3 ブラッシングのお相手は?
「早速だから、顔合わせしようか?」
サーカイル伯爵に連れられて、広い庭の一画に案内される。
そこには芝生があり、座っても寝転がってもよさそうなくらい整えられている。
芝生の方を見たレイチェルはどんな種類のもふもふがいるのか楽しみで仕方が無い。
(ど、どんな可愛い獣ちゃんかしら?)
芝生の上に座っている何か。
そこの区域は周りに木が植えてある。
(あの子かしら? 大型兎?大型狼? )
ワクワクしながら、よく見ると、
(獣人よね? ふわっ、何か少年みたいな?)
「あの子のブラッシングをよろしく頼むね!」
(うわっ、なんでこうなるのかな?!)
(ブラッシング相手は獣じゃない! しかもとても整ったお顔をしている獣人の少年!!)
青銀色の髪の美麗な少年で獣耳が付いている。
(少年にブラッシング仕事?! えっと、いいんですか?可愛らしい少年ですよ?)
「カイト、こちらはレイチェル嬢。君のブラッシング係に決まったよ」
「は、はじめまして、レイチェルと申します」
「はじめまして、よろしくね、レイチェル。僕はカイトだよ」
(あわわっ)
ニコッと笑った顔が可愛い!
「カイトは今はこの姿だけど、ブラッシングのときは、姿が変わっているからね。 明日の昼から、ここでお願いね」
「は、はい。分かりました!」
(獣姿になるのね!
それなら大丈夫かも。
獣人のままなら、どこをブラッシングしていいか分からないもの)
レイチェルはほっとした。
与えられた一室は、田舎の自室に比べると大層豪華だった。 机があり、ベッドがあり、召使いに与えられる部屋には見えない。
「わあ!素敵!」
(田舎の私の部屋よりかなり広いし、整えられていて、さすが王都の貴族)
召使いに案内された部屋で、一人になりレイアはほっとした。
(あんなに可愛い子をブラッシングするだけで、お給料が頂けるなんて、ありがたいわ)
「本当に可愛かったわ・・・」
(年は私よりもちろん下よね。あの髪の色、綺麗だったな)
青銀色のサラサラした髪から獣耳がピコンと立っているカイルの姿が浮かんだ。
(獣化したら、どんな感じになるのかな。ブラッシング出来るなんて、嬉しいわ)
ふかふかのソファーに座り、その日のことを思い出していた。
(うわっ、柔らかくて座りごごちが良くって、最高!)
「ブラッシング係の職に付けて、恵まれているわ」
「明日からのお仕事、頑張らなくちゃ」
田舎に暮らす、両親や弟達を思い出す。
「皆、元気にしてるかしら」
田舎の領地は土地が痩せている。
(収穫が増やせるようになればいいんだけど。)
田舎にいては何もできないと、レイアは王都に出稼ぎに来た。
土地を肥えさせる知識も欲しかった。
(こんな立派なお屋敷だもの。 図書室があって、農地についての本があるなら、読ませて欲しいな)
(落ち着いたら、サーカイル伯爵にお話してみよう)
王都での順調な生活にレイアは再び感謝した。