表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/83

第7話 対人戦!! 駿河の実力!!

 広場と仲間の3人は動揺しつつ黒子たちを見つめていた。

 アポカリプスの魔女は配信業界でも上位に君臨する実力者。

 かたや黒子は、世間を騒がせているアイテム生産スキル使い。


 アンダーブのコメント欄も荒れている。


・ええええ!!


・偶然?


・あー終わったわ


・広場勝て


・勝て


・犯せ犯せ犯せ


・女の子ボコしてくれえ!!


 そうだ。これはチャンス。

 幸運にも、アポカリプスの魔女は配信をしていない。目撃者はここにいる人間と、アンダーブの人間だけ。


 数ではこっちが有利。

 この女どもをボコれば、ネットの変態どもから大金をスパチャされる!!


「お前ら、やるぞ」


 仲間も頷いた。


 一方、駿河は広場の側に浮くバーチャルディスプレイを一瞥し、状況を把握した。


 あの配信画面は、インターネットの最下層、ダークウェブにある闇の配信サイト。

 十中八九、スキルを用いてのリンチを楽しんでいる連中だろう。


 当然、ただでは返してもらえない。


 戦闘は避けられない。


 駿河が2本の刀を抜く。

 ふと隣に目をやれば、黒子は黙ってリュックからポーションを取り出していた。


 心なしか、表情が死んでいた。


「はい、太郎さん。ポーションです。サインは飲んでからでもいいですよ」


 さながら天使のように、優しく微笑みながらポーションを差し出す。

 その黒子の髪を、広場は引っ張った。


「なーに勝手なことしてんの」


 瞬間、黒子は広場の醜悪な手を振り払った。

 女性に抵抗され、広場の脳に血が上る。

 だが同時に、身の毛がよだつほどの悪寒が全身を駆け巡った。


「あなた達こそ、なにやってるんですか」


「見てわかんないかな? エンターテイメントだよ」


「こんなものが……」


 駿河が淡々と補足する。


「こいつら、人を傷つける行為を配信しているのよ」


 口調こそ静かだが、駿河とて機嫌を損ねていた。

 下卑た配信。野蛮な連中。人非人極まりない。


 虫唾が走る。


 駿河の声量に合わせて、黒子が呟く。


「私は、デリバリーなので、戦闘は苦手なんですけど……」


 丸い眼球が広場を睨みつけた。

 飢えた獣、いやそれ以上に凶兆的な眼差し。


「お前みたいな、自分の快楽のために平気で人を傷つける人間は、絶対に許せない!!」


 黒子の親は悪魔だった。

 平然と人を騙し、殺す悪魔。

 そのせいで黒子は地獄を味わった。


 親戚からも疎まれ、学校にも居場所がない。

 唯一、幼馴染の千彩都がいてくれたから、どうにか今日まで笑ってこられたのだ。


 許せない。見過ごせない。放ってはおけない。

 ダンジョンとは、みんなが清く正しく切磋琢磨しあって楽しむ場所。

 それをサポートするのが自分の役割。


 ならば、ダンジョンにふさわしくない悪魔は、


「私が倒してやる!!」


「ふ、ふん。返り討ちにしてやるよ。おい、お前らはアポカリプスの魔女をやれ。黒猫黒子は俺が直々にブチのめす」


 3人の仲間が頷いた。

 同時に、黒子はリュックからフレイムガンを取り出して広場に発砲する。

 迅速な行動に広場は対処しきれず、炎の弾によって腹部が貫かれた。


「くくく」


 不敵に笑う広場に、黒子は眉を潜めた。


 なぜ笑っていられるのかが疑問なのではない。


 フレイムガンの炎弾は、人を貫通するほどの威力はないのだ。

 それなのに、貫いた。

 しかも、痛がっている様子もない。


「俺のスキルを見せてやる」


 広場の肉体が、青く変色する。

 皮膚が、肉が、骨が、内臓が、半透明に透けていく。


「スライム化?」


「そうさ。変身のスキル。俺はスライムへと変身できるのさ」


 だから肉体が柔らかくなり、炎弾が貫通したのか。


「そして当然」


 穴の空いた腹部が、埋まっていく。

 回復力がずば抜けているようだ。





 一方、駿河は3人の男たちに囲まれていた。

 槍を持った槍術スキル使い、拳を構えた体術スキル使い、少し距離を取っているのは、十中八九魔法のスキル使いであろう。


 ザッと観察して、駿河は確信した。


 弱い。


 ならば早々に決着をつけて、ついでに情報を吐かせるのが最良。

 こういうアングラな冒険者たちであれば知っているかもしれない、姉のことを。


「アポカリプスの魔女さんよお、可愛い悲鳴を上げてくれよなあ」


「喋っていないでさっさと掛かってきなさい」


「言われなくても!!」


 魔法スキル使いが高圧の水を発射した。


 近距離では反応できないほど高速で放出された水鉄砲。

 しかし、駿河の目には鈍足な亀のように酷く遅く映っていた。


 水だけじゃない、男たちの動きすら。


 駿河が持つスキルは2つ。

 2本の刀を鮮やかに使いこなす双剣スキル。

 そしてもう一つが、見切りスキル。


 その効果は、敵が攻撃したとき、駿河の五感、素早さ、反射速度を著しく上昇させるもの。

 さらに、敵の弱点(ウィークポイント)が視認できるようになる。


 つまり、事実だけ述べるなら、


「は、はやっ!!」


 目にも留まらぬ速さで水鉄砲を回避しつつ、3人の男性の急所を峰打ちしたのである。


「ふぅ、久々に実力を発揮できた気がするわ」


 スライムや炎のモンスターでは剣術が活きなかったが、物理攻撃が通用する相手であればこんなもんである。

 峰打ちとはいえ威力が高かったのだろう。男たちは泡を吹いて気を失ってしまった。


 どちらのスキルレベルもAを超えている。

 完全にスキルを使いこなしている駿河に、接近戦で勝てるものはまずいないだろう。



 残りは、広場のみ。

 加勢するつもりはあるが、はたして黒子は対人戦をどう制すのかが気になる駿河であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ