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運送業者の香典2

 パン屋の仕事は簡単だった。

 都市通貨ってのは種類がいくらあってもレートはほぼ変わらないんだ。

 だから基本の(エン)(ゼニ)(ドル)(セント)を覚えればカネについてあれこれ覚える必要がねえ。

 企業通貨1弗が補助通貨100仙で、仙と圓が同じ。でもって1圓が補助通貨100銭だからな。

 まあ、銭なんて滅多に使わねえがよ。


 とにかく、朝店主から大量のパンを受け取って指定の場所で売り切れるか時間になるまで1個1弗で販売する。

 終わったらまた店主の所に行って精算、日当の支払いだ。

 まあ、昼過ぎに1回売りきっちまうんで店主のところ行って在庫補充するんだけどな。


 それでも大抵は夕方に売りきっちまうんで、早めの夕食食って新たに借りたボロ家でさっさと寝るのがあの頃のルーチンだったな。



 仕事は楽しかったぜ。

 日当もさることながら賄い飯がなかなか美味くてよ。

 今食ってるこの味付きコッペパンがよく出たんだが、毎回食いきれないほど出されるんで護衛の連中や客に高値で売ったりしてたんだ。

 食パンを一斤丸ごと出された時なんか食い切れねえからって、冗談半分で競らせたらアホみたいな額になったのも懐かしいな。

 二重にも三重にも美味い働き口だったよ。


 んで、そんな生活を一月(ひとつき)ほどしたらとんでもねえ額が貯まったんだ。

 つっても売り上げから出たカネなんで通貨はバラバラ、そのままじゃ使い物にならねえ。

 ま、そうだからボロ家に置いても盗まれることもなかったんだがな。



 そんな感じで半年過ぎた頃、店主が飽きたんでパン屋を辞めると言い出した。


 それを知った客はパニックになるかと思ったが、意外と冷静で口々に珍しいモンが食えたって礼をしていったんだ。


 営業最終日には都市行政部が租税徴収に来たんだが、扱ってた貨幣がほぼ他企業のもんだから何も取れずにヒステリー起こしてたのがおもしろかったな。


 そんで都市治安警察とマフィアの連絡員に商売をたたんだことを正式に報告してパン屋は終わったんだが、元手ができた俺は次の仕事を始めようと思ったんだ。


 店主がもう不要だからと処分しようとしていた屋台トラックを貰い受けたんだよ。なんかの商売に使えると思ってさ。

 幸い屋台トラックは汚染されていないきれいな状態だった。


 だがガソリンエンジンなんて骨董品積んでたんで、換装しなきゃならなかった。

 旧世代の骨董品つけた車両が汚染もされず残っていたってことで好事家に高く売れたんで、それを元手に新しくエンジンを取り付けようってなったんだが……ここでボイド(あいつ)が茶々を入れてきてな。



 あのとき屋台トラックに乗せることのできる比較的小型のものは3種類あった。

 水素燃料エンジン、電気モーター、そしてミュータントコア・モーターだ。


 水素燃料エンジンはヴァリアント(お前)の知ってる通り、汚染レス燃料エンジンとして一般的な燃料充填式のエンジンだ。

 広く普及してるしパワーもそこそこあるし、燃焼後は飲料水として再利用できるのが大きいな。

 充填スタンドが世界中にあるってのも利点だ。


 電気モーターはなんと言ってもパワーがダンチだ。

 部品が少ないんでイニシャルコストが低いってのも利点だが、持続力がゴミすぎるってのが問題だ。

 まあ、常に給電できる鉄道の様な公共交通機関で利用されているのがほとんどだな。


 ミュータントコア・モーターは客商売じゃあまり聞いたことがないかもしれないが、電気モーターの一種でな。

 持続力・パワー共に申し分ないんで、重機によく使われている。

 使い方は……そうだな、バッテリーを思い浮かべてくれ。溶液の代わりとして粘土状にしたコアを詰めて一次電池(つかいきり)として利用するんだ。

 難点はランニングコストがバカみたいにかかるんで普通は選択肢に入らない。


 そう、普通は選択肢に入らないんだよ。

 それが見たことないからって勝手に載せやがったんだ。


 シメるよな?同じ目に遭ったら誰でも。

 本体に取り付け費用、それに当面の燃料費は全部ボイド持ちにすることで許してやった俺は心が広いと思うぜ。


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