爆走番長(SIDE詩織&優斗)
秋名走司。
彼が初めて単車に乗ったのは保育園児の頃だった。
肌で感じる風、身体中に滾る熱。
生じた圧倒的全能感。
この時、走司は悟った。自分は、単車に乗るために生まれてきたのだと。
単車の魅力に憑りつかれた走司は無免許で単車を乗り回し、湘南の夜道を走った。
気付けば彼は、地元で一番の走り屋として名を馳せていた。
その後【羅天煌】に入り、『捌番隊』の隊長として単車で全国を駆けた彼はその名を全国に轟かせた。
ーー【爆走番長】。
不良たちは、彼をそう呼んだ。
「ぉ、お前……ぇ!!」
「はは!! そんじゃあ、地獄のツアーにご案内といこうかぁ!!」
「ぐぅ!?」
走司の威勢のいい声と共に、彼の単車の前輪が薬丸の腹部への激突する。
コイツゥ!! 単車でそのま俺に攻撃かましやがった……!!
ざけんなぁ、ンなメチャクチャな攻撃でぇ……!!
「俺をぉ、をぉをぉどうにかできると、思うなっよぉ!!!」
薬丸は拳を握る。そして、
「フンッッッ!!!」
バッキィィィィィィィィィン!!
走司の乗る単車に拳を放つ薬丸。
「おいおい、ソイツは……悪手だぜ?」
「ッ!?」
直後、薬丸の拳に激しい痛みが走る。
「ぁぁぁ……!!」
なに……なんだぁ!? 麻薬で強化った今の俺なら、鉄だろうと貫通できるはずぅ、なのにぃぃぃぃぃ!!
「コイツはちょっと特別製でなぁ。お前程度じゃあ、傷一つつけられねぇよ」
走司の愛車、【牙狼丸】。
【羅天煌】の力を借り超合金や超高品質の部品を取り寄せ、一級整備士以上の腕を持つ走司が魔改造を施した単車である。
約五百キログラムの重量でありながら、その最高時速は約七百キロ以上。加え圧倒的強度とパワーを誇る。
名実ともに、度を越えた怪物車だ。
「っなラァ!!」
薬丸は狂気ってる目で、走司を見据える。
そのまま運転している走司に向かい、パンチを放った。
「っと!!」
だが、その攻撃も失敗終わる。
攻撃が当たる直前、走司が薬丸の拳を受け止めたからだ。
「何ィ……?」
「おうおう、痺れるねぇ」
「どー、なってるぅ? なんでぇ、俺の攻撃をぉ止められるゥゥゥゥゥゥ!!??」
「決まってんだろ。単車に乗ってる俺が、最強だからだぜぇ!!」
走司はそう言って単車から腰を浮かせ、薬丸の顔面へと蹴りを放つ。
「がぅ……!?」
単車に乗ったままぁそんな激しい動きを……!?
「まだまだだぜぇ!!」
「っ!? ぐはぁぁぁぁ!!??」
空中で車体を回転させ、その勢いを利用し後輪で薬丸を攻撃。
さながら、単車の回し蹴りである。
ドォォォォォォォォォォン!!!
地面に叩き落とされる薬丸。
「ぁんで……生身の俺がぁ、単車に乗ってる奴にぃ見下ろされてんだよぉ……!!」
「よっと」
ドシン!!
薬丸が呟くのも束の間、走司は単車ごと落下し、綺麗な着地を決めた。
「す、すごい……アレが【爆走番長】、秋名走司さん……」
目を見張り、詩織は走司をじっと見る。
秋名さんが乗る【牙狼丸】の性能はとんでもなく凄い。
けど同時に、あれだけの怪物車を乗りこなしてる秋名さんも同じくらい凄い。
【牙狼丸】と秋名さんは言わば一心同体……人馬一体ならぬ、人車一体!! どっちが欠けてもダメなんだ!!
秋名走司。
彼の持つ力は、圧倒的な運転技術。
神から天賦の才を与えられながらもそれに胡坐をかくこと無く、常に努力し磨かれたその技術は他の追随を許さない。
――そして何より、彼は誰よりも単車を愛していた。
単車に愛され、単車を愛する男。
それが【羅天煌】元『捌番隊隊長』、秋名走司なのだ。
「さぁ、そろそろ終わらせるぜ」
挑発気味に、走司はニヤリと笑う。
「はぁ……ん。てめぇ……!! 調子、の、のののののんなよぉ。ぉ、終わんのはぁ、てめぇ……だぁ!!」
ドクドクドクドクドクドク。
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」
薬丸の脳に、更に脳内麻薬が生成される。
文字通り、限界まで。
目は真っ赤に染まり、鼻の耳からは血を流し、身体中の血管は今まで以上に浮き上がった。
「フヒッ、フヒフヒフヒッ!!」
「ソレがてめぇのとっておきか」
「ヒヒ、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!」
今の薬丸に、まともな返答はできない。
【薬物乱用:臨界点】
彼は身体と精神の全てを麻薬漬けにされている。
身体能力と集中力数秒前よりも向上し、痛みは全て快感に変わる。
「んじゃ、やるか。行くぜ、【牙狼丸】」
ブルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!
走司がアクセルを回し、【牙狼丸】が猛々しいエンジン音で応える。
一人と一台、否……二人の準備が整った。
「目に焼き付けろ薬物中毒者。これが、俺と相棒の力だ」
そうして、走司と【牙狼丸】は発進する。
「イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!」
対し、薬丸は笑い続ける。
笑って、その場で構える。
足を広げ、手を広げ、腰を落とし、走司らを受け止めるつもりだ。
「行くぜ、これが俺たちの必殺技ぁ!! 【烈轟】!!!」
ドゴオォォォォォォォォォォォォォォン!!!
一車同体による突進特攻。
圧倒的強度と速度を持つ【牙狼丸】とそれを百二十パーセント以上に引き出し制御できる走司だからこそ可能な技。
「アハッ、アハアハアハアハアハアハアハァ!!!」
だが、臨界点状態の薬丸はそれを止める。
ガギギギギギギギギギギギギギギィィ!!!
「ははっ!!」
そして走司もまた、笑っていた。
ボンッ!! ボンッ!! ボンッ!!
【牙狼丸】の排気管から爆発音と共に、火花が散る。
「よく止めたぁ!! じゃねぇと面白くねぇからなぁ!! ここからがぁ、本領なんだからよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
走司はそう叫び、ハンドルを切り車体を回転させる。
しかもただ回転するだけではない。
何回転も、何回転も、走司を乗せた【牙狼丸】は回転する。
さながなそれはコマ。
もっと言えばベ○ブレード。
凄まじい回転による攻撃が、容赦無く薬丸を襲う。
激しい密度と威力。
それらはいとも容易く薬丸を……。
「フヒッ!? フハハハハハハハハハハハハハハァァァァァァァァ!!??」
吹き飛ばした。
「がぁ……はあぁ……ははぁ……」
ガクガクと身体を震わせ、笑う薬丸。
圧倒的な痛み……快楽に溺れながら、彼の意識は消失した。
喧嘩の勝者、走司は愛車を停止させる。
そして地に倒れている敗者を見ることなく、呟いた。
「ゴールイン、だぜ」
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