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Episode.02「予感」

主な登場人物(プロローグから9年経っている為、プロローグで登場した時とは色々変わってます)


・セザール....本作の主人公の1人。“解放者”

・ベルナール....本作の主人公の1人。“破壊者”

・ジュルバーツ....訓練生の教官の1人。“真の鬼教官”の異名を持つ元海兵隊員。

・ロック....特殊戦術チーム“シュトルム”の専属ガンスミス。

1



武器庫に向かう最中、時間に余裕があると判断したベルナールは少し進路を変えた。そんなベルナールが向かったのは“基礎訓練施設”だ。


「見ろよ。ウッズ教官にしばかれてやがる」

「あの筋力でよく入隊出来たもんだな」

「・・・」

「おっ、ベルナールじゃねぇか」

「お疲れ様です」


挨拶を返したのちベルナールは先輩兵士の横に立つと窓から施設内を見学した。


「ジュルバーツ教官に鍛えられた人間としてあの辺の訓練生、どう見る?」

「脚と腰は悪くないです。ただ、腕の筋力が足りてない」

「やっぱお前さんもそう見るか?」

「そういえば、貴様が出した反復横跳びの歴代最高記録、一昨日抜かれたぞ」

「やっと抜く奴が現れましたか」

「ラウラって言う女性兵士だ。ほら、今日卒業した」

「女性兵士に抜かれたのか俺は、」


そう呟いたベルナールは僅かに落ち込むとライフルを背負い直したのち訓練生の様子を黙って見守った。


「奥の兵士、全く話にならんな」

「ああ。ウッズ教官が筋トレ量を三倍にする訳ですよ」

「ジュルバーツ教官なら、十倍ですね」


ベルナールの発言に鼻で笑って返した先輩兵士は「話にならんな」と言ったのち窓から身体を離すと通路を歩き始めた。


「転属先での初任務、頑張れよ」

「ありがとうございます」


先輩兵士に背を向け通路を歩いたベルナールは微かな不安を感じながらフリールーム化した待機室に脚を踏み入れた。

ベルナールの様に護身用として支給されたライフルをテーブルに立て掛け、リボルバーをホルスターに納めた状態でチェスやオセロを楽しむ者も居れば携帯ゲーム機で協力プレイを楽しむ者、一人読書する者など様々だった。


「よぉうベルナール」

「あぁ、お疲れ様です」


自分が苦手とする同期の兵士に声を掛けられたベルナールは渋々と顔を合わせた。


「休日も任務とは、特殊部隊は大変だねぇ〜」

「・・・要が無いなら行かせて貰うぞ」

「待てって。折角お前みたいな弾かれ者に、情報を渡してやろうって言うんだからよ」

「情報?」

「昨日の夜、偵察に向かった第一チームが全滅したってよ」

「“エアスト”が?。んな馬鹿な」

「おいおい。オメェの所属するチームの“フィーアト”が、なんで車両部隊の救援に派遣されたと思ってんだ?。お前が化け物になれるからって言う理由だけじゃ無いんだぜ?」

「“ドリット”、スクランブルで備えていた第三チームが不在になって俺達“フィーアト”が出る要因になった理由か」

「そう。ドリットがエアストの救援に向かったからだよ」

「なんてこった」

「六名死亡、三名は退役クラスの重傷。残りも一ヶ月は復帰困難なレベルの怪我負った」

「あのエアストから、六人も死者が出るなんて」

「何でも、相手は三メートルから五メートルはあったらしいぜ」

「“変異体”か?」

「あくまで噂の話だが、お前みたく、“変身”したらしい」

「成る程。狂信集団がなんかやった訳ね」

「まぁ、精々化け物同士で潰し合うんだな」

「余計な一言が多過ぎんだよ。礼も言う気失せたわ」

「そうかよ。じゃあ俺の眼中からとっとと消えろ」

「はいはい」


呆れた表情の裏側に疑問を隠し切れないまま同期の前から立ち去ったベルナールは武器庫へと再び脚を進めた。




「聞いたか?。昨晩、第一チームの半数以上が死亡もしくは退役クラスの重傷を負ったらしいぞ」

「あのエアストが?、マジかよ」

「何でも四メートルはある感染者に襲われたらしいぞ」

「!」


待機室から出ようとしたベルナールは壁に寄り掛かりながら話す2人の兵士の会話に耳を傾けた。


「冗談だろ?。三メートルよりデカい奴が居たなんて」

「うちの“化け物”でも、苦戦しそうだな」

「・・・」

「おっ、ベルナールじゃねぇか。御苦労さん」

「噂をすれば影、ってか?。お疲れ様さん」

「お疲れ様。その装備、“ツヴァイト”が即応待機なのか?」

「ああ、エアストが行動不能になっちまってな」

「しかもこう言う時に限って我らの女神である副隊長に転属命令が降るしさぁ〜」

「転属?やっぱり引き抜かれてるんだな」

「って事はお前も?」

「ああ。新設の部隊にな」

「そうか。エアストを行動不能に追い込んだ新種には気を付けろよ」

「まぁ化け物のお前には、どうでも良い事だろうけどな」

「そんな事はない。初部隊の出撃先で出会いたくは無いよ。ところでどんな奴なんだ?」

「知らん」

「え?」

「確かなのは、三メートル以上ってだけだ。他は証言がバラバラだ」

「バラバラ?」

「四メートルって言ってる奴、三メートルって言ってる奴、両方居たって言ってる奴。とにかくバラバラだ」

「はっきりしてんのはドリットが持ち帰ったデータだ。痕跡からして“三メートル以上の変異体”って事は間違いない」

「情報提供ありがとよ」

「四メートルってなると、“お前でも”苦戦しそうだな」

「化け物になれる力持ってんだ。いざって時は何とかしてくれよ」

「努力するよ」


そう言ったのち待機室から出たのち連絡通路を渡り、武器庫に入る直前に今度は眼鏡を掛けた女性兵士に声を掛けられた。


「ベルナール先輩」

「?」


振り返って顔を合わせるや否やベルナールは思わず「誰?」と聞き返した。


「あっ、自己紹介がまだでしたね。“エマニュエル”です。宜しくお願いします」

「エマニュエル?」


ベルナールは腕を組んで過去の記憶を遡った。その名前でグレーの三つ編み女性を、何処かで見た様な記憶があったからだ。


「あっ、ライバル校のマネージャー?」

「覚えてて下さったんですね」


九年前の、あの大会の日、共に決勝リーグに進んだライバル校のマネージャーと思わぬ再会を果たしたベルナールの中にある疑問が浮かんだ?。


「何で、先輩なんだ?。歳同じの筈だが?」

「えぇと、学年や訓練生の期も、その、一つ下何ですよ」

「成る程」

「先輩も、転属なんですよね?。実は私もなんです」

「そうか。・・・同じ隊に、ならない事を祈るよ」

「え?、どうしてですか?」


ベルナールは口の中に広がる苦い物を押し殺しながら敢えて何も言わずに武器庫に入った。







2


「やぁベルナール、武器倉庫へようこそ。新設部隊へ転属だって?」

「ロックさん、ご無沙汰です。そうなんです」


世界が大きく変わった九年前のあの日、ベルナールとクリストフに護身用にショットガンをくれた銃砲店の店員も、今や特殊戦術チーム専属のガンスミスだ。40代後半になるにも関わらず、あの頃の高めの中年声は未だ健在だった。


「とりあえずは装備を整えると良い」


ベルナールは頷いたのち護身用のライフルとリボルバーを返却した。


「いつ見ても、素早く無駄のない手つきだな」

「ジュルバーツ教官に、絞られましたから」


そう言いながらベルナールはロックと同時に射撃訓練所の方を向いた。



「撃ち方辞め!弾薬を抜いて銃を置け!。目標確認。・・・何だ貴様らは、9ミリ口径拳銃で30メートル先の止まった標的もマトモに狙えんのかぁ!。貴様らよりもダンゴムシ相手に訓練をした方がよっぽどマシだ!。罰則!ジャンピングスクワッド!。・・・回数?、バカモン!反省するまでダァ!」



ジュルバーツの怒鳴り声が響く射撃訓練所から顔を逸らした二人は顔を合わせると互いに苦笑いを浮かべた。


「俺の時はアリって言ってた癖に」

「まぁなんだ。ひとまずは装備を整えると良い」

「了解です。医薬品・消耗品、共に充分です。問題は」

「銃器、か?」

「はい。“援護班”って言うのがどう言うものか、そもそも任務の詳細も知らされてないので、」

「成る程な。だったら既存の主力銃器を確認するか?」

「そうですね。お願いします」


ロックは笑みを浮かべて頷いたのちカウンター横のホログラム装置を遠隔で起動させた。


「一つアドバイスだ。お前さんが転属する先の隊の隊長は“エレクトラ”って言う女性兵士だ」

「エレクトラ?金髪ロングの?。確か、俺らの一期上で訓練課程を首席で卒業した?」

「ああ其奴だ。エレメントの行動理念は“避けれる戦闘は避ける”だ」

「成る程」


そう言ったのち隣に移動したベルナールはホログラムに指を添えた。






3


“バトルライフル”


アサルトライフルよりも高射程でストッピングパワーが高い。フルオート射撃も可能。但し狭い場所での戦闘には不向き。


「狭い場所での戦闘や背後からの奇襲などに備えて一緒にPDWや拡張弾倉の拳銃も持っていけ。おっと、フルオートの精度は宛にするなよ」



“マークスマンライフル”


バトルライフルよりも更に高精度且つ長射程を狙える。バトルライフルとは違いフルオート射撃は出来ない。


「援護と言う意味では賢い選択だ。但し、千メートルより先の標的を狙うのは辞めておけよ」



“スナイパーライフル”


ボルトアクション式の為、マークスマンライフルより次弾発射までのタイムラグが長いが信頼性や耐久性が高く、マークスマンライフルより高射程を高初速で狙える。


「ボルトアクションだからジャムの心配がない。余程のマヌケじゃない限りな」



“ライトマシンガン”


制圧射撃で部隊の前進を援護したり、相手に対してけん制を行う事も出来る。

セミオート射撃も可能。但し再装填に時間が掛かる。


「再装填に時間が掛かるし、重いが火力や制圧力に優れてる。セミオートなら600メートル先の感染者の頭も撃ち抜ける。おっと、フルオートでその距離を狙うのは辞めておけよ」



“ヘビーアサルトライフル”


普通科部隊の主力武器。

アサルトライフルの部類にして120発と言う異例の装弾数を誇る。

ドラムマガジンよりも軽量且つ信頼性の高い特殊弾倉を使用している。

状況に応じて作動方式を替えられるのも大きな特徴。


「クローズドボルト方式とオープンボルト方式を切り替えて射撃出来る主力武器だ。ただ、サプレッサーとの相性が悪いせいか、特殊戦術チームではあまり使われないな」

「精度重視なら“クローズドボルト”、けん制や制圧力なら“オープンボルト”。切り替えられるのは良いですが、故障のリスクが高いって言うもの理由です」

「確かにな」



“コンパクトアサルトライフル”


特殊戦術チームの主力武器。

小型且つ軽量、高精度だが射程が400メートル前後と短い。


「バトルライフルやマークスマンライフルのオトモに最適だが、メインウェポンとしても充分使える」



“PDW”


特殊戦術チームや後方支援部隊向けに作られたサブマシンガンの上位互換。

現在ではスナイパーやマークスマンのサブウェポンとして使われる事が多い。


「小型且つ低反動で強力。予備弾倉を多く持てるのも特徴だ。射程距離は宛にするなよ」



“サプレッサー内蔵式PDW”


特殊戦術チームを中心に配備されているPDWのサプレッサー内蔵式モデル。


「PDWよりも若干大型で射程やストッピングパワーにも劣るが消音効果は非常に高い。救急車のサイレンの半分ぐらいの銃声しかしないからな。だからって無闇に撃ちまくるなよ。サプレッサーが壊れる」



“45口径拳銃”


9ミリ拳銃にシェアを奪われてたがサプレッサーとの相性が良く特殊戦術チームの中では未だに現役



“9ミリ拳銃”


低反動且つ強力。但し亜音速時のストッピングパワーは45口径に劣る為、業界を完全に独占出来てはいない。



“コンバットショットガン”


“ゾンビみたいな感染者相手にはこれ!”と言わんばかりの大型且つ強力なショットガン。

普通科部隊ではヘビーアサルトライフルと合わせて持つ者が多い。







4


「・・・ロック」

「どうした?」


「装備パターンAで頼む」

「“バトルライフル”と“コンパクトアサルトライフル”、“45口径拳銃”だな。了解だ」

「よく覚えてるな」

「当たり前だろ?」


ベルナールは笑みを浮かべながらホログラムから離れると受け渡しカウンターに移動したのちタクティカルベストやベルトのポーチを付け替えたのちロックから銃器を受け取った。

予備弾倉をベルナールに渡したロックは射撃訓練場に居るジュルバーツと顔を合わせると互いの考えを読んだかの様に頷き合った。


「訓練生の士気を高めるか」

「え?」

「ベルナール、時間はまだある。射撃場でウォームアップをしておけ」

「あっ、了解」


ロックが何かを企んでるいる事に気が付きながらもベルナールは装備を整えたのち射撃場へ向かった。




「総員辞め!窓際に整列!」


罰則の筋トレを中断させたジュルバーツは訓練生達を射撃訓練場の端にある防弾ガラス前に整列させると射撃場の方を向かせた。


「注目!貴様らダンゴムシ以下の分際に手本を見れる機会をやる。標的も真面に見れない目ん玉見開いてよく見ておけ!」


ジュルバーツは訓練生らにそう言ったのち窓越しに射撃レーンに立ったベルナールに目を向けた。無論、訓練生達も同じである。



ブザーがなると同時にコンパクトアサルトライフルを構えると、標的の頭のど真ん中を次々を撃ち抜いた。

横風の妨害が入ろうが、標的が動こうが、足場が揺れようが、ベルナールはひたすら標的の頭のど真ん中にある赤い点を消す様に1発も外さずに撃ち抜いた。

コンパクトアサルトライフルの弾が切れると素早く45口径拳銃に持ち替え、70メートル先の標的の頭をアイアンサイトで撃ち抜いた。

そして標的が無くなった隙に素早く拳銃をホルスターに抑えめ、無駄の無い動きでコンパクトアサルトライフルを再装填すると素早く射撃を再開した。







訓練生達はポカーンと口を開けるか目を見開きながらベルナールのウォームアップを見ていた。


「コンパクトアサルトライフルから拳銃にトランジションする際、無駄に素早くやろうとしたせいでライフルの扱いが雑になってるが、それ以外は悪くは無いな」


ボソッとそう呟いたジュルバーツは寄り掛かって居た身体を起こし、姿勢を正すと訓練生の方を向いた。


「良いか!。あのアリンコ擬きは貴様らダンゴムシ以下の分際が使っている拳銃よりもリコイルの強い拳銃であそこまで正確に撃てるんだぞ!。百歩譲っての最低ラインはあれだ。あれが出来る様になるまで訓練を続けるぞ!。・・・射撃位置に着け!」




「訓練生の手本になれる器じゃないと思いますがね?」

「自分を過小評価し過ぎだ。確かにライフルの再装填の際に無駄に力を入れ過ぎてる節はあるが、それ以外はかなり良いと思うぜ?」

「だと良いんですが、」

「実際に訓練生の特別実習の際に1日教官を任されたりしてんだ。“あの力”の事が気になってるのは分かるが、もっと自分に自信を持て」

「そう、ですね」

「もっとシャキッとしろ!転属先での初任務なんだから!」

「了解ッ」

「行って来い!」

「行って来ます」


弾薬を補充したベルナールはロックに見送られながら武器庫を出た。


その先に待ち受ける任務が、彼の運命を変えるとも知らず。







5


「・・・」


あの化け物、一体何だったんだろう。

僕は、・・・僕は、何も分からない。

“セザール”、

これが、僕の名前?

・・・僕は、一体、

一体、誰なんだ?

この暗くて、寒くて、寂しくて、窮屈な場所に、僕はどうして、居るんだ?。

僕は一体、

セザールって、本当に僕なのか?


「・・・」


誰か、誰か、

・・・うん?


「・・・さん」


誰?、誰かの声?


「セザールさん!」


誰?。誰かが僕を、呼んでる?

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