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第71話 最強のダンジョンサポーター

 ヨルヨ母の頭部が転がる。

 気が抜けたのか、駿河は腹部の痛みに耐えかね座り込んだ。


 黒子はすぐさま駆け寄り、リュックから緑色の包帯を取り出した。


「ポーションと痛み止め配合の特製包帯です。巻いていれば、ある程度傷を回復し、出血も抑えられます」


「ありがとう」


 黒子が丁寧に包帯を巻いていく。

 一方、ヨルヨは妙な脱力感に支配されていた。


 母が完全に死んだ。

 けれど、これでよかったのだ。

 これで……。


「あ」


 ハッと関白の方を見る。

 ついうっかり、重力スキルを解いてしまっていたのだ。


「か、関白!!」


 関白は自由を取り戻すなり、地面に落ちたヨルヨ母の頭を奪った。


「近寄るな!! なにもするな!! 私に危害を加えてみろ。ヨルヨ、キサマの大事な母親の顔を、バラバラにしてやる!!」


「くっ、どこまで卑怯なやつなのよ」


 気にせずまた重力で身動きを封じるべきだろうが、できない。

 母の亡き骸が、めちゃくちゃにされてしまう。

 最後の尊厳だけは、守り抜かなくてはならない。


 関白はまた逃げるつもりなのだろうか。

 様子を伺っていると、関白は、


「サリー。……う、うぅ……ぐううぅぅぅ」


 大人げもなく、泣き出した。


「うわあああああ!!!! あああああああああああああッッ!! どうして、どうしてこんな酷いことができるのだ。私の、私のサリーを、よくも、よくもおおおお!!!!」



・なにいってんだこいつ


・人殺しのくせに


・いかれてんのか


・腹立つなあ


・マジで頭がおかしい


「私には、私にはサリーしかないのに……。こんなにも愛しているのに、なんでこんな目に遭わなくてはいけないのだ」


 関白が顔を上げる。

 腫れて真っ赤に染まった、悪魔のような瞳で黒子たちを睨む。


「ふざけるな、ふざけるな!! 許せない。人非人共が!! 芸術のなんたるかも理解できない、低知能のクズ共!! サル!! 浮浪者の糞のようなゴミクズが、よくもサリーをこんな姿に!! キサマら全員、地獄に叩き落としてやる!!」


 関白の激昂に、駿河は心底虫唾が走った。

 どこまでも自分勝手。

 究極のクズ。


「こいつ……ぐっ」


「駿河さん、安静にしていてください。私が、終わらせます」


「黒子……」


「はじめてカフェでお茶した日に、約束したじゃないですか。駿河さんをサポートするって」


 黒子の視線が関白を捉える。


「殺してやるぞ黒猫黒子。殺して、逃げて、またサリーを作り直す。そして、そして今度こそ、魔王と共に異世界へ飛ぶのだ!! ははははは!!!!」


「無理に決まってます」


「なに!?」


「いま、世界中の人間が、駿河さんを通してあなたを見ている。もうすぐ救助隊だってきます。ダンジョンに関わるすべての人間が、あなたを取り囲んでいるんです」


「知るか!!!!」


 と、冷静さを失ったような関白であったが、計算上、己にまだ勝機があることは充分理解していた。


 世界分離のスキルだ。

 あれを、もう一度発動してしまえばいい。


 が、問題なのは黒猫黒子。

 たとえ世界を分離しても、こいつのスキルで『再生産』されてしまう。


 まったくの無意味となる。


 だが、逆に考えれば、黒子さえ、黒子さえ殺してしまえば……。


「……」


「……」


 睨み合う。

 勝負は一瞬。

 先に相手に触れて、スキルを発動した方の勝ち。


「さあ、来るなら来てくださいよ。飛鳥関白。自慢の……分離スキルで」


「黒猫……黒子……」


 関白が走り出す。

 それに合わせて、黒子はデストーム・クリーナーを出した。


「バカめ。分解してやる」


 スキルを発動しようした瞬間、


「うぐっ!!」


 背中に猛烈な痛みと熱が走った。

 ドローンだ。撮影用のドローンが炎弾を発射したのだ。

 日輪シンヤと戦ったときも使用した、ドローンフレイムガンである。


「い、いつの間に……」


「あなたが号泣している間に。そして」


 日輪シンヤ戦と同じ素材を使用しているのなら、アレには、毒が仕込まれている。

 強力な神経毒だ。


「くっ」


 関白が慌てて解毒薬を飲んでいると、


「いまこそ、真に最強のダンジョンアイテムを生み出すとき!!」


 デストーム・クリーナーが光り出した。

 なにをしようと無駄だと、関白がほくそ笑む。

 すでにスキル適用範囲内。無機物なら、触れずとも分解できる。


「キサマの希望を粉々にしてやる!!」


 だが、


「なに!?」


 分解できない。

 それもそのばす。デストーム・クリーナーは、黒子の腕と融合しているのだ。

 生物の一部になっているのである。


「ワープサファイア!!」


 あらゆるダンジョンに繋がる魔力石が、素材となる。


「来い、私が求める、すべての素材!!」


 どこからともなく、様々な魔力石、モンスターの一部がワープしてくる。

 属性系の魔力石。特殊能力がある魔力石。各々の特技を秘めたモンスターの毛や牙。


 果ては、カオスパールすらも素材となる。


 ダンジョンに巣食う悪魔を打ち倒さんと、すべてのダンジョンが力を貸しているのだ!!


「な、なにを……」


 黒子の腕が巨大な、眩いクリーナーへと変化する。


 これこそが勝利の鍵。

 どんな敵だろうが、スキルだろうが、関係ない。


 絶対に殲滅し、排除する。

 誰であろうと、逃れることはできない。

 このウェポンに不可能などないのだ。


 それが、ダンジョンサポーターの最強アイテムにして、究極の掃除機。


 その名も、


「デストーム・エリミネーター!!!!」


 駿河が、ヨルヨが、視聴者が、黒子を一点に見つめる。


「お願い、黒子!!」


「やっちゃえ黒子!!」


・やれえええ


・倒せ!!


・勝て!!


・黒猫黒子!!!!


「ぐっ」


 関白が尻尾を巻いて逃げ出す。

 が、


「なに!?」


 体が、動かない。

 スキルも発動できない。


「な、何故だ!?」


 徐々に引き寄せられていく。

 全ダンジョンのエネルギーを、ぶつけられる!!



 敗北してしまう!!


「ゴミクズのサル共がああああああッッ!!」


「ここからいなくなれええええええええッッ!!!!」


 縦に振られたデストーム・エリミネーターが、飛鳥関白を完全に押し潰した。












 数分後。

 黒子は元に戻った腕で、デストーム・クリーナーをリュックにしまった。


 このために、スキル無効化の力があるカオスパールを素材にしたのである。

 つまり、自分の意思で融合を解除できるのだ。


「終わりました」


・すげええええ


・勝った!!


・さすが黒子


・さす黒


 コメント欄が狂喜乱舞に包まれる一方、駿河が地に伏した飛鳥関白を見つめていた。

 かろうじて意識が残っているが、全身の骨が折れてしまっている。


「バカな……私が……こ、これは、夢だ……私と、サリーの、幸福が……」


「トドメは、私が……」


 駿河の腕を、黒子が掴む。


「私に任せてください」


「黒子」


「そのために、威力を落としたんですから」


 あれで全力じゃなかったのか。

 ならば、これからどうするつもりなのだろう。

 警察に突き出すのか。

 しかし、ダンジョン内は無法地帯。

 いくら殺人鬼でも、刑が軽くなる恐れがある。


「ちゃんと、相応の罰を背負ってもらいます」


「でも、どうやって?」


「駿河さん、私と一緒に、鎌瀬くんを助けたときのこと、覚えていますか?」


 鎌瀬太郎が黒子に弟子入りをするきっかけとなった戦いだ。

 たしか、はじめてドットマジェスティのメンバーと交戦したときである。


「えぇ、覚えているわ」


「最後、悪い人を小さくしたじゃないですか」


「そうだったわね」


 黒子がリュックから、水色のぶよぶよした物体を取り出した。


「スライムの死骸です。まずはこれを、関白と融合させます」


 関白が水色の、スライム人間となる。


「まさか、あなた……」


「続いてカオスパールと融合。これでもう、スキルは発動できません」


 なにをするつもりなのか。

 駿河はとっくに気づいているが、ヨルヨは首を傾げて見つめていた。

 もちろん、視聴者もである。


・なになに?


・どうすんの?


・てか黒子のスキルやばすぎ


・万能すぎるだろ


「そして、水を吸い取り蒸発させる『特製掃除機』で吸い取って」


 関白の体が、みるみる小さくなっていく。

 あのときも、こうやってドットマジェスティのメンバーを小さくしていた。


「最後に」


 黒子は小さな瓶を取り出した。

 中には既に、ムカデのような虫が一匹入っている。


「キルスライムムカデと言って、集団でスライムを捕食するムカデモンスターです。食欲旺盛なのですが、少食です。少し食べて、すぐ消化して、また食べます」


「え、黒子、まさか……」


「スライムなんで、外傷負傷欠損は、時間経過で回復しますよね?」


 問答無用で、小さなスライムとなった関白を瓶に入れた。

 しかも、律儀にポーションまで垂らしている。


 ポーションの回復効果により、関白の意識がハッキリとしはじめる。


「な、なんだ!? これはいったい!! わ、私の体が!!」


 さっそく、ムカデは餌となる関白に襲いかかった。


「やめろ!! な、スキルが使えない!? うがあああああ!!!! 食われる!! 私の体が、食われていく!!」


 補足をすると、スライム化しても寿命に変化はない。

 さらに付け加えるなら、このムカデは餌がある限り、人間より長生きする。


「やめろ、やめろおおおお!!!!」


 満腹になったのか、ムカデは食事を中断した。

 欠損した関白の部位が、再生していく。


「はぁ……はぁ……ま、まさか、俺はずっと食われ続けるのか。こんな、こんな虫けらに、殺され続けるのか!?」


 食われては回復し、また食われる。

 死ぬまで、半永久的に。


 ムカデの食欲が戻った。


「た、助けてくれ!! 黒猫黒子!! 痛い、痛いんだ!! 助けてくれ!! うぎゃああああ!!!!」


 黒子は冷めた瞳で関白を見つめ、駿河に呟いた。


「関白さんもお腹が減るでしょう。そしたら、ムカデの糞を食いますかね」


「そ、そうかもね……」


 さすがの駿河もドン引きである。


・えぇ……


・鬼かよ


・いやまあ、当然だろ


・死刑よりしんどいな


・ざまあみろ


・因果応報


・永遠に殺され続けろ、クズ


「じゃあこれを、地中深くに埋めちゃいましょうか。望み通り、魔王さんと一緒に異世界に飛べますね」


 一生ここから出られはしないだろうが。

 こうして、飛鳥関白との戦いが、幕を閉じたのである。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき


関白との戦い、終わりました。

関白編エピローグを挟んだあと、日常回に戻ります。

最終回まで、そう遠くありません。


応援よろしくおねがいします!!

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