第46話 飛鳥関白 その3
切り掛かる駿河の前に、2体のオークが召喚される。
サリーの目のスキルで、影から召喚したのだ。
「だからなんだってのよ!!」
瞬殺してやろうと刀を振るうが、
「!?」
見えない壁に弾かれてしまう。
「悪いね。サリーには結界のスキルもある」
体のパーツだけスキルを持つ。
反則級の怪物。
いったい何個のスキルがあるのか、関白にしか分からない。
「くっ!!」
「ふふ、サリーを殺せばオーク共は消えるだろう。あぁ、殺せないのか、なんせ君のお姉さんの不死のスキルがあるからね。ふはははは」
「キサマッッ!!」
そもそも、サリーを切ることなどできない。
あれは、姉なのだ。他のパーツにしたって、関白に襲われた被害者のもの。
切れるわけがない。
オークたちが駿河を襲う。
回避自体は苦でもないが、攻撃がすべて弾かれてしまう。
頭上からも、背後からも、一切。
一方、
「フレイムガン!!」
黒子が関白に向けて炎弾を撃った。
しかし、
「炎弾。魔力の塊と火の集合体か」
弾は、ただの炎となって地面に落ちた。
透明で見えないが、炎弾を形作る魔力も、宙へと散っている。
「え!?」
「ふふ、甘い」
だったらと、ヨルヨが手をかざした。
関白の肉体が重くなる。
ヨルヨの重力操作のスキルだ。
「これで動きを封じたわ!! このまま潰してやる!!」
「ちっ……」
黒子が再度フレイムガンを向ける。
これでおしまいだ。その確信を胸に、トリガーに指をかける。
「くくく、皮肉なものだ」
「なに笑ってるんですか」
「サポートしてくれてありがとう、と言っているのだよ。黒猫黒子」
「え?」
関白は重たい腕を精一杯動かし、懐から魔力石を取り出した。
青い特殊な魔力石。
ワープサファイアだ。
ダンジョンからダンジョンへ飛べるチートアイテム。
しかし、それだけではない。
それだけではないのだ!!
「飛べ」
瞬間、関白がヨルヨの背後へ移動した。
同時に、対象を見失ったヨルヨのスキルが解除される。
重量操作は、対象が視界に入っていなければならない。
関白がヨルヨの背中を蹴り飛ばす。
「きゃっ!!」
頭を打ち、ヨルヨは気絶してしまった。
「こんなものか? 兄の方がもっと強かったぞ」
ワープサファイアは、一度でも足を踏み入れた場所なら、同じダンジョン内でも移動が可能なのである。
「ヨルヨちゃん!!」
「これにはずいぶん助けられているよ。黒猫黒子」
「そ、そんなことのために渡したんじゃありません!!」
「だが事実だ。君が、私をサポートし続けていたんだよ」
「私が……」
「そうさ。実はこれでも、何度か苦戦したことがあってね。大勢の人間に見られそうになったこともある。その度にワープサファイアが私を救ってくれたのさ。本当に、ありがとう、黒猫黒子」
「わ、わたしは……」
自分がワープサファイアを渡したから、関白はこれまで隠れ潜むことができた。
まるで協力者。
まるで仲間。
結果論ではあるが、度し難い事実。
血の気が引いていく。
もっと慎重に商売をするべきだった。
そうすれば、駿河も、ヨルヨも、悲しまなかったかもしれない。
日輪シンヤだって死なずに済んだ。ドットマジェスティなんて結成しなかった。
「君たちは私を追い詰めたつもりなのだろうが、そもそも根本的な部分がズレている。……君ら如きが、私に勝てるわけがないだろう」
「うおおお!!」
またフレイムガンを構える。
「学習したらどうだ」
トリガーを引こうとしたその刹那、
「え……」
フレイムガンが、おもちゃの銃と火の魔力石に分離した。
「半径10メートル圏内の無機物であれば、触れずとも『分離』できるのだよ」
合わせ、生み出す黒子。
分離し、破壊する関白。
あまりにも、相性が悪すぎた。
「ならっ!!」
リュックから取り出す。
黒子の最終兵器。
最強のダンジョンアイテム。
あの日輪シンヤすら撃退した、勝利の鍵。
「デストーム・クリーナー!!」
スイッチを入れる。
関白が、ヨルヨが、駿河やオーク、壁、天井、空気に至るまで、世界そのものが黒子に向けて収縮していく。
「なるほど、空間攻撃か」
世界の収縮には誰も逆らえない。
問答無用で間合いに入り、大打撃を受けるしかない。
「ここからいなくなれええええ!!!!」
「いや、いなくなるのは君だよ」
「!?」
黒子の腕から重みが消える。
眼前に、デストーム・クリーナーを構成する複数の素材が、散らばった。
大量の魔力石が、ポロポロと落ちていく。
「そ、そんな」
「まずはお前から、死ね」
関白が黒子の首を掴む。
手が、光りだす。
直接触れたなら、生き物すら分裂できる。
「原型すら残さん、黒猫黒子!!」
駿河が助けようとするも、間に合わない。
殺される。黒子が死ぬ!!
「師匠!!」
隅っこで様子を伺っていた太郎が、スキルでもって放水した。
水鉄砲の強い水圧に、関白が怯む。
「ちっ」
その一瞬の隙を突き、黒子は関白の手を払うと、
「最後の、賭け!!」
ポケットから注射器を取り出した。




