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プロローグ後半「決意」

主な登場人物


・ベルナール....本作の主人公の1人。

・ユキノ....ベルナールの妹。

・クリストフ....ベルナールの部活仲間。

・ツツジ....クリストフの妹。

「・・・ッ!」


失い掛けた意識を掴む様に両眼を見開いたベルナールは辺りを見渡すとシートベルトを外した


「ユキノ?ユキノ!」


車内に誰も居ない事に気が付いたベルナールは破られたドアから外に出ようとした。


「お兄ちゃん!」


ベルナールは車外から伸ばされたユキノの手を掴むとその助けを借りながら車外に出た。


「お兄ちゃん。よかった」

「ユキノ!怪我は⁉︎」

「私は大丈夫。それより、」


ベルナールは目を見開きながらユキノが向く先に顔を向けるとそこには脚を怪我した挙句専用靴が壊れたせいで歩けない自分の母親が居た。


「御袋!」


痛む左脚を引き摺りながら自分の母親の元に駆け寄るベルナール。が、その直後に“人だった何か”に襲われ、取っ組み合い状態になった。


「ユキノ!御袋を!」

「でもお兄ちゃんが」


ベルナールは表情を鋭くすると声を出しながら人だった何かの胸ぐらを左手で掴むと右脚に力を込めて、前に押し出したのち車に背中を叩き付けると右手で人だった何かを殴り飛ばした。


「退がれ!」


ベルナールはクリストフの言葉に反応する様に後ろに下がるとクリストフは人だった何かの頭をショットガンで撃ち抜いた。


「狩猟に使うスラグ弾みたいだな」


そう言いながらクリストフはショットガンのフォアエンドを前後に動かすと荷台の中からもう一梃のショットガンを引っ張り出すとベルナールに投げ渡した。


「銃は手渡し!当たり前だろ!」

「そんな事言ってる場合か!」


ベルナールは舌打ちをしたのちフォアエンドを前後に動かし、初弾を装填した。


「お母さん!」


クリストフの母親と二人係でベルナールの母親を起こしたユキノは母親の肩を担ぐとツツジのサポートを受けながら少しずつ前に進んだ。


「あの四人を護らないと。俺は前に行く。ベルナールは後ろを」

「了解だ」


三人の前に出たクリストフはショットガンを構えながら辺りを警戒する中、ベルナールは四人の後を追い住宅街に入った。


「この住宅街を抜ければすぐよ」

「お母さん、頑張って!」

「ッ!、人が思ったより居るな」


クリストフはショットガンを構えながらそう呟くと人を押し退けながら前に進んだ。


「ツツジ先輩」

「私は大丈夫。けど、」


ツツジはチラッと後ろを向くとベルナールが着いて来てる事を確認した。


「「!」」


クリストフとベルナールは四人に迫る人間だった何かにショットガンの銃口を向けるとベルナールはツツジ、クリストフはユキノに迫る人間だった何かの胸元を撃ち抜いた。


「う、うわァァァッッ!」

「助けてくれェッ!」

「こっちに来ないでくれェェッ!」


クリストフは次の標的に銃口を向けるが時既に遅く、地面に押し倒された男は人間だった何かに殴り殺された。

“地獄絵図”

そんな言葉はベルナールとクリストフの頭を過った。

燃える人、

黒焦げる死体、

殴り殺される人、

喰われる人、

食い散らかれた死体、

逃げ惑う人々、

避難の邪魔をした人間を殺す人、

クラッシュした車から転げ落ちる血塗れの人、

頭から血を流しながら死んだ我が子を抱き抱える人、

ドミノ倒しになる人々、


「これが、数分後の俺の姿だな」


靴やズボンなどに血が付着する度に自分が死体になるのを今か今かと思いながら四人の後を追った。

一方で先を四人の先を行くクリストフは手で鼻を覆いたくなる様な気分になりながらひたすら歩いた。


「焦げ臭い、酷い匂いだな」


炎上する住宅、

爆発する車、

荷台の中で燃える段ボール、

鼻だけでなく目も塞ぎたいと思う様な場所をひたすら移動した。そんな現象から目を逸らす様にベルナールの方に目を向けたクリストフは彼の服の隙間から見えた恐らく虐待により出来たであろう痣を目にした。


「どれもこれも目に毒だな」


荒い溜息を吐きながら俯くと顔を数回横に振ったのち辺りの警戒の為に顔を挙げると住宅街の道端で理性を失ったかの様に狂い、発狂しながら右往左往と動く人々に目を向けた。

ベルナールの痣を見たせいか狂いながら動く人々は話に聞いて居たベルナールの狂乱した父親の姿を想像させる物だった。


「ベルナールの奴、今何を考えてるんだ?」


ショットガンのグリップを強く握りながらそんな事を呟いたのち自分の元に迫る人間だった何かの頭部に風穴を開けた。


「明らかに避難が遅れてるな」

「え?」


フォアエンドを前後に動かしながらそう言ったのちベルナールは前方から迫る人間だった何かの集団に目を向けるとグリップを強く握った。


「先に行け!」

「え?」

「は?」


ベルナールは人間だった何かの集団に銃口を向けて構えると再度「早く行け」と叫んだ。当然それに納得する者など居る訳も無く、すぐさまユキノはベルナールの元へ駆け寄った。


「お兄ちゃん、そんなのダメだよ」


表情を鋭くしたのち自分の左腕を掴むユキノに目を向けたベルナールは僅かに表情を緩めた。


「ユキノ。特にお前はすぐにこの光景から離れるべきだ」

「けど!」

「俺よりも間近で、狂った両親を見て来ただろ。お前の方が見るのが辛い筈だ」


それを聞いたユキノの脳裏に我が家での出来事が蘇った。しかしユキノは自分の息が荒くなって居るにも関わらずベルナールの腕から手を離さす事なく顔を挙げてベルナールと目を合わせた。


「お兄ちゃんとは違って、“手”は出されてない。お兄ちゃんの方が辛い筈だよ」


ベルナールは苦めの作り笑みを浮かべながら自分が手に持つショットガンをユキノに見せたのち僅かに目を細めた。


「コイツが、俺に勇気をくれる様な気がする。だから俺は、大丈夫だ」

「お兄ちゃん」

「御袋に、着いて居てやれ。これは、男の仕事だ」


そう言ったのちクリストフの方に目を向けたのちもう一度「行け!」と叫ぶとベルナールはショットガンを構え直した。


「彼奴は一度決めたら譲らない奴だ。行こう」

「けど!」

「・・・」


クリストフの母親はベルナールの母親を強く掴むと再び前に歩き始めた。


「ちょっと!」

「雨雲が近い。行きましょう」







「あと、三・四発か。予備のショットシェル、貰っておけばよかったな」


そう思いながら五人を見送ったのちフェンスを破って路地に入るとひたすら移動した。


「そこら中に居るな。こんな暗い路地が、俺の死に場所か?」


目付きを鋭くしたしながら残弾の乏しいショットガンを構えた瞬間、自分の父親に付けられた痣が焼ける様に痛み始めた。

ベルナールはショットガンを降ろすとその場に跪いたのちゆっくりと目を瞑ったベルナールは鼻から大きく息を吸うと、顔を上に挙げた。


「親父を殺した罪。死んで償おう」

『ダメだ』

「!」


突如として脳裏に響いた声に反応する様にベルナールは瞼を開けると辺りを見渡した。


『君ハ死ぬベキではナい』

「あの巨人か!。何なんだよ!」

『ミナ、ココロに傷を負いナガラ生きている。ソレニ、死んデ償うナンテ言うのハ、クズノ考え方だ』

「何だと⁉︎」

『生きろ、ツグナウなら生きろ!。死んでトレル責任ハ無い』


ベルナールは目を見開きながら辺りを見渡したのちゆっくりと立ち上がると身体の内側から溢れ出る訳のわからない力を解放する様に気高い雄叫びを挙げた。

その瞬間、ベルナールの身体は青白い炎の様な物に包まれた。

身体を纏った青白い炎がネイビーカラーに変わると指先や爪先から血管を辿る様に朱色の光が身体の中心に向かう様に発光し始め、肘と手首の間に刃の様な物が生え、濃紺色のショートヘアがアクアブルーの様な長髪へと変わった。


「何だ、これ⁉︎」

『君ハ、死んでハならナイ』


叫び声と共に背が二〇センチ程伸びると、濃紺色の炎が徐々に薄れ、“それ”は姿を現した。







「ベルナール。大丈夫だよな?」


そう呟いたのち住宅街を抜けた四人に目を向けたクリストフは彼女達の背後から迫る人間だった何かに銃口を向けて引き金を引いた。が、弾で出る事は無くただ空撃ちの音が響くだけだった。


「へ?」


クリストフはフォアエンドを前後に動かしてからショットガンを構え直し、引き金を引くが再び空撃ちの音が鳴り響くだけだった。


「クッソ!弾切れか!」


ショットガンを投げ捨て四人の元に駆け寄るクリストフ。そんな彼を追い抜かす様に何発もの銃弾が彼女達の後ろに迫る人間だった何かを貫いた。


「!」

「早く!」

「雨が降る!早くこっちに来るんだ!」


地下鉄の駅から放たれた声に反応する様に振り向いた先には自動小銃を構える兵士達が居た。

クリストフはベルナールの母親の元へ駆け寄ると疲弊した自分の母親と変わった。


「ペースを上げるぞ。あと少しだ」

「「はい!」」


クリストフに合わせる様にペースを上げた二人は只管地下鉄の入口に向かって進んだ。だが、前を向いて居た彼らは気が付かなかった。クリストフの母親が、脚を掴まれて動けなくなっている事を、


「・・・」


自分の息子が巻き込まれる事を恐れたクリストフの母親は声を挙げる事なく、ひたすら四人を見守りながら掴む手を振り払おうと踠いた。


「クリストフ!」


目を見開きながら振り向いた先にはボロボロに疲れ果てたベルナールの姿が瞳に映った。


「お兄ちゃん。よかった」

「ゲートを閉めるぞ!早く来るんだ!」


ベルナールは四人の後を追う様に地下鉄駅の入り口に入ろうとするとクリストフの母親と目が合った。ベルナールはすぐさまショットガンを構えたのち狙いを定めてクリストフの母親の脚を掴む奴の頭部を撃ち抜いた。


「早く!。ッ!」


クリストフの母親は人間だった何かの手に躓いて前のめりになって倒れた。ベルナールはすぐさま助けに行こうとするがすぐさま兵士に止められた。


「早く中に入るんだ!」

「けど!」

「もう間に合わない」


兵士はベルナールの服の襟足を掴むと半ば強引に引っ張った。


「!、母さん!」

「行っちゃダメだ!」


自分の母親が居ない事に気が付いたクリストフも外へ出ようとするがベルナール同様に兵士に止められた。


「母さん!母さん!」

「!、危ない!」


ベルナールを引き摺り込んでいた兵士はホルスターから拳銃を抜くと駅の入り口に入り込んだ人間だった何かに向けて発砲した。


「ッ!」


至近距離だったせいか、ベルナールは人間だった何かの体液を思いっきり浴びた。


「大丈夫か⁉︎」


ベルナールは無言で頷いた。後方の兵士の援護もあり、ベルナールと兵士はゲートの向こう側に退避した。その瞬間、密閉型の仮設ゲートはゆっくりと閉まり始めた。


「母さァァッんッ!」

「強く、生きて!」


閉まり掛けたゲートの向こう側からクリストフの母親の声が入り込むとクリストフは兵士の手を振り払い、ゲートに向かって走った。が、クリストフがゲートに着くと同時にゲートが完全に閉まるとクリストフは「母さん!」と言いながらひたすらゲートを殴った。


「お兄ちゃん....」

「クリストフ、」


血に塗れたベルナールはゲートを殴りながらその場に崩れるクリストフを黙って見ている事しか出来なかった。そんな中、ベルナールはゆっくりと後ろを向くと化学防護服を身に纏った兵士達に拳銃の銃口を向けられて居た。


「・・・」

「大人しく検疫所に来て貰おうか」

「この場で殺しても構いませんが?」

「⁉︎」

「お兄ちゃん⁉︎、一旦何を⁉︎」

「不要な殺しは避けたい」

「それに、殺すには場所が悪い」


ベルナールは溜息を吐きながら両手を挙げると化学防護服を身に纏った兵士達に囲まれると先頭の兵士に続く様に歩いた。


「お兄ちゃん....」







【二〇三八年 六月七日 八時四五分


二日か三日振りの日記。隔離病室内で書く事になるとは思わなかった。

世界中が正体不明のパンデミックで大変な事になってる中、日記を付けたいと言う理由だけで小さな手帳とボールペンを貰えただけでも感謝。

検疫所に連れて行かれる最中に『殺処分を覚悟してくれ』なんて言われた日には変な期待をして居た。が、今はその可能性は消え、独房の様な狭い部屋の中に強制隔離されている始末だ】


【同日 十時三十分


信じられない事を言われた。

『君にはウイルスに関する免疫を持っている可能性がある』

そう言われたのち入室させられた部屋で尿と便、そして血を抜かれた。

免疫?、俺が世界の希望?。

笑わせるな】


【同日 十二時


隔離病室の扉がゆっくりと開いた。

『食事だ。しっかり食べておけ』

トレーで来た事に驚いた、やっと真面な物が食える。

床に置かれたトレーをゆっくりと持ち上げ、机へ運んだ。

“レトルトの野菜スープ”・“ソフトフランスパン”、驚いた。これは“野菜ジュース”だ。

気が付けば泣きながら食べて居た。レトルトをこんなにも美味いと感じたことは無い】


【同日 十三時


シーツに座り込む中、ふと両親と妹の顔が思い浮かんだ。

自分の中で、「あの時射殺したのは本当に父親だったのか?」と言う疑問が拭えぬ中、妹の事が心配になった。

母親に関しては『避難してる最中に病状が悪化したがカルテをすぐに入手出来た為早急な処置と治療が出来た為、順調に回復中』と聞かされたが妹の事は何も聞かされてない。

大丈夫だろうか。

よく考えれば、俺が自殺しなかったのは妹のお陰だ。

会って礼が言いたい】


【同日 十五時


診察室から帰還。

『発症の可能性はゼロ。君は健康だ。だが血液検査で少し気になる節がある。別機材による血液検査を再度やらせて欲しい』

断る理由は無かった。

医者の話を鵜呑みにするなら、俺は正常に生き続けられるのだろう。

あの巨人の言う通り、“生きなければならない”様だ】


【同日 二一時五十分


消灯直前に一つ書き記す事にした。

世界が大きく狂ったあの日。

“人間だった何か”に囲まれて死を受け入れたあの日。

俺は、“変身”した。

気が付けば辺りには何十人もの人間だった何かの死骸があった。

あれはなんだったんだ?。

あの日以来ろくに寝れてないせいか、夢を見ない。

恐らくあの巨人はまた夢に現れる。

問わねば】







「やっとか」


見慣れた空間で目を開けたベルナールは身体を起こし立ち上がると後ろを向いた。視線の先には『アクアブルーの様な長髪を生やした“銀色の巨人”』が居た。


「ん?」


巨人はいつも通り長髪をたなびかせて居たが胸元にあるコアの様な物を朱色をしているだけで発光まではして居なかった。


「聞きたい事が山程ある」

「マズは、我が問イに答えてカラダ」

「・・・わかった」

「君ハ、我に選ばれタ存在ダ。共に生きテハくれないカ?」

「何故俺なんだ?。俺みたいな自殺願望者を、何故選んだ?」

「減らシタイ」

「?」

「若イ犠牲を減らシ、若き者ニ、正しく生きテほしい」

「・・・」


言葉を失ったベルナールを他所に巨人は続けた。


「今この世界ハ“間違った終わり”ヲ迎エヨウトしている。我は、間違っタ終わりヲ、破壊する存在」

「このパンデミックのせいで、大勢の若者が死んだ。それが、間違った終わりか?」


巨人はゆっくり、ハッキリと頷いた。


「ドンナ世界にも“正しい終わりと正しい再生”がある。間違った終ワリでは、再生ハ出来なイ。世界は、あり続けナけレばならない」

「それが、アンタの役割か?」


巨人は首を横に振るとベルナールの目の前にしゃがみ込んだ。


「我と、君ノ、役割ダ」

「・・・」

「君ハ、生きたいカ?」


ベルナールは俯いたのち少し考えると息を吐いたのち力強い表情で巨人と目を合わせた。


「“自殺”、なんて選択は必要なさそうだな。アンタと居れば、“意味のある死に方”が出来そうだ」

「マシ、だな」


そう言うと巨人は胸元のコアを発光させるとニメートル程まで身体を小さくした。


「!」


溶岩が冷え固まったようなネイビーカラーの皮膚、血管が通っているであろう場所はネイビーブルーの様な色をした線が通っており、胸元の朱色のコアは細く小さな物となって居た。肘と手首の間には濃い目の赤い色をした小さな刃が生え、顔は様々な獣を足して割った様な物でアクアブルーの様な長髪はウォーターグリーンへと変わって居た。


「これは....」


それは“人間だった何か”に囲まれて死を受け入れたあの日に変身した姿まんまだった。


「我が名ハ“シュリュクシオン”。“間違った滅びを破壊する者”。共ニ、行コう」







2週間後....



ペンを置き、息を吐きながら壁に背中を預けたベルナールは改めて此処数週間の事を振り返った。

“世界が大きく狂ったあの日”・“親父を殺したあの夜”・“暗闇で目覚めた力”・“友の母を助けれなかった事”・“とんでもない事を言われた昼前”・“レトルトに泣いた昼”・“破壊者と対話した夢”、そして、“自殺願望が消えた事”。

瞼を閉じ、“何か”が映る暗闇の中で振り返り、整理したのち再び整理しようと自分の手記に手を伸ばすと自分が居る隔離部屋の扉がノックされた。


「診察が早まって。来てくれ」




“ルナギ”と名乗る女性医師はベルナールが座ったのちカルテを開いたのち顔を合わせた。


「結論から言うと貴方には免疫がある。けど、“貴方”にしか効果がない」

「と言うと?」


「色んな機材を使ったり、ウイルス混じりの雨水相手に検証したりした結果、貴方の体内には“自分を守る免疫”しかない。つまり、貴方からワクチンを作るのは不可能って事」


ベルナールは難しい表情を浮かべながら俯いたのち再びルナギと顔を合わせた。


「(ん?。この感じは、まさかこの子!)」


僅かに目を見開いたルナギはパソコンのモニターに最新の血液検査の結果をベルナールに見せると下の方を指差した。


「貴方の血液から“アンノウン”と呼ばれる成分が複数検出されたわ。このアンノウンは、採血用の針を抜いた途端に死滅し始め、1分と絶たずに消滅した。私は、これが貴方の“免疫”だと思ってる」

「・・・」

「ここ数週間で、何か変わった事は無かった?」

「(“破壊者と融合した”なんて言っても信じてもらえないよな)」


ベルナールは「わかりません」と答えた。


「・・・」




ベルナールの退室を見送ったルナギはパソコンモニターに目を向けると“アンノウン”と言う文字を見つめた。


「成る程。彼が“破壊者”と言うわけね」







部屋に戻ったベルナールはシーツに座り込むとルナギとの会話を思い返した。


「(なんであんな事聞いたんだ?)」


そう思いながら頭を掻いたのち扉のノックに反応する様に顔を上げた。


「面会だ」

「?」


ゆっくりと立ち上がり、サンダルを履いたのち開かれた扉から廊下に出たベルナールは直感で反応する様に右を向いた。


「お兄、ちゃん」


潤った瞳を見開いたベルナールはユキノを見るや否やゆっくり歩み寄ると駆け寄るユキノを受け止めた。


「お兄ちゃん、よかった」


泣きながら抱き付くユキノをゆっくりと抱きしめたベルナールはユキノの後に続く様に泣いた。


「ごめん、ごめんな。大変な時に、一緒に居られなくて」

「お兄ちゃんが謝る事なんて、無いよ。本当に、本当に無事でよかった」

「お前もな。今生きて居られるのは、ユキノ、お前のお陰だよ」

「お兄ちゃん」

「お前の存在が、俺を止め、救ってくれた。ありがとう、ありがとう」

「救われたのは、私の方だよ」

「ユキノ」


互いに泣きながら再会を喜ぶ二人。

周りに居た兵士達は苦笑いを浮かべながらそれを見守る他無かった。


「微笑ましい再会だな」

「余程仲が良いんだな」

「羨ましい〜ね〜」




ユキノと別れ、隔離病室に戻ったベルナールはシーツに仰向けに横たわると天井に向かって伸ばした自分の右手を見つめた。


「妹に救われた命で誰かを救う。死ぬのはそれからでも遅くは無いな」


静かにそう言ったのち右手を強く握り締めたのち身体を起こし、壁にある傷に目線合わせたベルナールはふと、前に兵士から聞いた話を思い出すと鋭い表情を浮かべた。


「そう言えば“軍が入隊志願者を募集してる”って言ってたな。・・・“そう言う”ところに行けば、自然と死ねるだろうけどな。・・・入隊、するか」


“軍への入隊”

それを決意したベルナールは立ち上がると病室の扉をノックし、兵士を呼んだ。

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