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その陰キャ、遭遇する①

「す、すみません! まさかあの【羅天煌】『玖番隊隊長』の長田一突さんだとは思わず!!」

「そんなにかしこまらなくてもいいって。迅のクラスメートってことは同い年(タメ)だろ? 気楽に『いっちゃん』とでも呼んでくれ」

「さ、さすがにそれはおそれ多すぎますので「一突くん」で……」

「にしても見た目(ビジュ)変わったなぁトツ。アタシも一瞬分かんなかったぜ」

一般人パンピーに戻ったからな。今じゃただの高校生だ」

「一突、なんでお前がお兄ちゃんと一緒にいる?」

「お兄ちゃん? お前いつから迅のことそんな風に呼んでんだ?」

「いろいろあった」

「へぇ、まぁいいや。俺と迅は爆発したコンビニで偶然鉢合わせただけだ」


 そうして、俺と一突はことの顛末を説明した。


「【摩天楼】……随分と過激なチームなんですね」

「んー、過激とはまた違うかな。どっちかって言うと『陰湿』」

「『陰湿』ですか?」

「あぁ。派手にやらかすのは俺たちのチームでもあったけど、なんつーか……違うんだよな。気持ち悪さがあるっていうか」

「……ははは、関係ねぇよ。どんなチームだろうとよぉ」


 俺は缶を握りしめる。


「アイツらは、一番やっちゃいけねぇことをやりやがった。一番くじを……くくるちゃんのグッズを粉々にしやがった。責任はよぉ、取ってもらわねぇとなぁ!!」

制裁ヤキならさっきの実行犯に入れただろ迅?」

「あぁ? こーいうのはトップのヤツ潰さねぇと意味ねぇんだよ。もしまたコンビニ爆破されて一番くじが消えたりしたら、俺は……耐えられねぇ!!」

「なぁ、迅のヤツ前より気象荒くなってないか?」

「言うなトツ、アニキはくくるちゃんに本気なんだ」

「くくるちゃんのことになると、お兄ちゃんおかしくなる」

「おいなに言ってんだてめぇら、いいからさっさと行くぞ。【摩天楼】の拠点はさっきシメた不良どもから聞いといた。詩織は危ないから帰ってろ」

「は、はい!」


 こうして、詩織を除いた俺たち4人は【摩天楼】の拠点に向かった。 



 湘南 廃造船工場


 ドゴォォォォォォォン!!


『ぐはあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』


 不良たちの断末魔が大量に響き渡る。


「はーっ、ぇなぁ。話になんねぇぜ」

「退屈」

「はは、たしかに準備運動ウォームアップにもならないな」


 悠々と【摩天楼】の拠点を闊歩する俺たちは奥地へと進んだ。


「お前だな。トップは」

「……」


 俺の言葉に、木箱の上に座っている野郎は顔を上げる。


「なんだお前たちは?」

「ンなことはどーでもいいんだよ。てめぇらのせいで俺が手に入れる予定だったくくるちゃんの一番くじが燃えカスになっちまったんだ。つーワケで【摩天楼】ブチ壊す。文句はねぇなぁ?」

「……コンビニ爆破の報告は既にこちらの耳に入っている。が、まさかこんな面倒事が引っ付いてくるとはな」

「あぁ?」


 こっちの神経を逆撫でするような野郎の言葉に、俺の額に青筋が浮かんだ。


「不測の事態というのは、やはり避けられないモノだな」

「さっきからゴチャゴチャなに言ってんだぁコイツ? さっさとシメちまうかアニキ」

「……」


 なんだ、この感じ……。


 目の前の男と会話する中で、俺の中にある感覚が生じ始める。

 

 恐怖や不安、それは目の前の男からは感じない。

 ーーただ、得体の知れない気持ち悪さが、流れ込んでくる。


「見れば分かる。お前たち、相当な強さだ。俺では到底太刀打ちできないほどのな。それほどまでの強さの人間は数えるほどしかいない。恐らく【羅天煌】の隊長クラス、もしくは本人たちか」


 ただ淡々と、自分を納得させるように、自分にも言い聞かせているように、目の前の男は口を開く。


「お兄ちゃん、コイツ気持ち悪い」

「珍しくクソ猫に同意どーいだぜ。もう終わらせようぜ」

「……」


 あんまり言いたくないが、俺は強い。

 俺は大丈夫だ。俺は問題ねぇ。


 ーーだが、


「……逃げろ!!!!」


 ()()()は、話が変わる。


 ズガァァァァァァァァァァァン!!!


『っ!?』


 突然の風圧に、俺以外の人間は漏れなく吹き飛ばされた。


「んだぁ……!?」

「耐えられ、なかった」

「効くなぁ……!」


 辛うじて受け身を取り、壁への激突によるダメージを最小限に抑えた龍子と九十九、一突。


「ほう、今ので意識を飛ばさぬか。今の時代にしては、中々に骨のあるがきどもじゃのう


 暗闇から現れたのは黒い仕事服スーツを身に纏った、片手に日本刀を携えた顔のシワが目立つ初老の男。

 横に立っていた【摩天楼】の頭は言う。


「俺が及ばない強者への対応、その程度の対策を、俺が怠っているとでも思ったか? 当然、しているさ。とびきりの用意をな」

「さぁてと、次は耐えられるか喃?」


 再度、初老の男が構える。

 狙いは間違いなく俺ではない、龍子たちへの追撃だ。


「……」


 俺は構える。龍子たちへの追撃を、俺が防ぐために。


「アニキィ!!」

「……ったく」


 後ろから聞こえる龍子の声色、その意図を俺は瞬時に理解した。


「㕮《ふん》ッ!!」


 ガキィィィィィィィィン!!!


「……ほう? ワシ日本刀ぼんとう、直で受けるか、小娘」

「はっはぁ!! さっきは油断しただけだ!! ジジイ!! てめぇ強ぇな!! 久々によぉ、本気マジでやれそうだぜ!!


 初老の男との距離を一瞬で詰め、日本刀の一撃を愛用の金属バットで受け止めた龍子はそう叫んだ。

 

※本作はラブコメです。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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