第62話 逆叉千彩都 その1
黒子には幼馴染みがいる。
逆叉千彩都。配信はおろか、ダンジョンに入ったことすらない一般人の女の子だ。
ネットに詳しいため、幾度か黒子に情報を提供している。
その日、千彩都を含めたメンバーが黒子の家に集まっていた。
黒子、駿河、ヨルヨ、太郎。
飛鳥関白を追う、チーム黒子全員である。
黒子の口から、魔王の話が語られる。
関白の目的。この世界からの逃亡。
100%そうである確信はないが、十中八九間違いない。
「師匠の話が本当なら、関白はゴブリン化解除を諦めたってことっすかねえ」
太郎の疑問に、駿河が答える。
「できれば解除はしたいはずよ」
「でもゴブリンじゃないなら、一緒に異世界とやらに行けないじゃないっすか」
「そうなったら魔王とやらの部下になってしまえばいい。単純な話よ。……どのみち、早く見つけ出さなきゃいけない状況には変わりないわ」
そうですね。と黒子が相槌を打つ。
「ところで、お姉さんの方は……」
「関白の家の地下から押収されたときから、まったく腐食していなかったわ」
姉、松平小牧の残りのパーツ。
頭部と、四肢である。
「不死のスキルの影響なのでしょうけど」
「どうして関白は残しておいたのでしょう。証拠になるようなものを」
「ストック、だと思う。万が一、サリーのパーツが傷ついたり、ダメなったときの、一時的な代わり。姉さんは……綺麗だから」
「じゃあ、サリーを奪えば、元通りになるかもってことですね!!」
駿河が微笑む。
「うん」
「やっ……」
やった。と喜びたいが、サリーにはヨルヨの母の頭部も使用されているのだ。
小牧が復活できたとしても、母は絶対に蘇らない。
その事実があるからこそ、ヨルヨの前では、喜びづらいのだ。
気まずさを感じたのか、ヨルヨが口を開いた。
「別に、気にしちゃいないわよ」
「ヨルヨちゃん……」
「むしろ燃えてる。お母さんは戻ってこないけど、その分、絶対に駿河のお姉さんは助けたいって」
強い意志とは裏腹に、ヨルヨの目は確かに潤んでいた。
虚勢。己を鼓舞して、なんとか精神を保っている。
そう見抜いた駿河が、ヨルヨを抱きしめた。
「ありがとう。一緒に頑張りましょう」
「ちょ、暑苦しいのよ!!」
なんだか和やかなムード。
それを、千彩都は黙って見守っていた。
すっかり蚊帳の外。
黒子に一番近い存在だったのに。
「千彩都、どうしたの?」
「ん?」
「暗い顔してるよ?」
「そう? 普通だよ」
なにより苦しいのは、黒子との駿河の距離感。
傍から見てもわかる。相思相愛。互いに惹かれ合っている。
自分が入り込める隙など、まったくないほどに。
けれど、もしなにか功績を上げたなら……。
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自宅に帰って、千彩都は考えた。
飛鳥関白はどこにいる。
現在、救助隊やら恐れ知らずの冒険者が血眼になって捜索している。
様々なダンジョン。
終盤や、隠し部屋。
それでも、どこにもいないのだ。
人の気配を察知して、その都度ワープサファイアで逃げているのだろうか。
いや、だとしても、隠れ潜んでいた『痕跡』くらいは発見されるはずだ。
飲み食いや、火を起こした痕跡くらい。
それすら存在しない。
ということは、どこか誰にも想像できないような場所で、じっとしているのだ。
どこだろう。それがわかれば苦労はしない。
「黒子でも見つけられないんだもんなあ」
ふと、ネットで検索をかけてみる。
各ダンジョンの特徴やモンスター、ボス、手に入るアイテム、隠し部屋をまとめた攻略サイトだ。
クリックして、スクロールして、ブラウザバックをして、そんなことを繰り返しているうちに、チサトは考えた。
自分なら、どのダンジョンに隠れるだろう。
最高難易度とされている『ホルス』か?
いいや、そんなところ、逆に一番最初に捜索されそうだ。
となると、どこかの地下迷宮ダンジョン。
いやいや、そんな泥臭い場所に隠れたくない。
できれば比較的綺麗な場所がいい。
関白にしたって、自慢のサリーを汚したくはないだろう。
「へえ、お城のダンジョンか……」
本物の幽霊が出現したり、黒子たちが関白と戦った場所である。
「攻略には暗視ゴーグル必須、ねえ。ふーん、隠し部屋も結構あるじゃん」
関白は、このダンジョンからどこかにワープした。
もし自分だったら、あえてこの城のダンジョンに潜む。
まさか、同じダンジョンにいるとは、誰も考えないだろう。
捻くれた発想である。
「行ってみようかな、ここ」
財布から、白いカードを取り出す。
ダンジョンに入るための免許証だ。
何ヶ月か前、身分証として使うために作ったもので、本来の用途としては一切使用したことがなかった。
「一度くらい、入ってみるか」
黒子には内緒だ。
なんだか、恥ずかしいから。
一応、母親には伝えておくが。
「ついに私も、ダンジョンデビューかな」
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※あとがき
あと9話。あと9話で関白編終わらせたいです!!
長いよーっ。
よろしくね。




