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第22話 やりすぎルルナ

 蔵前ルルナは学校付近にある喫茶店でバイトをしている。

 バイト先の店長とは元々同じアイドルを推していて、そのアイドルが引退してもなお仲がよかった。


「はぁ〜」


「どうしたのルルナちゃん。深い溜め息ついちゃって」


「実は、大好きな女の子がいるんですけど、ぜんぜん会えないんです」


「へえ、どんな子なの?」


 ルルナは語った。

 黒猫黒子の魅力を語り尽くした。

 その長さ実に5時間。


 バイトの勤務時間をフルに使っての大演説。

 それを笑って聞いてくれた店長は、おそらく神が差し向けた天使かなにかなのだろう。


「ふーん、自分は一切配信しないネットの有名人か……」


「そうなんです!! 探索スキルでもまったく見つからないし、もしかして私、避けられてるんでしょうか」


 運命が黒子の味方をしてくれているのだろう。

 こいつに遭ったら拉致監禁の末に人でなくなるぞ、と。


「えーっと、松平駿河さんって人が、黒猫黒子ちゃんと仲良しなんでしょ?」


 ルルナの瞳に怒気が宿る。


「仲良しじゃありません。ただの知り合いですよ」


 嫉妬心もエグい女であった。

 そりゃあ、『機会があれば会わせる』とか約束しておきながらまったく連絡してくれないのだから、多少の怒りはあるだろう。


「黒猫黒子ちゃんと繋がりがある唯一の人物。ルルナちゃんと黒子ちゃんを繋ぐ線。それが駿河さん」


「そう、ですけど?」


「黒子ちゃんの居場所はわからなくても、松平駿河さんとは、毎日学校で会っている」


 瞬間、ルルナの脳を閃光が疾走(はし)った。

 宇宙が誕生するかのような閃きの爆発。

 この世の真理にすら到達しかねない衝撃が、ルルナの唇を綻ばせた。


「そうか……。そうだったんですね、店長!!」


「うんうん」


「松平駿河を尾行すれば、いずれ黒猫ちゃんにたどり着くッッ!!」


 気づいてしまったか……。

 どうやら店長は天使ではなく悪魔の使いであったようだ。


「一日中駿河さんを監視する。外でも、ダンジョンでも。黒猫黒子ちゃんと会うまでッッッッ!!!!」


 犯罪組織のボスの正体を捜査する刑事みたいである。

 こっちが犯罪に近いが。


「ありがとうございます店長。私、がんばります!!」


「がんばって」


 頑張るな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 数日後。

 ルルナは本当に駿河への尾行を開始した。


 なぜ数日期間を空けたのか。

 それは駿河がAAAランク冒険者で、ルルナがBランクだからだ。

 ランクが違えば進める範囲も変わる。

 途中までしか監視できなくなる。


 故に、数日をかけてランクを上げまくったのだ!!

 AAAまでッッ!!


 この行動力、地球環境の改善などに活かしてくれたらよかったのだが。


「むむ〜、黒猫ちゃん来ない〜」


 駿河だって毎日黒子と会っているわけではない。


「まさか尾行がバレてる? んなわけないか……」


 モンスターが現れるが、駿河が華麗に撃退する。

 槍が落ちてこようが矢が飛んでこようが、駿河は一切怯むこと無く対処していった。


 まさにクールビューティー。

 端麗で凛とした駿河に、ルルナも目が奪われる。

 誰が見ても美しい。それが松平駿河なのだ。


「……まてよ」


 そもそもどうして駿河は黒子と頻繁に会えるのだろう。

 もしや2人は……そういう関係なのだろうか。

 可愛い女の子とカッコいいクール女子。王道な組み合わせ。

 まさか黒子は、駿河のことが……。


「うぎゃあああああ!!!!」


 ルルナの脳が破壊されてしまった。

 別に黒子と付き合ってないのに浮気された気持ちになってしまったのだ。


 突然の絶叫に駿河が振り返る。


「え、蔵前さん?」


 悲鳴に驚いたのは駿河だけではない。

 土の下で眠っていた巨大ミミズも、またーー。


「なっ!? 蔵前さん危ない!!」


「え?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ルルナが目を覚ます。


「あれ?」


 体が上下に揺れている。

 地震……ではない。おんぶされているのだ。


「起きた?」


「駿河さん……」


「ミミズのモンスターに襲われて、あなた気を失ったのよ」


「え、え?」


「私が倒したから安心して。もうすぐ外に出られるわ」


 背中から降ろしてもらう。

 どうやら、だいぶ迷惑をかけていたらしい。


「あ、ありがとう」


「気にしなくていいわ。それにしても意外ね。あなたもダンジョン攻略をするなんて。配信はしていないみたいだけど」


「ま、まあね」


 あなたを尾行してました。なんて言えるわけがない。


「あの、駿河さん」


「なに」


「駿河さんって、黒猫ちゃんと……どういう関係なの?」


「どういうって……友達だけど」


「ホントに? ただの友達?」


「えぇ」


 正確には最近『親友』へとランクアップしたが。


「よかった〜。そういえば、会わせてくれるって約束は?」


「……」


「駿河さん?」


「断られたわ」


「そうなの!?」


「人見知りなのよ、黒子は」


 嘘である。

 聞いてすらいない。

 駿河も駿河で、独占欲が強い女なのだった。


「そっか……」


 ルルナのテンションがみるみる落ちていく。

 我に帰ったのだ。

 さすがに今回はやりすぎた。


 関係のない他人を巻き込んでまで推しに会いたいなんて、害悪ファンの典型ではないか。


「ありがとう。ごめんね、駿河さん」




 その後、


「うっひょおおおおおお!!!!」


 帰宅したルルナは黒猫黒子スレで新たなる画像を手に入れた。

 浮気調査の配信に黒子が参加した際の動画から、ベストな一枚を切り取ったものだ。


 ルルナはさっそくプリントアウトして抱きまくらに貼り付ける。


「黒猫ちゃん、いつか必ず会いにいくからね」


 反省こそしても、決して諦めない。

 それが蔵前ルルナであった。


「必ず。必ずね。うふふ」

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