第75話 宮野宮ミヤ その1 駿河の秘密……。
「え、黒子が風邪を引いた!?」
とある休日、駿河のもとに一本の電話が掛かってきた。
ヨルヨからであった。
彼女から連絡を取ってくるなんて珍しく、何事かとドキドキしながら出てみれば、これである。
「そうなのよ。しかも最悪なことに、ちょっと特殊な依頼を受けちゃってて」
「特殊?」
「品物は、大量のお菓子なんだけどね、備考欄に『冒険者ランクAAA以上の方、複数で来てください』って書いてあるの」
「なにそれ」
「さあ? でも一度受けた依頼は断りたくないって、黒子が無理しようとするから」
「それで、私に電話をかけてきたのね」
駿河とヨルヨは共に冒険者ランクAAA。
条件はクリアしている。
いったい何を目的とした依頼なのか。
まったく予想できないが、黒子の助けになるのなら、断る理由はない。
「いいわ。協力する」
「くふふ、そうこなくっちゃ」
こうして、駿河とヨルヨのダンジョンデリバリー業がはじまったのだった。
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デリバリー中は原則として、配信をしない。
依頼主のプライバシー保護のためだ。
「まさかあなたと2人でダンジョンに来るなんてね」
左右に土壁が聳える迷宮ダンジョンを、駿河とヨルヨは電動キックボードに乗って進んでいく。
今回、黒子のリュックを背負っているのはヨルヨである。
「くふふ、過去のことは水に流しなさいよ」
「加害者側のセリフではないわね。まあ、とっくに気にしてないけど」
ちなみに、迷宮ではあるが2人は一切迷っていない。
頭に地図が入っているのだ。ランクAAAは伊達じゃない。
「お姉さんはどうなのよ」
「まだ意識がないわ。もし目が覚めたら、あなたのことはキチンと紹介する」
「ふーん、なんて?」
「え、友達」
「友達なの? 私たち」
「違うの?」
「……」
なんだか急に気まずくなってしまった。
確かに、駿河とヨルヨは友達と言えるほどの仲ではない。
関白退治の際は力を合わせたが、それが意外では連絡も取り合わないような関係なのだ。
友達と思われていなかった。その事実が、駿河に軽いショックを与える。
「くふふ、まあ、ただの知り合いではないわね」
「これでも、今となってはあなたを気に入っているのよ。あなた、いつも前向きだし、小さくて可愛いし。黒子と違って小生意気なところも可愛いし」
「くふふ、可愛いのは認めるわ。友達だって言うのなら、友達になってあげてもいいわよ。くふふ」
「なんかムカつくわね」
「……ちなみに、黒子の好きなところは?」
「小さくて可愛いところかしらね。純粋で、犬みたいじゃない」
「……」
「なに?」
「別に」
そんなこんなで、依頼主がいるダンジョン終盤に到着。
依頼主、宮野宮ミヤはわりとすぐに発見できた。
地下10階へ続く穴の近くで、スマホをいじっていたのだ。
彼女の姿を見た瞬間、2人はぎょっとした。
小さい。
小さいのだ。
小学生かと見間違うほどに。
しかし、ダンジョンにいる以上高校生なのであろうが。
「あ!! デリバリーさん、来てくれたんでしゅね!!」
「ど、どうも。黒子の代理の松平駿河よ。依頼されたお菓子を持ってきたわ」
「わーい!! ありがとう、お姉さん!!」
ミヤが駿河に抱きついた。
ぐっと、駿河が歯を食いしばっている事実を、ヨルヨは見逃さない。
ヨルヨはリュックを開くと、ポテチと受領書を取り出した。
「ほら、ここにサイン書いて」
「はーい」
「ていうか、あんた本当に高校生?」
「そうでしゅよ。ほら、学生証」
確かに、16歳である。
ヨルヨも華奢な方ではあるが、それより小さいうえに歳上である。
「そんで、なんで2人で来て欲しかったわけ?」
「この先のボスを、一緒に倒してほしいんでしゅ」
「はあ? そういう依頼は受け付けてないのよ。ピンチなら助けるけど、私らの仕事は荷物を届けることだけなのよ」
「うぅ、わちしひとりじゃ、難しいでしゅ……」
「ダメなものはダメよ。ね、駿河」
そのとき、ヨルヨは驚愕に目を見開いた
駿河が、可哀想な目でミヤを見下ろしているのだ。
ま、まさか……。
「いいじゃないヨルヨ。少しくらい手助けしても」
「わーい!! 駿河お姉さん、だいしゅき!!」
「……ふふ」
笑った!!
噛み殺していた笑みが溢れた!!
この瞬間、ヨルヨは確信した。
駿河はヨルヨを小さくて可愛いと思っている。
黒子に対しても同様。
そして、ミヤに対する態度。
間違いない、松平駿河は、ロリコンだッッ!!




