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第43話 駿河の憂鬱

 巨大なミノタウロスが駿河に斧を振る。

 駿河は見切りスキルによって敵背後に瞬間移動し、


「はぁ!!」


 双剣でハサミのようにミノタウロスの首を切り落とした。


 彼女の勝利に、コメント欄が沸く。


・さすがアポ魔女!!


・強すぎんだろ……


・最強!!


・かっけええええ


・俺も誇らしいよ


 駿河はコメントを流し見したのち、隅っこで腰を抜かしている男性へと近づいた。


「もう安全よ。この辺りは獰猛なモンスターが多いから、多少腕に自信があっても用心することね」


「あ、ありがとうございます!! 助かりました!!」


 どうやら、偶然居合わせた彼を助けるために戦っていたらしい。


 双剣を鞘に納める。


「今日の配信はこれくらいにしておきましょうか。目当てのディフェンダージュエルも手に入ったし」


 所持しているだけで耐久力が上昇する魔力石である。


・おつ魔女!!


・おつ魔女


・全ダンジョン制覇まであと少し


 駿河を労うコメントたち。

 その中に、


・【kuroko_kuroneko】今日もカッコよかったですっ!!


 黒猫黒子によって書き込まれたコメントが流れた。

 大切な親友が観てくれていたのだ。


 自然と頬が緩んでしまう。


「ふふ、ありがとう」


 いま、駿河は満ちていた。

 強くなった自分。

 黒子という親友。


 後輩の菊姫や、千彩都やら、ヨルヨやら、鎌瀬太郎やら。


 知り合いもたくさんできた。


 充実した毎日。

 しかし、同時に恐怖していた。


 もともと配信は、姉に見てもらうため、姉を探すためにはじめたもの。

 それがいつしか、『姉からの反応がない』ことが当たり前になってしまった。


 自分の中の、姉への執着が薄れているような、恐怖。

 それを実感するたびに襲いかかる焦り。


 進展がないもどかしさ。

 不安。


 ドットマジェスティのメンバーに入るべきだったのではないかという考えが、つい過ってしまうほどのーー。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 翌日、駿河が学校の廊下を歩いていると、


「松平さん」


 男性教師に呼び止められた。

 白髪混じりの髪。

 やつれた顔。

 あまり、女子からは人気ではない教師であった。


「午後の授業、松平さんのクラスは美術室ではなく、美術準備室に集まるよう、伝えておいてください」


「わかりました。飛鳥先生」


 教師の名は、飛鳥関白(あすかかんぱく)


「悪いね。お姉さんに似ているから、つい頼ってしまう」


「いえ」


 姉の松平小牧は、彼が顧問を務める美術部の生徒であった。

 小牧は、写生のコンクールで何度か入選するほどの腕前で、関白とも仲が良かったらしい。


「姉の方が、何倍も美人ですよ」


「ふふ、否定も肯定もしないでおくよ。変な誤解を生みたくないからね」


「……」


「小牧さん、早く帰ってくるといいですね」


「……はい」


 停滞への苛立ちが、また駿河の心臓を締め付ける。


「姉さん……」


「そういえば、君はダンジョンで配信をしているらしいね」


「まあ、はい」


「私はあぁいう俗っぽいのはどうも好きじゃないですが、口出しはしません。ただ、気をつけてくださいよ」


「そうですね。最近また配信者の少女が行方不明になったそうですし」


「……」


 もしかすると、姉の失踪と関係しているかもしれない。

 調査してみる価値はある。


 なんとなく、僅かではあるが、久しぶりに姉に近づけた気がした。

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