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第31話 蔵前ララナ その2

黒鉄(くろがね)黒小次郎(くろこじろう)、ですか?」


「うん!! 娘がファンなの。なんかあ、ダンジョンランドリー? っていうのをやってて」


「し」


「し?」


「知ってますよ!! 黒鉄黒小次郎!!」


 黒子の目がキラキラと輝いた。

 毛が逆立つほどに興奮して、ぐぐっと拳を握るほどに感情が高ぶったようだ。


「私も会いたいです!!」


 説明しよう。

 黒鉄黒小次郎とは、蕎麦に詳しい老人冒険者である。


 しかしそれは表の顔。彼の正体は、持ち前の『洗濯スキル』でダンジョン冒険者の服を洗浄、乾燥してくれるダンジョンランドリー経営者なのだ!!

 ダンジョンサービス業の先輩である彼に、黒子はこっそり憧れを抱いているのである!!


「えへへ〜、そうなの〜? じゃあ、一緒に行きましょう」


「いいんですか!?」


・黒子がいたら百人力


・黒小次郎は隠し部屋でしか会えないからな


・珍獣捜索番組みたい


・ちなみに今も黒小次郎配信してるけど、客がいないから美味しい蕎麦の打ち方解説してるぞ


・普通に面白そうで草


「コメントの人たちも情報くれるし、絶対会えそうね!!」


「はい!!」


「そういえば、あなた名前は?」


「黒猫黒子です」


「うふふ、娘が大好きな黒鉄黒小次郎さんと名前がそっくりね」


「あはは、実はちょっぴり自慢なんです」


 逆である。

 黒小次郎がルルナの大好きな黒子と名前が似ているのである。


 せめてルルナがこの配信に気づいてくれたらいいのだが、悲しいかな、現在彼女は体育の持久走に挑んでいてそれどころではないのだった。


「よーし、れっらごー!!」


「れっつらごー、ですね!!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「やーっ!!」


 毎度お馴染みフレイムガンでミドルゴブリンたちを撃退する。

 しがない防御スキルしかないララナのために、黒子は全身全霊で騎士となっていた。


 ふたりが挑んでいるのはトンネル型のダンジョンで、終盤に差し掛かっても弱いモンスターしかいない、低難易度ダンジョンであった。

 それでも、ダンジョン初心者のララナにとっては危険がいっぱいであるが。


「ララナさん、お怪我はありませんか?」


「大丈夫よ。ありがと〜」


 むぎゅーっと大胆なハグ。

 ララナの豊満なボインに顔が埋まり、危うく黒子は窒息しかけた。


 大きな胸。太い足、お尻……。

 そうか、これが男を虜にする……えっちボディ!!


「どうしたの? 黒子ちゃん」


「い、いえいえ」


 そんなこんなで再出発。

 ダウジングコンパスに従って突き進む。


 黒鉄黒小次郎はどこかの隠し部屋にいるらしいのだが、このダンジョンは隠し部屋が多いため、黒子でも特定できないのだ。


「そういえば娘さん、おいくつなんですか?」


「16歳よ」


「あ、私の一つ上だ。会ってみたいですー」


「うふふ、きっと仲良くなれると思うわ♡ だって黒子ちゃん、優しいし良い子だし、気さくで、可愛いもの」


「か、可愛くないですよ〜」


・てぇてぇ


・歳の差百合かよ


・人妻とJKの百合は至高


・てぇてぇなあ


 ちなみに黒子は通信制の学校に通っているので、一応JKである。


 さらにテクテク歩いて、ついに2人は、


「こ、ここですね」


 隠し部屋の前に辿り着いた。

 黒子がザラザラした土壁に触れると、魔法陣が浮かび上がる。


「つ、ついに会えるのね」


「ですね」


 ゴゴゴと地響きを鳴らしながら、壁の一部が横にスライドしていく。

 ゴクリと息を飲み、中へ入ると、


「よくぞ辿り着いたな」


 白い髭を生やした老人がいたのだった!!


「あ、あなたが、黒鉄黒小次郎さんですか?」


「いかにも」


・きたーーっ!!


・幻の配信者!!


・さす黒


・おおおおおお


「ワシこそ黒鉄黒小次郎。普段は蕎麦について語る配信をしているが、ワシに会えたご褒美になんでも洗濯してやろう。ほれ、汚れた服を脱ぐがいい」


「え!? 脱ぐんですか!?」


「隣の隠し部屋を更衣室にしてある。着替えもあるぞい」


「それなら安心ですね!!」


 安心である。


「あの〜」


 恐る恐るララナが手を上げた。


「サイン貰ってもいいですかぁ?」


「うむ」


「記念写真は……」


「よかろう」


「ありがとうございます!!」


 よかったね。


「うぅ、黒子ちゃんもありがとう。おかげで娘とまた仲良くなれるわ」


「いえいえ!!」


 黒小次郎の前方に、大きな水の玉が出現する。

 これで洗濯するらしい。


 2人は無事に衣服を洗濯&乾燥してもらい、記念写真とサインをもらった。

 配信も見事に大成功。

 たくさんスーパーチャットも貰えて、万々歳である。


 めでたしめでたし。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 その日の晩。


「な、な、な、なんじゃこりゃーーーーっ!!」


 帰宅して黒猫黒子スレを開いたルルナが、日本中に響き渡るほどの絶叫をあげた。


「ママーーッッ!! ママーーーッッ!!!!」


「はいはーい。ルルナちゃん、いつの間に帰っていたの?」


「それよりママ!! ネ、ネットに書いてあったけど、本当に黒猫黒子ちゃんと一緒だったの!?」


「うふふ、そうよ〜。じ、つ、は、ルルナちゃんの大好きな黒鉄黒小次郎さんのサインを貰ってきたのだ〜」


「誰よその渋すぎる名前のおじさんは!! 黒猫ちゃんは? 黒猫ちゃんのサインとか連絡先は?」


「へぇ?」


「へぇ? じゃないよ!! そもそもなんで教えてくれなかったの!! 学校抜け出して会いに行ったのに!!!!」


「だって好きなのは黒鉄……」


「黒猫黒子ちゃんだよ!!」


「えーっ!? そうだったのー!!??」


「もう!! ママのおマヌケーーっ!!」


 ルルナの反抗期は、まだ続きそうである。

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