表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣使いたちの冒険者記録  作者: 砂霧嵐
異文化の違い
89/172

89 研修だ!モフモフカフェ(顔合わせ)

3日後の夕方、フェリルからやってきた獣人従業員35名と商業ギルドのABC経理トリオ、そして通常従業員がモフモフカフェに集まって顔合わせをしていた。

カフェの名前はもうそのまま『モフモフカフェ』、オープン予定日は1週間後に決まった。

今日は軽く顔合わせとちょっとした研修もどきをする予定だ。


「はい、『いらっしゃいませ!』」

「「いらっしゃいませ!」」

「お客さん帰る時は!」

「「ありがとうございました!」」


ミッツはとりあえず接客担当の従業員と経理トリオに挨拶の練習をして貰っている。

内装や厨房の案内は既にしていたので、しばらく渡したマニュアルを二階で読んでおいて貰うことにした。


その間にメインとなる獣人従業員の研修をすることにする。

一階のカフェスペースには獣人従業員が既におり、ミッツがおもむろにギルド側の入口から何人かを連れてきた。


「今回、お客さん役をこころよく、本当にこころよく引き受けてくれ過ぎて人数が増えたせいで抽選をして勝ち抜いてきた皆さんと、俺が直々に頼んだ皆さんです。軽く自己紹介どぞ」


「ゴッド級の『獣使い』サイ・セルディーゾだ。このミッツとパーティを組んでいるということで選ばれた。よろしくな」

「キング級『悪魔憑き』のシェラです、直々に頼まれました。僕自身はかわいい動物好きなのでよろしくね」

「シェラさんのパーティメンバーの『非契約者』でC級のノルリエですぅ!」

「爬虫類大好き、『非契約者』で商業ギルド職員のタレゾです。堂々と抽選で選ばれてきました 」

「同じく抽選で選ばれました。ただの八百屋の跡継ぎで『獣使い』、まだ契約獣がいないドルトンです!」

「元彼がリーダーやってるパーティから脱退した記念に誘われたパリエでーす!よろしく!あ、『非契約者』の弓使いだよ!」

「今回お客さん役に選ばれなかったギルド職員のナビリスです…」

「ナビリスちゃんは戻って仕事して」

「…はい…」


さりげなく混ざっていたナビリスをギルド側の扉からギルドに戻し、扉を見つめるナビリスの前でしっかりと幕を張って見えなくさせた。


「ミッツ、ギルバートはいいのか?」

「うん。なんか初見で緊張させてしまうかもしれないから、研修終わってから接して貰いたいって」

「なるほどな」


獣人従業員の前に並んだ6人の自己紹介が終わり、ミッツが捕捉をする。


「今回抽選とはいえ、実はちょっとだけ俺が選んだ所はあるんや」

「そうなんですか?」

「まず俺の知り合い枠であるサイ、パリエさん。これはいい人ってのが分かっとるから俺が安全を保証する」

「なるほど」


『パレード』の時に仲良くなっていた、一番最初にスライムを倒した冒険者パリエは、無事に元彼のいるパーティを抜けてソロに転身していた。そのお祝いに今日のお客さん役を頼んでみると喜んで時間を空けてくれたのだ。


ミッツは次に八百屋のドルトンを見る。八百屋という職業柄、声が大きく重い野菜箱を運ぶので筋肉質。あと顔がいかつい。

正直裏稼業の人と言われても納得してしまう。


「次に、言っちゃ悪いけど顔の怖くてゴツいドルトンさん。抽選やったんやけど実は俺が個人的に指名させて貰ったんやわ」

「え、俺?まあ自覚あるけど、なんで?正直顔でダメかと思ってたんだけど」

「そういう顔やからこそやで。失礼な言い方やけど、こういう感じでいかつい人とかゴツい人とか来る場合もある。今ですら大きいねんから、小さい動物に先祖化する人から見たらそらもう巨人ですわ。進撃やよ進撃」

「あー、確かに」

「そういう人にも慣れようなって話。ここにわざわざ来る人らはたぶん動物好きやから、怯えず優しく接したってね。でも乱暴されたらすぐに申し出ること」

「分かりました」


「次、これがちょっとネックやと思ってね。『悪魔憑き』と『天遣い』のお客さんは基本的には入れへんつもりやけど、俺が認めた人らは入れる予定。というわけでその認めた内の一人として『悪魔憑き』のシェラさんを直々に誘ったんよ」

「僕、実家がコットンシープ牧場やってて家族みんな『獣使い』でね。僕コットンシープ大好きだったんだ…でもこればかりは相性だし、契約してくれたジャーグもいい子だったから今では『悪魔憑き』で良かったと思ってる。もちろん今もコットンシープは好きだよ」

「まあこんな人もいるよってこっちゃ。別に『悪魔憑き』やから変な気配するとか嫌な匂いするとかちゃうんやろ?ストレスなるかもしれんけど、ここに来る以上は『ただのモフモフしに来た人』や。甘えたってな」

「はーい」

「ところでシェラさん、後でコットンシープ牧場について詳しく教えてな」


「あとのノルリエさんとタレゾさんはほんまに抽選で選ばれた人らや。素直に楽しんでくださいね」

「ありがとうございます、ミッツさん」

「はいぃ!選ばれたって聞いて今日すっごく楽しみで!普通に接してればいいんですね?」

「うん。でも嫌がるようなことはせんといてね」

「しませんよ!そんな嫌がる猫ちゃんを無理矢理だっこしたりなんて!」

「すごい具体的やん…」




「じゃあ実践してみよか。全員…やと多いから、半分ぐらいに分かれて一回先祖化してみて!」

「では…今テーブル席に近い者とクッション席に近い者で分かれようか」


獣人代表としてライオン系獣人のジェイロンが声をあげ、二手に分かれた。

まずクッション席側にいた獣人たちが一斉に先祖化すると、猫や犬、子熊にライオンなどの18匹の動物がそこにいた。

邪魔にならないようにテーブル席側に移動していたお客さん役のテンションがとても分かりやすく上がった。


「はい自由に寛いで!露骨に甘え過ぎず、されどちょっとだけ甘えてな!特に猫ちゃん!猫はツンとした所がええって人もおるからな!」

「にゃあ!」

「己の動物の素のままに、お客さん役を傷つけないことだけを考えてあとは自由に!」


分かりました!とばかりに猫たちが頷くと、クッション席のガラス窓の壁の方へと行き日向ぼっこを始めた。今は幕が張ってありそこまで日当たりはよくないが、おそらくシミュレーションしているのだろう。

壁の棚は日本の猫カフェでもよく見かける『キャットウォーク』である。猫たちは興味津々で登ったり穴から顔を出したりしている。


犬たちはしっぽをぶんぶん降ってお客さん役をチラチラ眺めているし、ライオンは猫たちと同じようにクッション席のスペースでどっしりと伏せてお客さん役を見ている。その横にはヤギと羊たちがもこもこメエメエと集まっている。

子熊はテーブル席の近くで床をふんふんと嗅いでいるし、リスはテーブルに乗ってしまっている。


「まあ、こんな感じで自由に過ごして貰っとくからお客さんは席から楽しんで貰う。皆は先祖化してはるから、多少の理性はあるけど基本的にはただの動物ってことで」

「み、ミッツくん!早く早く!」

「あ、せやな。俺、従業員の役するわ。いらっしゃいませ!テーブル席のご利用ですか?クッション席のご利用ですか?」

「え!?訛らず喋れるんだ!?えーとクッション席で」

「皆なんでそこに驚くんや…。ではこちらへ」


ミッツが従業員の代わりに席へ6人を案内すると、テーブル席やクッション席に動物たちが思い思いに寄ったりしてきた。

テーブル席を選んだシェラ、ノルリエ、ドルトンの傍には早速リスや猫がやってきた。


「猫が膝に乗ってくれた!可愛いね、ノルリエ」

「本当に!シェラさんがミチェリアでしばらく活動するって言ってくれて本当に良かっ…えーやだ可愛い~!リスが手に乗ってくれてる!」

「お、俺に子熊が甘えてる…天国かここは…?あああ猫ちゃんまで…か、肩に乗っただと…!?」


きゃっきゃとテーブル席で喜んでいる一方、クッション席でもお客さん役のサイ、タレゾ、パリエが盛り上がっていた。


「ほほう…洗い立ての羊…これはいいな」

「ライオンに触れるのはさすがに初めてです……タテガミが結構もふっとしていますね」

「本当だー…猫溜まりも出来てるし、ここが天国…?ハスキーの子犬ちゃん可愛いでしゅねぇ…」


概ね満足そうに、一部の口調が乱れているのを確認したミッツは、しばらくしてもう半分の獣人たちと交代して貰って、二階の様子を見に行くことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ