8 何か大きくなってません?
カイトとレイチェルが出会ってから、日々カイルはだんだん大きくなっていく。
「獣人って、もしかして成長が早いのかしら?」
首を傾げつつも、獣姿のカイトをブラッシングしているレイチェルは、天然さんだった。
どう考えても異常な速さで成長しているのである。
レイチェルのブラッシング係は一ヶ月を過ぎた。
カイトに最初に出会った時は10歳くらいの少年だったのに、今は16歳くらいになっていた。
(カイト様は成長期なのかしら?)
レイチェルはカイトの麗しい姿が気になってしまい、食事の時も少し恥ずかしかった。
(お顔が整っていて眩しいわ)
レイチェルは昼下がりの数時間のブラッシング以外にすることがない。
午前中は図書室で本を読むのが日課になった。
伯爵家には沢山の本があり、飽きることがなかった。
図書室の本棚は天井まであり、整然として綺麗に本が並べられていた。本好きなレイチェルは心踊らせた。
(さすがに伯爵家ね)
たまに図書室でカイトと会うこともあった。
「なんの本を読んでいるの?」
カイトに声をかけられる。
麗しい青銀色の髪を持つカイトは魅力的だ。
「え、えっと、農業関係の本です。 私の田舎の領地は土地が痩せてて、なかなか作物が育ちにくいんです。」
レイチェルはカイトに会い、内心戸惑ったが、嬉しくもあった。
「へぇ、レイチェルは勉強熱心なんだね。」
「ありがとうございます」
「領地が痩せているんだね」
「そうなんです。肥沃にする為に何をすればいいのか、色々と探してます」
「そうなんだ。隣、いいかな?一緒に探すの手伝うよ?」
「は、はい!」
カイトはレイチェルの席の隣に座り、本を読み始めた。
(きゃあ、カイト様が、私のと、隣に!)
レイチェルは本を読むふりをしながら、カイトの横顔をチラ見した。
(睫毛がバサバサしてる。青銀髪はサラサラして、綺麗・・・)
カイトの少し成長している姿。
レイチェルはさらにドキドキした。
(カイト様、本当に素敵)
ほんのり頬を染めていると、カイルがこちらを向いて、コテンとした。
「どしたの?」
(ああぁ、カイト様!そのお顔でコテンは反則ですぅ〜)
プシューと一気に顔の熱が上がってしまい、真っ赤になるレイチェル。
カイトはこの頃レイチェルとよく図書室で会う。
偶然を装うが勿論わざとだ。
(レイチェルともっと親しくなる為にはどうしたらいいか)
レイチェルに近付いて、長く一緒に居るなら、図書室だろうなという結論だった。
幸運にも二人して同じサーカイル伯爵邸にいるのだから、それを最大限に利用させてもらおう。
ブラッシングの時間以外のレイチェルの動向を探り、所謂隠れストーカーみたいになっているカイト。
レイチェルが農業に関する本を探していたので、カイトは手伝うねと言いながら、毎日レイチェルの隣に長時間座れるという口実を得たのだった。
☆レイチェルと一緒にいたいカイト。