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第32話 久しぶりの菊姫ちゃん

「キャーッ!! 松平様よ〜!!」


「復帰なされたのね〜!!」


「あぁ、相変わらずお麗しい」


 実に一週間ぶりの駿河の登校に、学校中が湧き出す。

 黄色い声と熱い視線が駿河を取り巻いて、離れようとしない。


 黒子が5日間入院していたように、駿河も3日ほど入院していたのだ。

 それから黒子のお見舞いをしたり、親や警察と話したり、なんだかんだで一週間休んでしまったわけである。


「松平様こっち向いて〜」


「ダメよ!! 目が合ったらきっとわたくし、気絶してしまいますわ〜ん!!」


「はぁ、なんて凛々しい横顔でしょう」


 この持ち上げっぷりも久しぶりなわけだが、やはり鬱陶しい。

 そもそも駿河はチヤホヤされるのが好きではないのだ。


 友達と、そうでない者の境界線が太くて、分厚い壁さえそびえ立っている。

 友達じゃない者に何を言われようと、興味はない。



 つまりは人見知りなのだ。


「はぁ」


 今日も屋上で一人ご飯。

 松平ファンから逃れてのんびり昼食を食べるには、ここしかない。

 お弁当は、自宅の家政婦さんが作ってくれたものだ。


「そろそろ、配信も復帰しないとかしら」


 今日はどこへ行こう。

 せっかくだし、普段とは違うことをしようか。

 ここらでババっとチャンネル登録者数を増やして、海外での認知も高めていきたい。

 姉に反応してもらうため、姉の情報を得るため。


「あの、駿河先輩」


 名前を呼ばれ、顔を上げる。


「あなた……」


 スタイルの良い体。

 長い黒髪と、瞳を隠すほどの前髪。

 おどおどした態度。


「上杉、菊姫さん」


 先日配信者デビューした駿河の後輩にして、相手を強化するハズレスキル持ちの女の子、上杉菊姫であった。


「せ、先輩、ご、ご一緒しても……」


「えぇ、いいわよ」


 ちょこんと、菊姫が隣に座った。

 もともと彼女もぼっち飯常習者なのだ。


「だ、大丈夫ですか? ず、ずっと学校休んで……」


「平気よ。まぁ、いろいろあったんだけど、とりあえず平気」


「いろいろ……」


 菊姫に説明するつもりはなかった。

 単純に、心配をかけさせたくないからである。


「ダンジョンは……」


「復帰するわ。そろそろね」


「よ、よかった……。けど、親は心配しないんですか? いろいろ、あったんですよね?」


「あ〜、私の親は、基本的に私に無関心だから。医者になる兄は大好きだけど、医者になるつもりがない私は、見て見ぬ振り。だから、姉を家出扱いして探しもしない。親失格よ。まあ、なに不自由ない生活を提供してくれるから、感謝はしてるけど」


「お姉さん?」


「あ、いや。えっと、菊姫さんこそどうなの? 配信してるの?」


「はい。ちょっとずつ、登録者も増えているんです」


「へえ」


 スマホで菊姫のチャンネルを確認してみる。


「なっ!? チャンネル登録者数90万人!?」


「恥ずかしながら……」


 駿河よりは低い。

 しかし、彼女はつい最近始めたばかりのド新人。

 なのにこの勢い。この人数。

 来月には追い越されているペースだ。


 菊姫が美人だからか。

 いや、顔が良いだけなら駿河ももっとガンガン伸びているはずだ。


「い、いったいどんな配信を……」


 チャンネルの投稿動画一覧を確認してみる。

 一番上から、


・【やるぞ】幻のダークサンダーカブトムシ採集【必ず取る】


・【ついに30cm】地底湖でデビルプラチナフィッシュ釣り【頼むぞ】


・【感動回】キングウルフの子供、はじめての狩り【ハンカチ用意】


・【許すまじ】先生と共に毒スライム駆除【環境を守れ】


 こんな感じである。

 めちゃめちゃ面白そうであった。


「菊姫さん、虫とか平気なの?」


「は、はい。釣りも、お父さんとしてたので、好きです」


 案外アウトドアな趣味を持っているようだ。


「なるほど、あなた戦闘とか向いてないものね。こういう配信もあるのね……」


「はい。結構需要あるみたいで、コメントも、たくさんです」


「でしょうね」


 可愛い上に独自路線を突き進んでいるのなら、確かにあの伸び率にも頷ける。

 まだ冒険者ランクはCなので、危険の少ない序盤までしか進めない。

 しかしダンジョンの序盤が平和だからこそ、こういった夏休み自由研究みたいな企画ができるのだ。


「ねえ、私も参加してみていい?」


「え!? こ、コラボ、ですか!?」


「ダメならいいのよ。少し、興味が湧いただけだから」


「い、いや、う、嬉しいです!! また、駿河先輩とご一緒できるなんて」


「そんな、たいそうなもんでもないでしょうに」


「た、たいそうなもんです!! 綺麗だし、優しいし、かっこいいし、ときどき、可愛くて……ご、ごめんなさい!! 忘れてください!!」


「ふふ、ありがとう」


 その後、駿河は【アポ魔女コラボ】チビゴブリンの母の味を食べてみた【郷土料理?】という企画に参加。

 見事ネットで大バズリしたものの、謎の虫を食わされ腹を下したらしい。

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