第72話 関白編・エピローグ
「くふふ、今日は私の奢りよ!! 存分に食べなさい!!」
飛鳥関白を倒してから数日後。
ヨルヨは配信で稼いだお金を贅沢に使って、大量のピザとフライドチキンを注文した。
「ヨ、ヨルヨちゃん。こんなに食べられませんよ……」
「何言ってるのよ黒子。あの関白の悔しそうな顔を思い出せば、もりもりご飯が進むってもんよ。くふふ!! ちょっと太郎、コーラ持ってきて」
テーブルを囲んでいるのは黒子にヨルヨ、それと太郎、千彩都の4人。
いわゆる、打ち上げである。
ちなみに駿河は、遅れてやってくる予定だ。
千彩都がさっそくピザを一切れ手に取った。
「黒子、ごめんね」
「なにが?」
「その……相談もせずに」
「いいよいいよ。おかげで飛鳥関白にたどり着いたんだもん。むしろ凄いよ千彩都は。飛鳥関白にたどり着いちゃうなんて、さすがだよ!!」
「……ありがとう」
ほっとしながら、ピザを食べる。
しょうもない嫉妬心と疎外感で迷惑をかけたつもりだったが、プラスになったのなら、よかった。
「今度は2人でダンジョンに行ってみようよ!!」
「うん!!」
その一言で、千彩都は救われた。
黒子が誰を選ぼうと、誰と一緒になろうと、関係ない。
黒子にとって自分は、唯一無二の幼馴染。
大親友なのだ。
「そういえばなんすけどー」
ヨルヨのためにコーラを注いでいる太郎が、問いかけた。
「結局、関白ってどうなったんすか?」
「あのままだよ。誰にも掘り返せないくらい深くに埋めたから」
「警察には何も言われなかったんすか?」
「事情聴取は受けたかな」
今回の件に関して、警察は捜査を打ち切った。
もともと、ダンジョン内犯罪はナイーブな問題なのだ。
できれば関わりたくない。下手な責任を取りたくないわけである。
第一、逮捕したところで、現在の法では相応の刑に処すことは困難だ。
関白は、ダンジョンで失踪した。
それで終わりである。
「あの配信、コメント読み返したっすけど、被害者遺族の無念も晴れたみたいっすね」
なんせ、永続的に殺され続けるのだから。
もちろん、頭を下げて謝ってほしかった人や、自分の手で殺したかった人もいるだろう。
しかし前述した通り、確実にそれが叶う社会ではない。
ならば、究極の地獄に叩き落とした黒子の行為で、気持ちを慰めるしかない。
「くふふ!! しっかし、今回の勝利の立役者は、この私よねぇ。私のスキルがあったから勝てたようなもんよ!!」
「うん。ヨルヨちゃんの言う通りだよ!!」
「くふふふふふふ!!!! 太郎、ポテチ食べたくなったからコンビニまで買ってきて」
「はいっす!!」
勝利の立役者であることは否定しないが、相変わらず生意気な小娘である。
太郎は嫌がってない様子だが。
ちなみに、回収されたヨルヨ母の頭部は、きちんと火葬された。
これで、彼女の兄シンヤも報われるだろう。
「くふふふ!!!! 今日は飲み明かすわよーっ!!」
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2時間後。
「すぴー、すぴー、くふふふ」
ヨルヨはソファで爆睡していた。
しょせんガキである。
「鎌瀬くん、ゆっくりね」
「はいっす」
太郎がお姫様だっこで、ヨルヨの寝室まで運ぶ。
パーティーもすっかり静まり返ってしまった。
コーラはぬるくなり、ピザやフライドチキンはとっくに冷めてしまった。
「じゃあ、俺も千彩都さんを家まで送って、そのまま帰るっす」
駿河は、まだ来ていない。
「うん、ありがとう。千彩都、またね」
「またねー」
急に1人になってしまった。
夜ももう遅い。
無理してこなくていいと、駿河にメッセージを送ろうとしたとき、
【下までついた】
逆に駿河から、メッセージが届いた。
「遅くなってごめんなさい」
「いえ、来てくれて嬉しいです。お姉さん、どうですか?」
松平小牧の胴体を取り戻したあと、事前に関白の家から回収した四肢や頭部との、縫合手術が行われた。
神の奇跡というべきか、切り離されたバーツすべてに血が通い、脳波も現れたのだがーー。
「まだ、目は覚めないわ」
「そうですか……」
「でも、きっと大丈夫よ。きっと」
「そうですね。きっと大丈夫です!!」
また、元気な姉に戻ってくれるはずだ。
「黒子、本当にありがとう。黒子がいたから、姉さんを取り返せた」
「みんなの力があったからです」
「……ふふ、そうね。ん、そういえば、蔵前さんも同じ病院だったわ」
実は、実は実は、ルルナは現在入院中なのである。
怪我や病気ではない。
愛する黒子に会えた衝撃により、仮死状態になってしまったのだ!!
かわいそうに。
「あの人も、はやく目を覚ますといいですね」
「まあ、そうね」
それはどうだろう。
「あ、お腹減ってますよね。ピザ温め直します」
残っているピザをお皿に移し、電子レンジに入れる。
2分に設定して、スイッチを押した。
緩やかに回るピザを眺めていると、
「黒子」
駿河が、背後に立った。
目を細め、下を向いている。
なにか不安気な、怯えている様子だった。
「なんですか?」
「あの……」
「はい?」
「これからも、こうして会いに来てもいいかしら」
「へ?」
「姉さんの件、片付いたわけだし、もう……」
駿河の言葉に、黒子は少し、カチンときた。
彼女は勘違いをしている。
大きな勘違い。
おそらく駿河は、黒子は姉探しに協力しているから、これまで会ってくれていた、と思っているのだろう。
そんなわけがない。
そんなわけがないのだ。
「会いに来てください」
「……」
「私からも会いに行きます」
「いいの?」
「だって、だって」
台詞が喉でつっかえる。
無性に小っ恥ずかしくなる。
顔が熱い。
ドキドキする。
「だって駿河さんは、私にとって大切な人ですから」
かっこよくて、強気で、ひたむきで、決して諦めない。
なにより、優しい。
そんな駿河だから、これからも一緒にいたいのだ。
「黒子……」
本能的に、駿河の腕が動く。
黒子を抱きしめる。
レンジの加熱が終わった。
甲高い音が鳴っても、黒子は動かなかった。
駿河の気持ちに応えるよう、彼女の背中に腕を回す。
またピザが冷めるまで、2人はずっと、互いの熱を伝え合った。
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※あとがき
関白編、終了です。
次回からまた日常回。
ほのぼのですっ!!
応援よろしくお願いしますっ!!




