混乱する私達を落ち着かせようとしてましたよね」

「ジュルバーツ教官でも同じ事をしたさ。まっ、飛ばす言葉は違ったと思うがな」


そう言ったのちフル装填した弾倉を手の平で2回叩くとマガジンポーチに押し込んだ。


「それにしたって、無茶し過ぎよ。死に急ぐ様なものよ」


ラウラと同時にティリスの方を向いたベルナールは俯くと様々な感情を混ぜたの様な表情を浮かべながら弾薬ボックスをバックパックにしまうと立ち上がったのちティリスを顔を合わせた。


「あれで死に急ぐ?。・・・“力”を見せた時、なんで言われるか不安だ」


冗談を言ってる様な表情ではなく真顔でそう言われた事に驚きを隠せないティリスとラウラを他所にベルナールはセザールの元へ向かった。


「一体、何を」

「見た方が早い」

「?、ヴィントさん?」

「最も、“そう言う状況”にならない事を祈るが」


ヴィントの言葉を前に複雑な感情を抱える2人を放ってベルナールはセザールの前にしゃがんだ。


「“解放者”、か。・・・気分は?」

「・・・よく、わかりません。ッ!」

「⁉︎」

「セザールさん!大丈夫ですか!」

「あ、熱い!。・・・⁉︎」


セザールは上着の裏ポケットから激しく発光する装置を取り出した。


「いっ、一体⁉︎」

「・・・」


セザールの左手で発光する装置を何かを察したかの様に黙ってる見るベルナール。するとセザールが握って居た装置から輝きが消えると真っ白だった装置はまるで元の姿を取り戻したかの様に赤や青、緑のラインが入った。


「?」

「これは、一体」


ベルナールは再び何かを勘付いたかの様な表情を浮かべるとゆっくりと立ち上がり、元居た場所に戻った。


「あれは、一体....まるでベルナールに反応した様な」


エレクトラはそう呟くと自分らが進む進路に不安げな眼差しを向けた。


「・・・ベルナール」

「はい?」


ヴィントはベルナールを呼び止めたのち軽い駆け足で近寄るといつもの物静かそうな表情を浮かべならベルナールと目を合わせた。


「この隊の人間が君をどう見るかは、ベルナール次第だ」

「?」

「周りは変える事は出来ない。だが自分は変えられるだろ?」

「変える....」

「ちょっとした部分だけで良いんだ。そのちょっとした変化が周囲に影響を与える事もある。それが、他人を変えるきっかけになる」

「ヴィント先輩、」


ヴィントは僅かに笑みを浮かべるとベルナールの肩を軽く叩いたのちベルナールに背を向けて立ち去った。







2


「ここを抜けて行こう。急がば回れだ」


そう言いながらシュテファンはビルのガラスドアをストックで叩き割ると内部に入った。

彼らの進路上には多数の感染者、2人で処理するのは厳しい数だった。そんな感染者の群れに銃口を向けて警戒して居たハインリヒはシュテファンがロビーの安全を確認するとビルの中に入ってた。


「オフィスビルか?。大きいな」

「これだけ大きいと、裏口を探すのも一苦労だな」


そう言いながらガラスの破片を踏み潰して走るシュテファンの後をハインリヒは周囲を警戒しながら素早く追いかけた。


「断片的なデータを繋ぐ何かを、エレクトラ隊長が掴んでると良いな」

「その前に、奴が本当に解放者なのかって話だ」

「ごもっともだな」


ハインリヒの言葉にそう答えたのち案内板を見ながら錆びた地図を指で添えたシュテファンは頷きながら後ろに下がった。


「こっちだ。地下連絡通路に繋がるドアがある。それを使って廃棄された駅まで行って、階段を上がれば地上だ」

「廃棄された駅。ならず者や狂信集団の住処になってる可能性があるな」

「2人なら、バレずに抜けられるだろ。とは言うものの、警戒は怠るな」


シュテファンはそう言いながらドアを蹴り破ると階段の安全を目視で確認したのち階段を降り始めた。


「トラップに気を付けろよ」


ハインリヒの警告に頷いて返したシュテファンは進行ルートを警戒した。が、2人の脳裏にとある疑問が思い浮かんだ。


「この階段。なんで電気が通ってるんだ?」

「俺も気になってたところだ。誰かの住処になってるかもな。警戒しろよ」


ハインリヒの脳内に“あの案内板と地図自体が罠”と言う考えが過ったが、ハインリヒは特に気にする事なくシュテファンの後を追った。







3


非常灯が点灯しながらも薄暗い地下道を進むエレクトラ達。後方警戒支援の為にエマニュエルの後ろを歩いていたヴィントから言われた言葉に付いて考えていた。


「あまり深く考えなくて良いんじゃないか?」


自分の左後ろに居るハンスから話しかけられたベルナールは歩行速度を落としてハンスの隣に来ると、


「何がです?」

「お前さん、色々言われてるらしいじゃねぇか」

「力ある者の宿命ですね」

「その力って言う部分には敢えて触れないし、よく分からんが、皆んな妬ましいんだよ」

「へ?」

「最近は女性兵士の方が優秀。なのにお前さんはその先を行ってる。・・・さっき仲間の盾になった時、仮に貫通してもそこまで重傷にならない箇所で受け止めたろ?」

「なっ⁉︎」

「そしてすぐさま反撃体勢を取った。熟練の兵士でも簡単に出来る技じゃない」

「・・・親父の、」

「?」

「親父の暴言や暴力よりは、痛くありませんから」

「・・・相当な過去をお持ちと見た」

「熱したフライパン振り回されたせいで火傷した事もあった。レンチ投げられ、ベルトで鞭打ちされ、」

「お、おう....」

「ただ、人生で1番痛かったのは、」

「なんだ?」

「ジュルバーツ教官が対銃弾耐性訓練で放ったライフル弾。あれは痛かった。プレート貫通して、治りかけてた火傷の跡に命中。・・・それ以降、銃弾受けるのが怖くなくなりました」

「・・・以外と話せるんじゃねぇか」

「はい?」

「堅物で孤独を好む様な性格と顔付きしておきながら、話せるんじゃねぇか」


ベルナールは表情を曇らせながらハンスから目を逸らすと「今は、話せます」と答えた。するとハンスはベルナールの左肩に手を添えるとそれなりに強く掴んだ。


「⁉︎」

「特別編成とは言え、仲間なんだぜ?俺達」


ベルナールは目を見開くと再びハンスから目を逸らし、「仲間」と呟いた。







「風の湿度が上がったな。これは、外は土砂降りかもな」

「私達はともかく、セザールさんが危ないですね」


エレクトラは口元に手を添えると自分らが物凄く広い空間に出た事に気が付いた。するとベルナールは何かを感じ取った様にライフルから手を離すとホルスターに右手を伸ばした。

その瞬間、天井の至る所に配置されていたスポットライトが凄まじい光を発した。


「!」

「なんだ⁉︎」


ベルナールはすぐさま拳銃でスポットライトを撃ち抜いた。だが、


「クソ!、弾切れか!」

「充分だ」

「助かった」


ユージンとハンスはシールドを構えながらホルスターから拳銃を抜くと余分なスポットライトを破壊した。だがその瞬間、何者かがヴィントの脚を撃ち抜いた。


「ヴィントさん!」

「!」


ヴィントはセザールを庇う形で地面に座り込むとネージュの支えを受けながらゆっくりとセザールを降ろした。


「「クッソ!」」


拳銃の再装填を終えたベルナールはライフルを構えながらユージンと共に前に出ると安全装置を外し、トリガーガードに指を突っ込んだ。すると彼らが向けた銃口の先から白衣に身を包んだ男が不気味な笑い声を挙げながらガスマスクを身に付けた者達を多数引き連れながら姿を現した。


「狂信集団かっ!」

「何者だ!」


ベルナールとは違い決めつける事なく問い掛けるユージン。すると、


「名乗る義理はない。・・・君達が保護した“解放者”を渡せ」

「何の事だ?」

「この期に及んで恍けるか?、君達はなんと愚かな」


ベルナールはゆっくりと引き金に指を掛け、リーダー格と思われる男の鼻先に狙いを定めた。


「ん?、・・・成る程。“破壊者”も居たか」

「!」


ベルナールは目を見開きながら引き金から指を離した。そんな中、ベルナールの脳内にある策が過った。


「なぜ解放者と破壊者を知っている?」

「私も探し、調べていたからだ。君達以上に知っている」

「・・・」

「解放者の正体が、“遥か昔の産物に適用した者”、破壊者の正体は“間違った終わりを破壊する存在”である事。・・・そして、破壊者が適応者との精神的同化が進んでない事で、未熟で不完全体である事も」

「・・・思ったよりペラペラ話してくれるな」


ベルナールは頷いて返すと相手の目・表情・仕草等を読み、相手が嘘を言ってない事を確認しながら話に耳を傾けた。


「“間違った終わり”。それは貴様らの感覚であろう。・・・どうだセザール君、我々と来ないか?。セザールを引き渡し、破壊者を殺したら、君達は無傷で見逃そう」

「!」

「駄目です!セザールさん!」


折り畳み式のシールドを展開しながらネージュは立ちあがろうとするセザールの前に出た。


「セザールさんは渡せません!」

「その通りだ」

「貴方達に引き渡す理由はありません」

「相容れぬか....」


ベルナールは目を見開くとすぐさまライフルから手を離しのち両手を挙げながら立ち上がると「待て!」と叫んだ。


「なんだい?」


ベルナールはホルスターから拳銃を抜くと安全装置を外し、引き金に指を掛けた状態で銃口を顳顬に当てた。


「ベルナール教官⁉︎」

「馬鹿!なにやってる!」


ベルナールは鋭い表情にほんの僅かな笑みを混ぜると、


「“破壊者”が死ぬって条件で、残りを逃がせ」

「お前何言ってるんだ⁉︎」

「ベルナール⁉︎貴方、」

「ほぉう?」

「・・・ッ!」


ヴィントは自分の処置をしながら辺りを見渡すと「マズいな」と呟いたのちそこら一体が奴の手先だらけで四方八方から銃弾が飛んでくる事を伝えた。


「!。色々不味いわね」

「まずは、教官を何とかしないと!」

「・・・ベルナール....君って言う人間は、」


ヴィントは鋭く険しい表情でベルナールを見た。すると白衣の男は片手で顔を覆いながら笑うと、


「君は、中々面白い男だねぇ」

「だが、今は俺だから“これしか”力がない。俺が死んでも一時凌ぎ。もっと面倒な事になるぜ?」

「それもそれで面白いかもな。・・・良いだろう。君が死ねば、今回は手を引こう」

「ベルナール!」

「・・・ありがとう」


ベルナールは左手を挙げ、銃口を顳顬に当てた状態でユージンの方を向いた。するとベルナールは拳銃のハンマーとデコッキングレバーの順に親指を添えたのち両眼を長めに瞑った。


「!。お前、」


ユージンが自分の考えを理解したと判断したベルナールは軽く力強く頷いた。するとユージンは頷き返すと“わざと”溜息を吐きながら立ち上がると“わざと大声で”「すまない」と言ったのち隊に戻った。


「班長!」

「銃弾防御、衝撃に備えつつ移動」

「何を⁉︎」

「良いから!」

「・・・」


エレクトラはユージンとベルナールに何か策がある事に気が付くと溜息を吐いたのちいつもの微笑みを浮かべた。


「わかったわ」

「⁉︎」

「見捨てるんですか⁉︎」


エレクトラはユージンと目を合わせる僅かに首を横に振った。するとユージンは頷いて返したのちシールドと拳銃を構えながら移動を開始した。


「何かあると見た」

「やれやれ。お手並み拝見と行きますか」


ラウラに支えられながら移動するヴィントを呆れながら追うハンス。

するとベルナールは白衣の男と目を合わせたのち何の躊躇もなく引き金を引いた。







鳴り響く銃声。

だが銃声は1発ではなく、複数回鳴った。しかも鳴ったのは拳銃ではなくライフルだった。


「ガァっ!」

「イッ!」

「アッン、」

「グェッ!」


複数のライフル弾がエレクトラ達を襲った。だが1人を除いてシールドか防弾プレートで防がれた為、一応は無傷だった。

だが、


「イ、・・・アアァ、」

「ネージュさん!」

「ネージュ!」


折り畳み式のシールドの被弾して居た箇所にライフル弾を喰らったせいで銃弾がシールドを貫通。シールドと腕の間から血が垂れて居た。


「き、・・・貴様!」

「・・・」

「その拳銃には弾が入って居た筈。なのに、なのに何故⁉︎」


混乱する白衣の男の目先には引き金を引き切って居るにも関わらず無傷のベルナールが居た。


「皆んな、ネージュさん以外は、大丈夫....そうね」


咳き込みながら全員の様子を確認したエレクトラはベルナールの方を向いた。当然、ベルナールが何をしたか、エレクトラも知らなかった。


「無茶な賭けを平気で成功させてしまうんだよなぁ。ベルナールって男は」

「教官は、一体何を⁉︎」

「引き金を引き切る寸前に、デコッキングレバーを降ろしてハンマーをデコッキングしたんだ。要は、無理矢理作動不良を起こさせたんだ」

「ハンマー露出式拳銃だからこそ出来た騙し技だな。ベルナールがストライカー式を使わない理由の1つだ」


ベルナールは引き金から指を離すと、「さてと」と言いながら腕を下げた。


「よくも騙したな」

「騙したのは貴様だろ!」

「貴様?、・・・三人称は“君”、じゃなかったのか?。化けの皮が剥がれてるぞ」


混乱・恐怖・怒りを混ぜた様な表情を浮かべた男は数歩下がると奥歯を噛み締めながら「貴様」と言い続けた。

ベルナールは呆れながら男に背を向けると拳銃に安全装置を掛けてからホルスターに納めると隊と合流した。


「とりあえず、・・・後でまとめて聞きます」


そう言ったベルナールはバックパックを下ろすと中から医療キットが詰まった大型ポーチを取り出すとティリスに手渡した。


「今はネージュの処置を」


ティリスは無言でポーチを掴んだ。


「此処は任せて下さい。・・・可能なら、援護頼みます」

「ベルナール!」

「エレクトラ隊長」


ヴィントは涼しげな表情を浮かべながら力強く歩くベルナールの背中をみながら、


「実際に見た方が早い。どうやら、そう言う状況見たいです」


ヴィントの言葉を聞いた瞬間、エレクトラ含めた全員がベルナールの方を向くと、


「まさか、」

「ベルナール教官が、....破壊、者?」







4


「お前達は俺の仲間を傷付けた」


そう言いながら歩くベルナール。するとベルナールの身体は青白い炎の様な物に包まれた。


「俺はお前ら全員を、許さなァァァーーい!」


ベルナールが白衣の男を指差した瞬間、ベルナールの声に応えるかの如く、指先や爪先、頭部から血管を辿る様に朱色の光が身体の中心に向かって発光し始めると、心臓を中心に朱色のコアを出現させた。


「不完全体の出来損ないガァァァァァ!」


そう叫びながら白衣の男は指を鳴らした。


「⁉︎」


ベルナールの胸元に現れた朱色のコアが血管を辿った発光体を吸収し、点滅するたびにネイビーブルーカラーの発光体が身体中の血管をさっきとは逆に指先や爪先、頭部に向かって移動した。

そんな中、ガスマスクを付けた男達がもがき苦しみながら次々とガスマスクを外すと黒い何かを雄叫びと放出し始めた。


「あれは⁉︎」

「人工的に、感染者の変異体を作り出したぁ⁉︎」

「・・・」


一瞬だけ驚き、目を見開くベルナール。

だが覚悟を決めた様な目付きに変わると、髪色は濃紺からアクアブルーへ変わり、腰に届く程の長髪に変わると腕から刃物の様なものが現れた。


「あれが....」

「そうだ。“破壊者”だ」


青白かった炎が濃紺へと変わり“体の周りを包み込んだ炎”から“体に密着した濃紺色の光”に変わるとベルナールは70センチ程巨大化した。



2メートルや3メートルクラスの人工感染者が何十体と立ちはだかる中、“不完全な破壊者”はその姿を現した。

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