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獣使いたちの冒険者記録  作者: 砂霧嵐
異文化の違い
90/172

90 発覚だ!モフモフカフェ(被害者の会)

ちょっと短いし自己紹介が多いですが、後々の伏線になるかもね回です

「調子どないです?」

「ああミッツくん、カフェでの挨拶はたぶん大丈夫だと思うよ。基本的には普通のカフェと同じだしね」

「それは良かった」


ベクターと言葉を交わしていると、接客や厨房担当の通常従業員たちがこちらに気付いた。


「ミッツさん、改めてよろしくお願いします」

「よろしくお願いします、えっと」

「ああ、商業ギルドからの紹介で一度会っただけですもんね。全員でもう一度自己紹介させて下さい」


料理を作ったり運んだりする、人間と亜人で構成された通常従業員は全部で5人。接客が3人と厨房が2人の予定で、そこに経理業務で忙しくない時はギルド退職組が入ることになっている。

最初は少なく見積もって様子を見て、人員が少なければ段々増やしていこうということになった。


まず接客担当であるほんわかとした中年の男性、色気のあるエルフの女性、色黒のエキゾチックな男性がそれぞれ自己紹介をする。


「私はルドルフ・アガーです。王都のレストランで筆頭ウェイターをやっていましたが右手を貴族………いえ、ちょっと怪我してしまい治しきれず、後遺症で簡単なものしか運べなくなりました」

「あたしは嘆きの森のクドゥール、名前の通りエルフよ。この国の王都の小さい酒場で接客経験があるけど厄介な貴族に目を付けられちゃって、辞めざるを得なかったわ。言っておくけどあたしに落ち度はなかったからね?!」

「僕はアヌーラ・ラジェラード、ファジュラ出身の元冒険者デス。シャグラスの王都でクエスト中に貴族の……いや何でもナイ、色々あって冒険者を辞めることになった。でも僕にやましい点がないのはクロルドさんも証明してくレルから」


「待って、接客担当全員、王都で何が…!?いや商業ギルドからの紹介やから疚しいことは疑ってはないんやけど、どこの貴族にやられたんや!?」

「…貴族が皆悪いわけではないのですが、私はフィルバーツ子爵に食事を運ぶ際に機嫌が悪かったのか、卓上のナイフで右腕を裂かれまして…。何の落ち度もなかったとオーナーも言ってくれましたが」

「えっウソ!あなたも!?あたしもフィルバーツに肉体関係迫られたのよ!そのせいで酒場にも迷惑かかるからって辞めちゃったわよ!ハゲてた?ハゲてたならそいつだわ!」

「えー!二人もあのフィルバーツ?僕も!あのハゲ子爵のクエスト中に妹が襲われかけテ!ハゲで太っててニタニタしてル?じゃあそいつダネ!」


なんと全員同じ貴族の被害者であった。

三人はしっかりと握手をしている。


「うーん、フィルバーツ…?どっかで…」

「「あの」」

「え、あっすんません。厨房担当やね!って同じ顔や!」


妙齢の男女、同じ顔立ちをしているが男性は少しだけキリッとしていて、女性は少しだけほわっとした感じだ


「初めまして渡り人さん。僕はブルフ・パスティ、兄の方」

「初めましてミッツさん。私はポルフ・パスティ、妹の方」

「「よろしくお願いします」」

「お約束の双子やなぁ」

「「ん?」」

「ああ気にせんといて」


「ちなみに僕たち、双子じゃなくて三つ子だよ」

「あ、そうなん?」

「うん、忘れようとしたけど忘れられない。これが運命なのかな、ブルフ」

「そうだねポルフ」

「え、何……?」


「ねえルドルフさん、クドゥールさん、アヌーラさん」

「そいつ、ダギラって名前じゃない?」

「ちょっと待ってまさかあんたら」


「え?!ええそうよ、ダギラ・フィルバーツ!私あいつに散々迷惑かけられたの!」

「ってことはまさか君たちモ?!」

「私たち、先代フィルバーツ子爵の元で代々料理人をやっている家で、私たち三つ子も料理人だったんだけど」

「あのダギラが先代当主様を暗殺し、その愛娘であるサリヤお嬢様を愛人なぞにしようと無理矢理…。まあ何事もなく逃げられたが、今はどちらにおられるのか…我々使用人すらも分からなくなってしまって」

「その煽りをくらって、三つ子の長女であるニルフが八つ当たりに殴られたんです。その衝撃で頭を打って、意識が戻らず数年が経ってるの」

「なんてこと…!」

「ニルフは自分で頭をぶつけたことになっているからね」

「あいつ、貴族相手だと上手いことやってるみたいで、僕たち使用人の言葉なんて周りに届きもしないんだ」

「ああ…平民の言葉って届かないもんだよなぁ」


まさかの通常従業員全員が同じ貴族の被害者であることが判明し、一気にお通夜のような雰囲気となった。いやこの大陸にお通夜の文化はないが。


「サリヤ……フィルバーツ…?」


「と、とりあえず、万が一その貴族がここのこと知っても、あの、何とか断るんで」

「渡り人の言葉なら貴族にも届きそうだよな」

「証拠でもあるんやったら、『パレード』報酬の上乗せで調べて貰えるかもしれんけどなぁ」

「証拠を持ち出す前に私たちも逃げましたからね」

「平民の僕たちも特に何もナイネ」


よりしんみりとした空気になる、階下からはお客さん役の声が微かに聞こえてきている。

ベクターがパンパンと手を叩き、明るい空気を出そうとする。


「もうそのような者のことは忘れ、られはしないでしょうが!今はこのカフェに集中です!笑顔で接客をお願いします」

「そうですね…すみませんでした。今はこのカフェを盛り上げましょう!」

「パスティ兄妹、貴方たちは仮にも貴族の使用人でしょう?私も元貴族の執事でした。没落はしてしまいましたが良い主人に恵まれたと今でも思っています」

「「ベクターさん…」」

「貴方たちのお仕えしていた先代様とお嬢様は、そんな暗い顔で喜んでいると思いますか?」

「お、思いません!」

「でしょう?なら、笑いなさい。そして証拠を掴んだ際は思いっきり行動なさい」

「「はい!ベクターさん!」」


ベクターとパスティ兄妹に上下関係が生まれた瞬間であった。


「えーと…よろしいやろか?」

「すみません、どうぞ」

「まあ、あの、結束力は固まりそうで何よりやわ。んで、今からやって貰いたいんは」


ミッツが厨房に置いてあった冊子を取り出し、全員に配った。

表紙に大きく『モフモフカフェ関係者以外の閲覧禁止』と書かれた冊子の中には、メニュー表の例と食べ物・飲み物のイラスト、そして簡単にレシピが書かれている。


「提供する食べ物と飲み物、サンプルとして俺作ってあるやつを確認がてら見て食べて貰いたいんやわ」

「つまり、試食会?」

「そうそれ」

目指せ酷い貴族

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