平行線の煙草2
そっからは園芸屋デビューだ。
食わせるためにカジノは継続しつつ、残りの金全部叩いて土壌なんとかするのに20年。
種はプランター栽培で増やしながらやってきた。
土壌改良の肥料類はあいつが定期的にきて売ってくれたんで安く済んだ。
それで、やっとの思いで収穫したタバコなんだが……それまで何もしなかった上層の連中が根こそぎ奪おうとしたんだ。
「ホリゾンタル。馴染みのシティーガードから情報だ。どうやら取締強化をうたって俺たちを潰す気らしい。」
「チッ。地上への出入りから割れたか。予想より早いな。」
「どうします?」
「どうもこうもねえ。報復の準備をしとけ。先に手を出すなよ?」
「ラジャー。味方の情報共有も密にします。」
そうして始まった戦争なんだが、上層の奴ら、短期決戦を選んだらしく取締強化と同時に地中貫通爆弾撃ち込んできやがった。
そんで、巻き添えになった地区の連中がキレて地上を吹っ飛ばしたんだ。
幸い農場には影響でなかったんだが、たった3日で街はもう見るも無惨でな。
末端の反乱でシティーガードが同士討ちするわ、どさくさでシマ争いになるわ、兵器商だけが笑うカオスな状況だった。
戦争の元となった農場は暗黙の了解で非武装地域になった。
利権がなくなると戦争の意味がなくなるからな。
とはいえ、何もしなかったわけじゃねーぞ。
FPSゲームで鍛えたっつー仲間がトラップベースをそこかしこに仕掛けたり、アジト近隣に応援で戦闘に参加したりと色々やってたぜ。
ただ、やはり支配企業の力ってのは強くてな。
俺等含めて地下の勢力はインフラ抑えられてジリ貧に追い込まれていったんだ。
農場は出入り口を押さえられ物資も付きかけ、気力だけで戦ってきたがどうしようもない状態まで来て、上層が勝利宣言とばかりに農場を背景に降伏勧告を行う映像を地下全体に送ってきやがった。
投降の受け入れは24時間後まで。
そこから先は地下が跡形もなくなるまで爆撃を行うってな。
地上だけじゃやってけねえ癖にって今は言えるるが、当時は目先のことしか見えねえからな。
10時間が経った頃、投降するか仲間と連絡をしている時だ。
「ねえねえ、あいつらの切り札って本社ビル付近に配備しているバンカーバスターで合ってる?」
「ん?ああ。ボイドか。そうだ、他の基地からは撃ち尽くしたらしい。だが1発でも撃てる分あいつらの方が有利なのは間違いないな。」
「ふーん……それならハッカーって知り合いにいる?できればネットじゃなくてマシン言語に詳しいの。」
『ハッカー?随分古い言葉だね。今はネットランナーと呼ぶのが一般的だよ。』
通信していた仲間の一人が反応した。
こいつは俺たちの街にはいないが、表で色々やらかして地下に潜っているのを助けた縁で繋がっている奴だ。
「……通信の人、誰?」
「お前が言うところのハッカーだ。名前は聞かん方がいいぞ。」
『それで、僕らに何の用だい?オフラインとなると流石の僕も手を出せないのだけれど。』
「ちょっと頼み事。玩具を改造してもらいたくて。」
『ふぅん。どうせ暇だし、古くてもいいから端末を繋げてくれるなら請け負うよ。』
「そう?じゃこれでいい?」
出してきたのは枠が太くて物理キーボードが付いている端末だった。
端末から伸びているコードを見ると単相交流電源で、プラグはユーロプラグ。
電源無いのにどう使う気だと突っ込む前に奴が反応した。
『すごい骨董品だねぇ。でも電源保たなそうだしスペック的に厳しそうだから、ホリゾンタル。君が用意してくれるかな。』
「そのへんのジャンクで良いか?」
『ネットワークに繋げられるなら良いよ。シグナルを送ってくれるとなお良いね。』
そっからだ。
最後くらい派手にやってやろうと迎撃の用意を整えていたんだが、企業連中の総攻撃が始まる時間になってもウンともスンともしねえ。
ただ、他所で地震が起きたという報告が来て、企業の連中が右往左往しているってんで破れかぶれの突撃仕掛けたらあっさり抜けてな。
拍子抜けしながら勝鬨をあげたわけだ。
暫くして、例のネットランナーから妙にテンションの高い通信が来た。
『やあ、ホリゾンタル。祝杯を上げよう。僕達は伝説を作ったぞ。』
「なんだ、藪から棒に。」
興奮冷めやらぬ奴の話を整理すると、とんでもない事が起きていた事がわかった。結果を言えば企業の連中が自爆した。
それだけなんだが、裏でサイバー戦争してたらしい。
バンカーバスターを配備している基地に侵入して、弾頭のコンピュータに着弾点の座標を書き換える……奴が言うには外からどんな座標を転送してきても必ずそこにセットされるよう細工をしたんだそうだ。
発案はあいつ。玩具とはバンカーバスターのコンピュータっつーわけだ。
そんで総攻撃のアタマから潰された企業連中は大混乱に陥り、隙だらけのところを攻められて瓦解。
企業は潰れ、代わりに俺たちが頂点に君臨したってわけだ。




