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その陰キャ、遭遇する②

「ジジイ!! てめぇの名前はなんだ!!」

「もっと楽しませてくれたら、教えてやろうか喃」

「はっ!! 上等じょーとーだ!!」


 開戦した龍子と初老の日本刀使いの戦い。


 それを横目に俺は【摩天楼】の頭に目を向ける。


 理由は分からないが、あの日本刀の男はヤツに従っている。ヤツを潰せば、すべて終わる。


 その目論見から、一歩足を踏み出すと……。


 ドビュン!!


 地面のコンクリートに突如として生じた穴、そこから溢れ出す煙と硝煙の香り。


「悪ィがよぉ。そこから先は通行止めだぜ?」


 上階の手摺りに立っていた男はそう言って哀愁ある笑みを浮かべた。

 先ほどの初老の男よりは若そうだが、年齢は40手前といった所か。


「ホントはよぉ、子供ガキ相手に俺なんかが出しゃばんのは大人気オトナゲねぇんだけどよぉ。すまねぇなぁ、なんもせず、回れ右して帰ってくれや」


 男が俺に銃を向ける。


「……あぁ?」

「っ!? たは〜、おいおいマジか。何者ナニモンだよお前!!」

「黙れ。俺の邪魔するんじゃねぇよ」

「……」


 さっきの日本刀の男も、上空にいる銃の男よりも、間違いなく俺の方が強い。

 だがここ数ヶ月の戦闘のような圧倒的な戦闘力差は無い。

 少なくとも8:2、多く見積もれば7:3、足元をすくわれれば……。


「ははは……いや〜、参った参った。まさか俺たちと同レベルで気配を隠してたとはなぁ。しかも俺たちより強ぇときた」


 男は腰からもう一丁拳銃を取り出した。


「けどな。こっちも引けないんだわ」


 ドォン!!


 銃の発砲音が響く。真っ直ぐな軌道を描いた弾丸は、躊躇なく、俺の頭部へと到達しようとしている。


 ガキィン!!


 だがそんな金属音が木霊こだまし、弾丸が俺の頭部へと届くことはなかった。


「お兄ちゃんの、邪魔はさせない」

「俺の弾丸、指で弾くか。ヒリつくねぇ」

「俺のことも、忘れてもらっちゃ困るぜ」

「っ!!」


 直後、銃を持った男に走る横の衝撃。

 九十九に気を取られている隙に一突が跳躍。空中で華麗な回し蹴りを決めた。


「……面倒だなぁ」


 一突の回し蹴りを反射的に腕で受け止め、ダメージを抑えた男は、軽くため息を吐く。


「お兄ちゃん、行って」

「ここは俺らに任せろ」

「頼んだ」


 俺は【摩天楼】の頭を捉える。


「普通の《タダ》のパンチ」


 一瞬で野郎との距離を詰めた俺は、いつもの拳を放とうと振りかぶる。

 ーーだが、


「……お前、正気かよ」

「正気だと、思うか?」


 俺は振りかぶる拳を止める。

 目の前の【摩天楼】のトップは自身の上着をまくり、そこには巻き付かれた爆弾が覗かせていた。


「弱者には、弱者の戦い方がある。お前が俺に一定以上の刺激を加えた場合、爆弾コイツは爆発する。その威力はコンビニの時の比じゃない。仮にお前が耐えられたとして、ほかのヤツらは耐えられるかな?」

「……」


 すぐに剥がすか? いや、その刺激で爆発したらどうする?


 一瞬、俺の思考が揺れる。


「よいしょ」


 その隙を、突くヤツがいた。


「マジ?」


 ソイツは影のように俺の背後へ回るとアキレス腱をナイフで斬ろうと試みた。

 だが、そんなろもので俺に傷はつけられない。


「普通のパンチ」


 振り返った勢いを利用し、そのまま背後の男に拳を叩き込もうとする。

 間違いなく直撃を確信した俺。だが……。


「あぶね」


 俺の拳は、盛大に空振った。


 どうなってる? どう考えても今のは直撃コースだった。避けれるワケがねぇ。

 残像? いや、そんなモンじゃなかった。まるで()()れたような……。


「離脱だ狗暗くおん

「うん」


 気付けば狗暗と呼ばれた男は俺の背後、【摩天楼】のトップの隣に立っていた。


「おい待て!」


 今度は掴むべく、手を伸ばす。


「あ?」


 だがそこで、先ほどと同様の異変が起こる。

 まるで俺が距離感を間違えたように、俺の手は空を掴んだ。


「無駄だよ。お前じゃ俺を捕まえられない」


 そう言い残し、2人は煙のように俺の目の前から消えていった。


「……」


 まるで神隠しにでもあったような錯覚に陥った俺は、一瞬その場で立ち尽くす。


 ドォォォォォォォォォン!!!


 だが広報で響いた轟音に、俺はすぐに現実へと回帰した。


「は、ははっ!! クソが……!!」

「こういうの、久々」

「きっちぃなぁ……」


 見ると龍子に九十九、一突が苦戦を強いられていた。


「ほほ。悪くなかったぞ小娘、じゃが悲しきかな……それでは儂の剣技には届かん喃」

「お前ら、誇っていいぜ。その年で俺とやり合えるなんざ大したもんだ。俺が同じ年だった時よりかはぇよ」


 日本刀の男と銃の男はそう言って、立ちはだかる。


「うる、せぇなぁ。なぁに勝ち誇ってんだぁ? アタシはまだ、死んでねぇぞ!!」


 龍子は勢いよく立ち上がり、再度バットを構えた。


「……ほう」 

 

 増した龍子の凄みに、日本刀の男は感心し、警戒のギアを一段上げる。


 跳躍した龍子は空中で回転を続け、それは速度を上げる。うねるような動きは、まるで龍を想起させた。

 ーーこれが龍子の奥義。

 

「【金属バッ刀術:七龍シチリュウ】……!!」


 廻り、うねる龍のような凄まじい速度と威力の斬撃。

 ほぼすべての不良は例外なく、倒される。


「いい喃……!!」


 だが、龍子の目の前にいた男は、そのその限りではなかった。


「がっぁ!?」


 なにが起きた!? アタシが目で、追えなかった!? アタシの七龍を的確にいなして、空いたところに大量の斬撃を……!?


「小娘……いや、嬢ちゃんの技、あまりにも興奮タギったから喃、お返しじゃ。儂の唯一とっておき、【即殺羅刹そくさつらせつ】」

「す、げぇなぁ。ジジィ!!」

「かかか、嬢ちゃんの怒涛の連撃の合間に針通すみたいにブチ込んだからよぉ、致命傷は与えられなかったが喃」


 身体中が一瞬にして斬り傷だらけになり、そこら中から出血している龍子に、男はニヤリと笑う。


「さてと、あとはお前さんだけじゃが……どうする?」

「こっちの台詞だろ」


 日本刀の男の言葉に、俺は拳を握りしめた。

※本作はラブコメです。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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