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その陰キャ、再会する

「よし、よしよしよし!」

「や、やった! これで……!」


 昨日真希に脅された男は、指示を完遂できたことに歓喜した。

 彼が指示を受けていた内容はコンビニの爆破。


 真希に圧をかけられていた内の1人はここでバイトとして潜入し、上納金のために売上の一部や店の商品を定期的に引き抜き続けていた。

 だがそれが新しく入ってきたバイトによって露見バレてしまい、バイトをクビになった。

 上納金の減少、加えて不良ひいてはチームとしてのとしての体裁メンツが汚れるのを真希は良しとしない。


 故に、コンビニを爆発するという判断に至ったのだ。


 もう1人の不良は顔が割れていないため、容易に入店することが可能だった。

 コンビニ内を物色するふりをして特製の爆弾を設置、あとは起爆するだけの……精神的障壁を除いて仕舞えば実に単純で簡素な作業である。


「に、にしても爆発の直前……コンビニに入ってくヤツいたけど……よかったのかアレ?」

「仕方ねぇだろ! ようやくコンビニ内であの店長とバイトだけのタイミングが来たってのに、あの野郎が最悪の機会タイミングで現れたんだ! 次いつあの2人だけになるのかも読めねぇ上に会長への報告もすぐ迫ってる。アレ以上待ってられねぇ。仕方の無い犠牲ってヤツさ……!」

「そ、そうだな……」


 2人は必死に自分たちに言い聞かせる。


 だけ兎にも角にも、彼らは文字通り指示ミッションをやってのけた。

 コンビニは爆破され、文字通り瓦礫の山になった。


 ーーただ1つ、彼らの想定外があったとするならば、


「ぷはぁ!」


 爆破に不運にも巻き込まれた男が、人智を超えた者だったことである。


「なにがどーなってんだぁ?」


 なんてことない調子で瓦礫の山から脱出する迅。

 爆発によって服は燃え焦げ、半裸のような状態になっているが、その肉体には一切の傷がついていない。


「はっ!?」


 そして次の瞬間、思い出したかのように彼は瓦礫の山をどかし始める。


「あ、あ、あぁ……」


 十数秒後、瓦礫をどかし終わった迅は声にならない声を上げ始める。

 彼の目線、その先には一番くじだったもの……その残骸が散乱していた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」


 迅の情緒は崩壊した。


「ひ、酷い……!! なんで、なんでこんなことにぃ!! みんなぁ!! くくるちゃぁぁん!!」


 大粒の涙を流しながら、迅はワンワン泣き始めた。


「……許さねぇ!! 誰だぁこんなことしやがったクソ野郎どもはぁ!!」


 次の瞬間、工作員の不良たちの死刑が確定する。

 そして同時刻……。


「ふぅ! 大丈夫ですか店長!」


 もう1つの想定外が、現れる。


「あ、ありがとう。助かったよ長打おさだくん……」


 人の良さそうなバイトの少年は、コンビニの店長を抱えたまま瓦礫の山から現れた。

 爆発の直前、バイトの少年は店長に覆い被さり爆発から彼を守ったのだ。


 瓦礫の山の上に立つ、想定外の2人。

 刹那の刻を経て、彼らは顔を見合わせた。


「迅!! 久々だな!!」

「あぁん!? 今それどころじゃねぇよ!!」

「はは、開口一番それかよお前!」

「こっちは今激怒(イラ)ついてんだよぉ。とりあえず、手ぇ貸せ一突いっとつ

了解りょーかい

 


「な、なんだぁ? なにがどうなって……」

「や、ヤベェだろアイツら。おいとっとと離脱ずらかるぞ!」

「逃すワケねぇだろ」

『っ!?』


 ズドン!!


 大罪人どもを捕捉した俺は、その首根っこを掴み地面に叩き伏せる。


「わ、わぁぁぁぁぁぁ!!」


 その場から逃げようとするもう1人。

 だがそんなものを許すワケがねぇ。


「おっと、どこ行くんだ?」

「あがっ!?」


 一突に顔面を掴まれ持ち上げられた不良は、そのまま壁に叩きつけられた。


「くくるちゃんの一番くじ台無しにしてよぉ。無傷タダで済むと思ってねぇよなぁ?」

「俺のバイト先が消えたんだが、どうしてくれるんだ?」

「「ひ、ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


 直後、不良2人の絶叫が夜空に響き渡った。



 気絶させ拘束した不良2人をコンビニの店長に引き渡した俺たちは、公園で一息ついた。


「ほら」

「サンキュー」


 俺は一突から投げられた缶ジュースを受け取る。


「戻ってきてたんだな迅。驚いたよ」

「こっちの台詞セリフだ。バイトなんてらしくねぇことしやがって」

「バイトは元々したかったんだよ。誰かのためになるし、自立のための金も稼げるしな。高校生になって、晴れてそれができるようになった」

「相変わらず変なトコで真面目だなお前は」


 俺は缶ジュースを飲み始める。


「随分と荒れてるじゃねぇかよ湘南」

「最近、不良たちの胡散キナ臭い動きが増えてるな。どうも新興チームの影響だとは風の噂で聞いてる」

「【摩天楼】か……」

「なんだ知ってるのか?」

「一応な……はぁ」


 夜空を見上げながらため息を吐く。


「あ、いたいた! アニキー!」

「見つけた」

「し、迅くーん!」


 すると公園の入り口から聞き慣れた声が聞こえてきた。


「コンビニで爆発あったみたいでよぉ! アニキが行ってんの思い出して飛んできてたぜ! だいじょぶだったかー?」

「この通り、無事だ無事。服以外はな」

「そいつは良かったぜ! まぁアニキが爆発程度でやられるワケねぇよなぁ……ってん?」

「久しぶりだな。龍子に九十九……あと君は?」

「あ、坂町詩織と言います。迅くんのクラスメイトで……」

「おぉ、迅の東京の知り合いか! 俺は長田一突おさだいっとつ、よろしくな」

「え、え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」


 一突の自己紹介に、詩織は激しく驚きの声を上げた。

 まぁ不良オタクの詩織なら無理もない。


 ーー元【羅天煌】『玖番隊隊長』


 それは他ならないこの男、長田一突のことだ。

 

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