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第55話 百合回かも? 石田成子 その2

 駿河と石田成子が、各々の得物を構える。

 その様子を、黒子含め視聴者たちが息を呑みながら見守っていた。


・アポ魔女負けるな


・かてーっ!!


・うおおおおお


・アポ魔女最強!! アポ魔女最強!!


「ふん、コメント欄もあなたの応援ばかり。ムカつきますわ」


 そりゃ駿河の配信を視聴しにきたファンなのだから、当たり前である。

 ちなみに、成子も配信をしているがコメントは0であった。


 視聴者数が6人なので、仕方ないかもしれない。


「す、駿河さん……」


「平気よ黒子。悪いけど、私が勝つわ」


 はじめて黒子に会った日から、駿河には疑問があった。

 黒子と自分、どちらが強いのか。


 黒子はあんな性格だし、もはやそんなことを気にするような仲ではないが、決着がつけられるのなら、つけてみたい。


 たとえ本人ではなくても、黒子の最強アイテムを使うのなら相手にとって不足なし。


「さあ行きますわよ!! デストーム・クリーナー発動!!」


 空間そのものが引き寄せられる。

 駿河も、黒子も、撮影用のクローンや壁まで。


 否が応でも間合いに入ってしまう。

 そのとき、


「いま!!」


 駿河の見切りスキルが発動。

 成子の背後に瞬間移動する。


「これで!!」


 峰打ちで終わらせてやる。

 そう意気込んだ直後、駿河は聞いた。

 成子の、笑みを含んだ呟きを。


「甘いですわね」


 デストーム・クリーナーの空間収縮がオフになる。

 圧縮された空気と魔力を含め、一気に放たれる。

 それは、背後にいた駿河をも吹き飛ばし、


「きゃっ!!」


 壁に叩きつけたのだ。


「くっ!!」


「おーっほっほ!! そんなもので、この最強アイテムを倒せるものですか!!」


「な、なぜ」


 見切りスキルを発動したとき、駿河の身体能力は常人を遥かに上回る。

 それこそ、まともな人間なら反応できない速度で稼働できるのだ。


「もしかして……」


「まるでシフォンケーキのような甘さですわね、松平駿河!! 黒猫さんのようにたくさんのアイテムがない代わりに、ワタクシにはワタクシの『スキル』があるのですわ」


「私と同じ、見切りスキル!?」


 確かに、成子も駿河の攻撃に合わせて見切りスキルを発動したのなら、対応できる。


「おーっほっほ!! ワタクシの勝ちですわ!! さあ、頭をついて謝りなさい!! 学校やネットでワタクシより目立ってごめんなさいと」


「別に、目立つつもりはなかったのだけれど」


「ムキーッッ!! その態度がムカつくんですのよ」


 黒子の瞳が不安に染まる。

 駿河が負けるとは考えたくもないが、デストーム・クリーナーの恐ろしさは生産者の黒子が一番理解している。


 コメント欄も、


・やばい


・うーん


・デストームクリーナー強すぎない?


・見切りスキル持ちか……




 駿河の敗北を察し始めていた。

 おそらく、このままでは負ける。


 だがどうすればいい。


 どうすれば……。


「さあ、次で終わりですわよ!!」


 またデストーム・クリーナーを発動される。


「こうなったら……」


 刀を鞘に納め、なすがままに引き寄せられる。


「おーっほっほ!! 諦めましたわね!!」


 また間合いに入ってしまう。

 黒子の身が強張り、縮こまってしまう。


 自分のアイテムで駿河が負けるところなど、見たくない。


「これでトドメですわ!!」


 最強の掃除機が振られようとした、その瞬間。


「え?」


 手を伸ばした駿河によって、クリーナーが掴まれてしまったのだ。

 まるで真剣白刃取り。


「ちょ、離しなさい!!」


「離すわけないでしょ」


「ならこのまま、吹き飛ばしてやりますわ」


 収縮を解除する。

 直後、成子の脳裏に自らの敗色が過ぎる。


 駿河と共に、掴まれたクリーナーが成子の手を離れ、飛んでいってしまったのだ。

 つまり、駿河に奪われた形になる。


「終わりね、石田さん」


「うぐっ」


 コメント欄が歓喜する。

 黒子もまた、ホッと胸を撫で下ろし、


「駿河さーん!!」


 思いっきり抱きついた。


「凄いです駿河さん!! カッコよかったです!!」


「そ、そう? うふふ、上手くいってよかったわ」


「さすが駿河さんです!! 怪我も無さそうで、本当によかった……」


「黒子、そんなに心配してくれたのね」


「だ、だって……」


 なんだかイチャイチャムードである。

 一方、負けた成子は、


「ひぐっ、ひぐっ、悔しいですわ」


 大粒の涙を流して膝をついていた。


「なんで、なんであなたに勝てないんですのよ……」


 駿河は黒子から離れると、成子に手を差し伸べた。


「私には目的がある。だから強いのよ」


「お姉さんのことですわよね? それが無くても、あなたはいつも人から尊敬されて、ズルいですわ」


「そうかしら」


「そうですわ。ワタクシはいつも日陰者」


「……名前、間違えてしまったけど、あなたのことはずっと知っていたわ」


「へ?」


「だって、いつも成績良いでしょ? 勉強でも、体育でも、なんでもかんでも一番であろうと常に努力しているの、知っているわ」


「……」


「私はそんなに向上心が無いから、尊敬してる」


「あなたが……ワタクシを……」


 成子の顔がみるみる赤くなっていく。

 下を向いても、頬が緩んでいるのがわかる。


「ワタクシを、ライバルと認めてくださいますの?」


「ライバルというか、普通にお話しする関係でいいと思う。学校のみんな、変に遠慮して私に近寄らないけど、石田さんなら……」


「それって、友達ってことですの!?」


「と、友達!? え、えっと、まあ、なってくれるなら、嬉しいけれど……」


 駿河は学校では常に独りだ。

 高嶺の花すぎて誰も友達になろうとはしない。

 唯一話せるのは、後輩の菊姫くらいである。


 無理に友達を作りたいわけではないが、もし、増やせるのであれば、増やしたい。


 成子は駿河の手を取り立ち上がると、恥ずかしそうにコクリと頷いた。


「これから、末永くよろしくおねがいしますわ」


「末永くって、そんな大げさな……」


・てぇてぇ


・てぇてぇなあ


・百合やんけ!!


・うおおおお


・え、黒子は?


 そう、一見歓喜に包まれた空気の中でひとり、面白く無い女がいた。

 妙に不機嫌な顔で眺めている女が。


 別に、駿河に友達が増えるのは大歓迎だが、何故だか無性に腹が立つ。

 さっきまで自分とお喋りしていたのに。


 抱きしめあってイチャイチャしていたのに。


「じゃあ私、帰ります」


「え!? ま、待ってよ黒子」


「成子さんと仲良く帰ればいいじゃないですか」


「い、石田さんはただの友達よ?」


「私だってただの友達です」


「えぇ、どうしちゃったのよ……」


 松平駿河。

 彼女もまた、黒子に似て無自覚モテモテ鈍感女なのだった。


「もう、駿河さんのバカ」


 黒子が抱える感情が何なのか、彼女が理解する日は……そう遠くないのかもしれない。

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