6 伯爵の思惑
サーカイル伯爵の心情。
私はサーカイル伯爵。
この度、我が屋敷で、第三王子であるカイト様を保護することになった。
カイト様が呪いに冒されて、若返りし始めたのは、三ヶ月前だ。
この世界には人と獣人が共生し仲良く暮らしているが、いつの時代でも何かしら争いはあるものだ。
カイト様が巻き込まれたのは、跡目争いだろう。
第一王、第二王子と、カイト様はそれぞれ母親が違う。 そして、カイト様は優秀だった。
第一か、第二か、どちらかの取り巻きから、カイト様は呪いをかけられた。
呪いをとく方法を三ヶ月捜している間、カイト様は影武者を立てて、こちらの屋敷にやって来た。
どうやら、呪いの解除には純真な女性の力が必要らしい。
呪いを受けたカイト様のために、ブラッシング係を求めることになった。
純真な女性を国中から探した。
求人してきた女性達は配下の者に予め調べさせていた。
カイト様のブラッシング係だ。
下手な人物はつけられまい。
合格したレイチェル嬢は、田舎の貴族令嬢で、真面目らしい。田舎から、こちらの求人に来るように色々と手を打った。
(カイト様とレイチェル嬢、果たして仲良くなれるかな?)
呪いの解除は異性との交流が必要不可欠だ。
純真無垢の女性の持つ気の波動により、徐々に呪いは解除されていくらしい。
カイト様とて、ただ女性と一緒にいるのは苦痛だろうから、ブラッシングしてもらうのはどうかと提案した。
本来は成人しているカイト様の獣姿はもっと大きいのだが、今は少年。
可愛らしい狼である。
今、レイチェル嬢はニコニコしながら、ブラッシングしている。
それを見て、私としてもここ三か月の忙しさが癒やされる。
上手く行けば、次第にカイト様は大きくなるはず。
何ヶ月かすれば、カイト様は元に戻ることが出来るのではないだろうか?
レイチェル嬢にはカイト様の呪いについて説明してはいないが、 いずれ成人したカイト様と対峙することになる彼女の、あたふたした姿を見るのは楽しそうだ。
サーカイル伯爵はそんなことをふと考えた。