第59話 無敵野マオ その1
「新生ドットマジェスティ、ねえ」
「そうよ駿河。ま、この私が倒してやったんだけど。くふふ」
麻雀決戦のあと、ヨルヨは黒子の家に戻り、黒子、駿河、太郎にことの顛末を語った。
もちろん、彼らが語った飛鳥関白に関する情報もである。
「つまり、彼らはその『ホルス』っていうダンジョンで関白の仲間を名乗るやつに、依頼されたってことね」
「そうよ。そいつは女らしいわ」
「女?」
一瞬、サリーが脳裏を過る。
だが彼女は生きた人形。とても意思を持って行動できるとは思えないし、喋ることなどできる様子ではなかった。
となれば、まったく別の第三者。
「新生ドットマジェスティ共のスマホを押収したから、ヤツらのスマホから誘き出すことができるかも。……って思ったんだけど、ビデオ通話で証拠を見せろって指示されちゃって、断念したわ」
「その、新生ドットマジェスティ共に、無理やり協力させればいいじゃない」
「いや〜、うーん、それは難しいかも……」
「?」
現在、彼らは語尾に「おっぱい」をつけて喋るド変態人間になっている。
明らかな異変。十中八九、異常事態だと気づかれるだろう。
そう考えると、ヨルヨの復讐は少々やり過ぎであった。
「ただ、どうやらその女も、関白に依頼されただけで、身内でも親族でもないらしいわ」
黙って聞いていた黒子が喋りだす。
「駿河さん、今からでもホルスに行ってみますか?」
「ごめんなさい、これから用事があるの」
「用事?」
「警察」
そのワードに、黒子は静止した。
きっと重要な用事なのだと、察したのだ。
「飛鳥関白の自宅から、姉さんの遺体が発見されたのよ」
「え、でも……あ」
「そう。胴体以外」
「そ、それじゃあ仕方ないですね。どのみち、まだホルスにいるとは限らないですし」
「ごめんなさいね」
「な、なんで謝るんですか!! 大丈夫です。じゃあ、後日調査するってことで」
ちょうどよく、スマホに通知が入る。
デリバリーの依頼だ。
黒子の瞳が驚愕で見開く。
指定されたダンジョンは、ホルスだったのだ。
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ホルスは埼玉県川口市にある最大級のダンジョンである。
地上3階、地下5階の巨大な城。
序盤でも高レベルモンスターが蠢き、終盤地下3階〜5階は、Sランク冒険者ですら攻略率が10%を下回る。
とはいえ、
「うーん、最深部まで来たのに、依頼主さんいませんねえ」
黒子は既にクリアしているし、再攻略も余裕なのだが。
ラスボスのファイナルカオスドラゴンのところまでたどり着く。
ちなみに、関白の仲間らしき人物はいなかった。
「わぁ、懐かしいですねえ。あのときはさすがに苦戦しました」
感傷に浸りつつ、デストーム・クリーナーで弱らせ、
「ちょっと、眠っていてください」
即効性の睡眠スプレーで眠らせた。
その間実に3分。一粒たりとも、汗はかいていない。
「あ、一応回収しておかないと」
眠っているドラゴンの瞳から大粒の涙が溢れる。
涙は硬化し、魔力石へと変化した。
カオスダイヤ。強力な能力を秘める魔力石で、このダンジョンのクリア報酬である。
「しかし……依頼主さんはどこにいるのでしょう。この先にいるって、依頼文には書いてありますけど、これ以上進めないんですよね」
隠し扉でもあるのだろうか。
入口までワープできる魔法陣が浮かぶだけで、他になにも変化はない。
「んー?」
辺りを凝視していると、壁に不思議な穴があった。
小さくて、何かをはめ込むような作り。
まさか。とカオスダイヤをはめ込んでみる。
隠し扉が、開いた。
「ええええ!? こんな仕組みがあったんですか!!」
気づくわけがない。
普通、最難関ダンジョンのラスボスを倒したら、歓喜と興奮で穴には目もくれず、そのまま外に出てしまう。
実際、かつての黒子もそうであった。
「ほわ〜。ダンジョンはまだまだ、謎がいっぱいです」
先に踏み込んでみる。
長い廊下を、電動キックボードで進みながら、黒子は早まる鼓動を感じていた。
何が待ち受けているのだろう。
真のラスボス的な存在か。
そこにいるはずの依頼主とは、いったいどんな冒険者なのか。
もしや、関白の仲間の女性か。
とすれば、誘き出されたのか。
暗がりの廊下を進み続けていると、光が見えてきた。
そして、
「お、来たようじゃな」
ふかふかのベッドの上で、大きなぬいぐるみたちに囲まれた、ジャージ姿の女性が、そこにいた。
褐色の肌。
長い黒髪。
抜群なスタイル。
抜群な胸。
抜群な巨乳。
抜群な、巨乳ッッ!!
あの黒子でさえ、『ちょっとえっちだな』とやや発情するレベルの、えっち具合であった。
「あ、あなたは……」
「お主にデリバリーを依頼した者じゃ。ご苦労じゃったの」
のんびりコーラを飲みながら、タブレットをいじっている。
フロアには姿見やタンス、テーブル、その他白物家電が揃っていた。
まるで、住んでいるかのようだ。
「じゃ、じゃあ、あなたが、依頼主の『無敵野マオ』さん?」
「そう言っておるじゃろうが。じゃが、無敵野マオは仮の名前。妾は『魔王』。あらゆるダンジョンを統べる、闇の帝王じゃ」
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※あとがき
次回、ダンジョンの秘密が明らかに!?
乞うご期待ですっっ!!




