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第76話 宮野宮ミヤ その2 ヨルヨドン引き

 ヨルヨがゴクリと息を飲んだ。


 松平駿河は……ロリコンだった!!

 この驚愕の事実。指摘すべきか否か。


「ね、ねえ駿河」


「なに?」


「あ、いや……」


 図星を突かれて怒り出すかもしれない。

 そうなると面倒である。


「なんでもない」


「?」


 そんなこんなで、依頼人ミヤと地下11階層へ降りると、


「よし、そろそろはじめるでしゅ」


 ミヤはドローンを飛ばし、配信を開始した。


「全国のお兄ちゃんたち、こんにちはでしゅ〜」


・きた


・ミヤちゃん


・こんにちは


・きょうもかわいいね


・わーい


「えへへ〜、今日はお姉さんたちと強いボスを倒すでしゅ!!」


・アポ魔女いるやんけ


・隣はだれ?


・ヨルヨちゃん!?


・ヨルヨちゃんだ


・ヨルヨちゃんとミヤちゃんのコラボだと!?


・ロリコラボきたああああ!!


 誰がロリだ誰が。

 とヨルヨは頬をピクつかせる。

 コメントを書き込んでいる視聴者のIDをよく確認してみれば、


「うわ、こいつら……」


 ヨルヨの配信に出没しては、気持ち悪いコメントを残す連中であった。


「わわ〜、ヨルヨお姉ちゃん人気でしゅ!! わちしもヨルヨお姉ちゃんだいしゅきでしゅ〜」


 ミヤがヨルヨに抱きつく。

 彼女の方が歳上なのにヨルヨをお姉ちゃん呼びとは、この女、完全にロリを演じきっている。


・てぇてぇなあ


・てぇてぇ


・ちゅーしちゃえ


・おじさんも間に入れてほしいな


「こ、こいつら」


 ドローンを破壊してやりたくなったヨルヨであった。

 ふと、駿河を一瞥してみれば、


「ふふ、ふふふ」


 満足そうに微笑んでいた。

 やはり、ロリコン!!


 てなわけで、迷宮攻略再開。

 駿河とヨルヨがいるおかげか、すんなりと終盤のボス、ビッグスライムグリズリーのもとまでたどり着いた。

 スライムのように青白い巨大クマで、耐久力、攻撃力、回復力に長けた強力モンスターである。


「ふえ〜ん、こわいでしゅ〜」


・だいじょうぶ?


・むりしないで


・こわいね


・お姉さんを頼ろう!!


「駿河お姉ちゃん、どうにかしてほしいでしゅ〜!!」


 まだ戦ってもいないのに他力本願。

 ミヤの態度にヨルヨは苛立ちを募らせた。


 それでも、


「えぇ、任せてちょうだい。はああああ!!!!」


 駿河は快く引き受けてしまったのだが。

 とはいえ、今回に限っては駿河に勝機は薄い。


 双剣スキル、見切りスキル共に驚異的で、ほとんどのモンスターを倒せるレベルに到達しているが、スライム等の物理攻撃に体制があるモンスターには弱いのだ。


 実際、


「くっ!!」


 斬っては回復されてを繰り返され、苦戦している。


「しょうがないわね駿河。私が手助けするわ」


 ヨルヨの得意戦法、浮かばせてから重力で叩き潰すというやり方を駆使すれば、形勢は逆転するであろう。

 線ではなく面での衝撃なら、物理攻撃であってもスライムにダメージが入るのだ。


 だが、


「ダメでしゅ」


 ミヤに制止されてしまった。


「は?」


 途端、ミヤは急に大人びた表情になると、配信に入らないような小声で、ヨルヨに告げた。


「あんたが加勢したら倒しちゃうでしょ」


「はあ!?」


「これはライブなの。可愛い可愛い宮野宮ミヤが、ピンチのお姉さんを助けてハッピーになるっていう脚本」


「きゃ、きゃく?」


 すべて演出。すべて演技。

 ロリコンどもを煽って、たくさんスパチャさせるための、小芝居なのだ。


「でもあんた、このままじゃ負けちゃうわよ?」


「黙ってみてなさい。てか、歳上には敬語を使いなさいよ」


 さっきまでヨルヨお姉ちゃんなどと呼んでいた女のセリフか。


 そうこうしていると、駿河がグリズリーに吹き飛ばされしまった。

 たしかに、このままではマズイ。


「よし、いまね。……やめるでしゅうううう!!!!」


 ミヤが飛び出した。


「お姉ちゃんをいじめちゃ、ダメでしゅうう!!」


・ミヤちゃん……


・にげよう


・どうしよう


・あぶないよ


「ダメよミヤちゃん、私が倒すわ」


「駿河お姉ちゃんは、私が助けるでしゅ!! 電撃魔法スキル、発動でしゅううう!!!!」


 チチチと音を鳴らしながら、ミヤの手に電気がたまる。

 そして、


「発射!!」


 レールガンが如き威力で、グリズリーを貫いたのだ。

 このパワー、電撃スキルAAA以上とみて間違いない。


 グリズリーの穴はすぐに塞がったが、弱点である電気をくらい、気絶してしまった。


・すげええええ


・ミヤちゃんつよい!!


・やったね!!


・おじさんもビリビリにしてほしいな


「えっへん!! どんなもんでしゅ!!」


「す、凄いわミヤちゃん!!」


 まさに脚本通り。


 ミヤはこうやってダンジョン配信をしているのだ。

 本当にヤバいモンスターなら、手助けメンバーに倒してもらう。

 そうでもないなら、途中でミヤが倒す。


 ダンジョンによって、終始ヒロイン役でいるか途中でヒーロー役になるのか、すべて計算してダンジョン攻略をしているのだ。


 それでロリコンたちが喜んでいるのだから、天晴である。


「よ、よくやるわ、こいつ」


 ヨルヨも怒りを通り越して感心してしまった。


 ボスを倒し、宝箱が出現する。

 そのとき、


「あれ?」


 若い男子のグループが同じフロアにやってきた。

 高校生だろうか。そのなかにいる爽やかイケメンが、ミヤの顔を見て思わず声を漏らす。


 ミヤも同様に、爽やかイケメンくんに気づいて固まった。


「き、奇遇だね。宮野宮さん」


「あの、えーっと」


「あ、そっか、ご、ごめん」


 なんだろうか。

 知り合いだろうか。


・だれ?


・知り合い?


・同級生とか?


・なにこいつ


 ミヤが慌てて説明しだした。


「こ、この人は、このまえ、たまたま、ダンジョンで出会った人でしゅ!! 名前も知らないでしゅ!!」


 だが、爽やかイケメンくんの仲間が、


「おい!! 宮野宮じゃん!! 彼女と遭遇するなんてどんだけラブラブなんだよ〜」


 暴露してしまった。

 あーあ。


・かのじょ?


・は?


・どういうこと?


・学校の男たちはみんな苦手だって言ってたじゃん


・うそだろ


「い、いや違う!! 違ああああう!!!!」


 こうなっては、もはや言い訳不可能だろう。

 宮野宮ミヤ、なんとまあ運のないやつであろうか。


・彼氏いないんじゃなかったの?


・しんじられない


・はきけしてきた


・おじさんしょんぼり


 まさに阿鼻叫喚。

 駿河にしても、


「そ、そんな……ミヤちゃん……」


 脳が破壊されていた。

 こりゃさっさと退散するのが吉。

 ヨルヨは打ちひしがれる駿河を引きずって、その場をあとにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 帰り道。

 駿河はまだがっくりうなだれていた。


「はぁ、まさかこんなことになるなんて」


「別に彼氏がいたくらいで大げさでしょ」


「そりゃあ、いてもおかしくはないけれど、かなりショックだわ」


「あんた、そんなに気に入ったの? あいつ」


「だって可愛らしいじゃない」


 やはりロリコンか。

 ヨルヨの改めて確信した。


「黒子に怒られないようにしなさいよ」


「な!? 黒子は別よ。黒子に感じる可愛さはあんなもんじゃないわ」


「ふーん」


 気づけば、ヨルヨは黒子と駿河の仲を応援するようになっていた。

 本人も自覚している。


 少し前まで黒子を独り占めしたいと思っていたのに。

 けれど、認めざるを得ないのだ。


 あの2人の間にある絆は、ヨルヨにはどうすることもできないと。


「しっかし、まさかあんたがロリコンだったなんてね」


「心外ね。ロリコンじゃないわよ」


「はあ? だってあんた、小さいやつが好きなんでしょ?」


「違うわ。私の好みは『犬っぽい』子よ」


「い、いぬ?」


 駿河がおもむろにスマホの画面を見せてきた。

 そこに映っているのは、菊姫だ。

 駿河の後輩にして、動物系配信をしている上杉菊姫であった。


「この子も犬っぽいの。臆病だけど、寂しがりやな犬。可愛いと思っているわ」


「ロ、ロリじゃ……ない……」


 菊姫はスタイルの良い、普通の女の子である。


「黒子はとにかく元気で甘えん坊な犬タイプ。あなたはイタズラっ子な犬タイプ」


「……」


「わかった? 私はロリコンじゃないから」


「あ、はい。……って誰が犬よ誰が!!」


 ロリコン疑惑は払拭された。

 しかし、駿河の性癖が特殊であることは、変わらないのであった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき


あと5話の予定ですっ!!

応援よろしくお願いしますっっ!!


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