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Episode.03「救出」

主な登場人物


・セザール....本作の主人公の1人。“解放者”



特殊戦術チーム第7チーム“ズィープトシュトルム”


・ベルナール....本作の主人公の1人で男性兵士。援護班所属で“破壊者”

・エレクトラ....女性兵士。隊長

・ネージュ....女性兵士。副隊長

・ラウラ...女性兵士。新兵

・ヴィント....男性兵士。ベルナールの先輩

・ユージン....男性兵士。防衛班班長

・ハンス....男性兵士。防衛班所属

・エマニュエル....女性兵士。防衛班所属

・ティリス....女性兵士。援護班所属

1


「セザールさん!」


黒髪ロングヘアの小柄な女性兵士がカプセルの中でコールドスリープ状態になったセザールを揺らしながら必死に呼び掛ける中、セザールは漸く意識を取り戻し、瞼を半分開けた。


「セザールさん!気が付きましたか!」

「・・・」

「意識がハッキリしてない様だな」

「やむを得ません、強心剤を打ちます」


そう言うと女性兵士はバックパックからケースを取り出すと中に入って居た注射器を取り出すとセザールの右腕を消毒してから注射器のキャップを開け、中身を注射したのちラウラの方を向いた。


「ネージュ副隊長!。感染者の群れが、」

「足止め出来ますか?」

「お任せを」


ラウラは部屋の扉を閉めるとサプレッサー付きコンパクトアサルトライフルを構えたのち、部屋の扉を破ろうとする感染者達に銃口を向けた。


「セザールさん!立てますか?」

「君、は?」

「私はネージュ。貴方を助けに来ました」


セザールはネージュに支えられながらゆっくりと身体を起こすと上着の裏ポケットに何かが入ってる事に気が付き、それを取り出した。

鞘に収まった短剣の様な形状をした謎の装置を前にセザールは首を傾げた。


「それが、解放の?」

「ネージュ副隊長!。ドアが破られます!」

「セザールさん、動けますか?」

「多、分」


セザールはゆっくりとカプセル上で身体を動かし、地面に脚を着くとネージュに支えられながらゆっくりと立ち上がった。

それと同時に部屋のドアが破られ、感染者が部屋の中に傾れ込んで来た。ラウラはライフルの安全装置を外すと冷静且つ確実に感染者の頭を撃ち抜いた。


「セザールさん」

「大丈夫、だと思う」

「エレクトラ隊長と合流します」

「了解」


ネージュに支えられながら反対の扉に向かって歩くセザール。それに合わせてラウラもゆっくりと後退した。


「僕は、僕は、一体」

「セザールさん?」


セザールの不審な様子を捉えたネージュは一体脚を止めるとゆっくりとセザールの背中を摩った。


「?」

「大丈夫ですよ。セザールさん」

「ぇ?」

「必ず助けます」

「・・・」

「詳しい事は基地に戻ってからにしましょう」

「・・・」

「行きますよ」

「・・・ぁぁ」


再びゆっくりと動き始める2人。

するとセザールらが向かって居た扉が開くと3名の兵士が突入して来た。


「ユージン班長」

「ここは俺達防衛班が引き受けた。エレクトラ隊長との合流を急げ」

「わかりました。お願いします」

「なら、私が先導しよう」


安全装置を掛けたのち銃口を下げたラウラはセザールらの前に移動すると再びライフルを構えながら2人を先導した。

そんな3人を護る様に巨大なシールドを背負った防衛班のメンバーが銃を構え、感染者に向けて発砲した。


「隊列を崩すな」


自分の部下であるハンス、エマニュエルにそう言ったユージンは2人より前の位置でコンパクトアサルトライフルを撃ち続けた。


「他の皆さんは、大丈夫でしょうか?」

「戦闘中だ。余計な事は考えるな」


エマニュエルの方を向かずにそう言ったハンスは後ろの3人を気にしながら後ろに下がった。







部屋から通路に出たラウラは辺りを見渡したのち右へ移動した。それに続く様にセザールとネージュが通路へ出ると後ろから聴きたくない呻き声が聞こえた。


「!」

「今はとにかく動きましょう」

「わかった」


セザールはネージュに支えられながら歩行スピードを上げてラウラを追いかけた。するとラウラはライフルの安全装置を外して引き金に指を掛け、通路の角に銃口を向けた。


「・・・、?」


ラウラは目を見開きながら引き金から指を離し、チークパックから頬を外すと自分が銃口を向けて居た先から女性兵士が現れると銃口を下げた。


「エレクトラ隊長」


僅かに微笑みながらラウラに頷き返したエレクトラはセザールとネージュが無事である事を確認した。


「救出には、成功したみたいね」

「はい」

「ヴィントが脱出路を見つけたわ。こっちよ」

「了解」

「セザールさん、」

「大丈夫」

「それじゃあ、行きましょう」


セザールを支えながら歩くネージュはラウラの先導でエレクトラと合流するとラウラに背後を任せ、エレクトラの後を追った。

そんな中、エレクトラは進路を塞ぐ様に歩いている10名の感染者を見つけるとハンドジェスチャーで後ろの3人に停止を指示したのち壁に寄らせた。


「・・・」


息を殺しながら感染者が通過したのを確認したエレクトラは再びハンドジェスチャーで前進を合図すると静かに、ゆっくりと移動を開始した。

その後、別ルートで部屋を出た防衛班と合流したのちエレクトラは防衛班に背後任せるとラウラと共に前を歩いた。


「僕は、・・・僕は、」

「?」

「どうした?」


ボソボソと何かを呟くセザールの方を向いたユージンは軽く目を見開くと「まさか、な」と呟いた。


「班長?」

「なんでもねぇ」

「?」







2


「来たか」


サプレッサー付きバトルライフルに取り付けてある照準器のレティクル上にエレクトラ達を捉えたヴィントは無線機の回線を開き、マイクをオンにした。


「隊長。其方から見て600メートル先、階段の踊り場。見えますか?」

『捉えたわ。今から向かう』

「了解。階段を上り切って下さい。出口の確保に向かいます」

『了解。頼むわ』


ヴィントはマイクをオフにするとバトルライフルのバイポットを折り畳むとフォアグリップを握ったのち階段を駆け上がった。




「セザールさん。階段、大丈夫そうですか?」

「ああ、多分」

「ゆっくりで大丈夫ですからね」


ネージュはセザールを支えながらペースを合わせてゆっくりと階段を登った。するとユージンはコンパクトアサルトライフルから手を離すと背中に背負って居た大型のバリスティックシールドを構えるとホルスターから45口径大型拳銃を引き抜き、片手でチャンバーチェックを行い、薬室に弾がある事を確認すると右手に構え、安全装置を外した。


「エマニュエルは引き続き本隊の後方警戒。ハンスは踊り場からバトルライフルで警戒を行え」

「了解」

「了解」


シールドを左手に構えながら拳銃のトリガーガードに人差し指を突っ込んだユージンは鋭い目付きで辺りを警戒しながらゆっくりと後ろ向きに階段を登った。


『風が悪いな』

「?」

「・・・」


無線機に繋いだヘッドセットから聞こえたヴィントの言葉の意味を瞬時に理解したユージンは拳銃のハンマーをコックすると再びトリガーガードに指を突っ込んだ。同じく意味を理解したハンスもバトルライフルの安全装置を外し、トリガーガードに指を突っ込んだ。


『外から来る風も良くない。これは、だいぶ居るな』


その言葉の意味を理解したラウラ、エマニュエルもユージンらと同じ様に構えた。が、無駄な戦闘を避けたいエレクトラは安全装置は外したものの指はトリガーガードの外にあった。

だがヴィントの言う通り“風”は悪かった。

階段エリアの通気口網やセキュリティロックの掛かったゲートを破り、感染者の群が入り込んで来た。


「来やがったか」

「こっちに向かって来てる。交戦する」


ハンスはレティクルの中央に感染者の頭を捉えると引き金を引いた。

ソニックウェーブを起こしながら鉛の銃弾が感染者の頭を貫き、緑色の体液をばら撒く頃、隣では別の感染者の目が粉々に砕けながら緑色の体液をばら撒いた。

無論、そんな奴らには銃声など聞こえない。

“銃声”、それは生きた者への警笛であり、“怯え”を呼び覚ます恐怖の爆音。

だがウイルスに感染し、ゾンビの様な感染者となった彼らには如何って事ない事だった。

ただ“目の前に生きた人間が居る”。それしか彼らは思わなかった。


「装填!」

「カバーします!」


エマニュエルは狭い階段でコンパクトアサルトライフルを構えると階段に押し寄せる感染者に向けて発砲した。

ハンスはダンプポーチに空弾倉を押し込むとマガジンポーチから半透明の20連弾倉を取り出すと素早く挿入し、ボルトリリースを平手打ちした。


「キリがありませんね」

「グレネードを使う」


ユージンはホルスターに拳銃を納めるとグレネードを引き抜くと安全ピンを伸ばして抜き、レバーを外してから投てきするとホルスターから拳銃を抜き、感染者の頭を撃ち抜いた。


乾いた爆発音で感染者が吹き飛ぶとその隙を付くようにユージンは階段を登り始めた。


「大丈夫です。大丈夫てすから」


息を切らしながら階段を登るセザールの背中を摩りながらネージュはゆっくりと階段を登った。


『階段を半分以上登ったか?』

「まだね。私とラウラは登り終えたけど、」


そう言いながらエレクトラは下を向いた。

コールドスリープの反動か、或いは他の要因があるのか。セザールは思い通りに階段を登れなかった。


『階段の一部に爆薬を仕掛けた。全員が半分以上登り終わったら教えてくれ』

「わかったわ」


エレクトラはラウラと目を合わせるとラウラの意志を感じ取ったかの様に頷いた。するとラウラはライフルに安全装置を掛けると階段を降った。


「ネージュさん、変わります。後ろからのサポートを」

「わかりました」


ネージュはセザールの背中に手を添えたまま後ろに回ると腰に右手を添えたのちラウラと2人係でセザールをサポートした。

息を激しく切らし、話す気力すらないセザールは2人に支えられながら必死に階段を登った。


「焦らなくて大丈夫ですからね」


セザールに優しくそう言ったネージュはチラッと感染者の方を向いた。







3


「遅いですね」

「セザールが、移動に苦戦してるみたいだな」


相変わらずの曇った空の下、ヴィントが指定した脱出ポイントから1キロ弱離れた建物の屋上に伏せた状態で待機する援護班所属のベルナールと女性スナイパーのティリスはエレクトラらがポイントに向かうのひたすら待った。


「そう言えばベルナールさんって、スナイパーノートっていまだに紙なんですね」


戦場でもデジタル化が当たり前の現代。

周りが端末機に頼る中、ベルナールは紙とペンに頼っていた。


「手間は掛かるが、その手間に掛かる対価はある」

「とても20代には思えない発言ですね」

「貴方だって20代でしょう?」

「2歳歳上です」

「自分で明かすか?」


僅かに笑みを浮かべながら双眼鏡を覗き込んでいたティリスはチラッとベルナールのスナイパーノートに目を向けた。


「援護ポイントの地図、細かく書いてますね」

「ここまで細かくやれるのも、手書きの良いところだよ」

「細か過ぎませんか?」

「そうか?、普通だと思うが?」


双眼鏡を覗き込んだままティリスの言葉に返すベルナール。が、次の瞬間、ベルナールは表情を急変させた。


「?」


ベルナールはすぐさま手元にあるスナイパーノートに目をやると地図上に書き込んだ線を指でなぞったのち何かを呟くと再び双眼鏡を覗き込んだ。


「距離890。交差点中心のマンホール」


ティリスはすぐさま双眼鏡を置くと表情を急激に鋭くしながらスナイパーライフルを構えると安全装置を外し、トリガーガードに指を突っ込んだ。


「風速、右斜め後ろから0.7。弾は、」


ベルナールはチラッとティリスが構えるスナイパーライフルの照準器に目を向けると軽く数回頷いた。


「弾は2ノッチ半落ちる」


2人の眼差しの先には開いたマンホールから出てる1体の感染者に目を向けた。逆さまのタコを被ったかの様に顔面の上半分に8本の小さな触手を生やし、首元を赤く発光させる特殊な個体が、マンホールから這い上がった。


「“指令型”だ。首の発光体を撃ち抜け。・・・距離・風速・ノッチ、共に修正無し」


照準器内部のレティクル下にある複数の横線。それの2本目と3本目の間に発光体を捉えたティリスはゆっくりと息を止めながら引き金に指を掛けた。


「殺れ」


ベルナールが短くそう言った瞬間、ティリスは素早く引き金を引いた。空気を切り裂きながら放たれた銃弾は指令型の首を貫いた。すると指令型の頭部が破裂すると同時にマンホールから出て来ようとした別の感染者の頭部が破裂した。


「グッドショット」


双眼鏡を覗きながらそう言ったベルナールはチラッとティリスに目を向けた。さっきまでとは別人の様な雰囲気を醸し出しながらスナイパーライフルを構えるティリスを観たベルナールは「調子が狂うな」と独り言よりも遥かに小さな声で呟いた。


「距離910。路地から通りに出て来る奴が居る」


2人の感染者を捉えたベルナールは双眼鏡を置いてからバトルライフルを構えると、安全装置を外してトリガーガードに指を突っ込んだ。


「風向き変わらず。ノッチも同じだ。お前に合わせる」


静かに音を立てながら息を吸い、息を止めたティリスは素早く引き金を引き、先頭に居た感染者の頭部を撃ち抜いた。


「!」


ベルナールはすぐさま標的を変えると引き金を引き、同じ様に感染者の頭部に風穴を開けた。

するとベルナールはライフルに安全装置を掛けてから手を離すと再び双眼鏡を覗き込んだ。


「・・・前方、クリア」


息を吐きながらスナイパーライフルに安全装置を掛け、手を離したティリスはベルナールの方を向いた。


「流石ね」

「何がだ?」

「照準器を観ただけでノッチの修正値が分かるなんて」

「マークスマンライフルの時には、それを使ってるからな」

「へぇ〜。それにしても、」

「?」

「貴方は噂に聞くほど悪い人じゃない様に思えるわ」

「・・・」

「確かにこだわりは強いけど、・・・化け物扱いされたり、厄介者扱いされたり」

「時期に分かる」

「え?」


双眼鏡を覗き込みながら再度「時期にわかる」と言ったベルナールは冷たく、鋭い目で周囲を警戒した。







4


「無茶にも程があるぜ」


階段を登り切ったのちヴィントと合流したエレクトラ達。

ドアを閉めるユージンに向かってハンスは顎髭を弄りながらそう言った。


「仕方ないだろ。君達を逃す為には、」

「だからって!」

「待て。・・・醜い言い争いは後にしよう」


何かを感じ取ったヴィントはエマニュエルの言葉を遮る様にそう言ったのち起爆装置に目を向けた。


ヴィントはエレクトラ達がユージンだけ階段を登り切ってないと言ってたにも関わらずユージンからの指示で爆弾を起爆させた。

幸いにも爆弾の設置ゾーンからは抜けていたが一歩間違えれば爆発の衝撃でユージンがやられていた可能性があった。


「爆弾から距離が離れていた事はわかっていた。爆風程度ならこの盾で防げる」

「ユージン班長、」

「エレクトラ隊長。・・・しっかり確認も取らず、起爆した俺にも責任はある。が、今は移動するべきではないのか?」

「・・・ヴィントの言う通りね。行きましょう」

「待って下さい」


ネージュはすぐさまエレクトラを止めたのち自分の隣にしゃがみ込むセザールに目を向けた。


「セザールさんが、無理です。少し、休ませるべきです」

「・・・難しいな」

「え?」

「・・・悪い風だ。この地下施設、奴らの溜まり場だ」

「とは言っても、セザールに歩かせるのは難しいですよ」


ラウラの意見を聞き、少し考えたヴィントは自分のサプレッサー付きバトルライフルをエレクトラに預けるとバックパックを前側にずらすとセザールの前にしゃがんだ。


「俺が背負っていく」

「・・・!」

「セザールさん?」


セザールは右胸元を強く抑えると上着の裏ポケットから左手で装置を装置を取り出した。


「それが、解放の」

「わからない」

「え?」

「何も、わからないんだ」

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