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獣使いたちの冒険者記録  作者: 砂霧嵐
夜が来たりて
69/172

69 異世界式緊急速報

新章です。

しばらくシリアス(当作品比)と戦闘が続く予定です。

サイたちがミチェリアへ帰って来て1ヶ月が経った。

この間、特に何の事件事故も起こらず、強いて言うならモモチがミチェリア全体のマスコットになった。

あとルージュバジリスクが正式にタレゾと友達になり、商業ギルドで日中を過ごし、時々拘留屋敷に尋問の見張りの仕事(お呼ばれ)をし、そしてタレゾの家で夜は寝ている。こちらもある意味ミチェリアのマスコットとなった。


地味に平和を謳歌し冒険者ギルドで、地味に話を進めている『モフモフ喫茶(仮称)』のギルド併設計画を休憩中のナビリスにプレゼンしていると、冒険者ギルドに不協和音が鳴り響いた。

平和の終わりと事件の始まりの不協和音である。


「うわびっくりした」

「こっちの台詞ですよ」

「こっちの台詞だわ。なんだ今の、不安になる音。隣のお前から聞こえたんだが」

「ああ、スマホの緊急速報の音やな。まさかここでも聞けるとは」


急に間近で聞いてびっくりしたモモチを宥めながらミッツはスマホを開く。

この2ヶ月見ることのなかった、聞けると思っていなかった音にびっくりしたのはミッツもである。


「緊急速報?」

「んーと、災害を予想したり起こったり、あと何か重要なことがあったりしたら教えてくれる機能やねん」

「へえ、そんな機能が」

「なんやろ、こっちで鳴るとか思ってなかったわ」


何事なのかとギルドがざわざわする中、速報内容をさっと読むミッツ。


「んん?なんや楽しそうやな?」

「どうしたって?」

「いや、3日後てなんかあるん?」

「3日後?いや、特にはないはずだ」

「強いて言うならうちのサブマスターのレーニャが誕生日ってことぐらいですねぇ」

「何があるって?」

「いやなんか、『パレードのお知らせ』って」


その単語が冒険者たちに届いたその瞬間、喧騒に包まれていたギルドが静まりかえる。

少しでも動けば布が擦れる音がはっきりと聞こえる程に静かになったギルドで一斉に視線を集めたミッツとモモチはキョロキョロと見回していると、サイに話しかけられる。


「いま、なんと?」

「え、何怖い顔して。せやから『パレードのお知らせ』って。誰か偉い人でも来はるの?」

「…まさかチキュウでは『パレード』は良い意味なのか…?」

「え?うーん。大体ええことなんちゃうかな?」

「そうか…その速報の情報、詳しくは?」

「ん?ああ、音声読み上げもあるわ。聞く?」

「おう。全員に聞こえるようにしてくれ」

「う、うん、ほな最大音量で」


ミッツが音量を最大にして速報の読み上げ機能ボタンをタップした。いつもの天気予報の女声が聞こえ始める。


【緊急速報です。緊急速報です。対象地域はミチェリア付近です。

今から3日後の夜、『パレード』が辺境町ミチェリアにやってきます。規模は中。各自、厳重に対策をして下さい。

繰り返します。3日後の夜、『パレード』が辺境町ミチェリアにやってきます。規模は中。予測では97%確実に発生です。各自、厳重に対策をして下さい】


「ミッツ、これ、当たる?」

「んー、まあ誤報の可能性もあるけど大体は当たるで」

「…そっか…」


静まりかえってまだ誰も発言出来ない中、サイがギルドの受付や回りの冒険者に向かって叫び出す。


「ナビリス!クロルドを至急呼べ!次に王都と周辺ギルドへの緊急伝達魔法の打ち上げ!異世界技術での知らせだ、まず間違いはない!」

「は、はい!!呼んで来ます!」

「冒険者共!俺はゴッド級のサイ・セルディーゾ!聞いていたな!?『パレード』だ!しかも『ナイトパレード』だ!」

「間違いじゃねえのか!?」

「最悪だ…!」

「よりによって『ナイトパレード』…!」

「おっと逃げるなよ?おそらく現場の指揮はギルドマスターと俺が執ることとなる。『獣使い』だから、『非契約者』だから、などと今言っていがみ合う場合でないのは3歳児でも分かることだな!?」

「流石になぁ」

「こんな時に命令違反する奴は馬鹿だろ」

「詳しくはしばらく後にギルドから連絡されると思う、それまでいらんことを外で言わないように!というか今は外に出るな!」


ミッツは周りが騒いでいるのをぽかんと見ている。

冒険者たちが少しだけ落ち着いた所でクロルドがすっ飛んできた。


「サイ!『ナイトパレード』だぁ!?ここに!?嘘だと言ってくれ!せめて『ライトパレード』だと言ってくれ!」

「残念だがミッツのスマホの予測だ。たぶん間違いないだろう」

「くっ…!天気予報魔法じゃあるまいし、今回は間違いであって欲しいぞ…!」

「いやあれ魔法やないと思うんやけど」

「とにかく緊急伝達魔法の打ち上げ準備と住民への連絡……ああその前にミッツ!もう一度スマホの読み上げ!」

「へ、はい」


もう一度読み上げ機能を立ち上げると、クロルドは頭を抱えた。

明らかによくないことが起きているのだけは分かるミッツは問いかけようとする。


「なあ『パレード』て」

「とにかくまずは住民の避難だ!準備を今日明日急いで貰おう!その間に王都と周辺へ連絡!ナビリス、通常業務は閉めろ!」

「既に閉めています!依頼板も外しました!」

「よし、拡声魔法は俺が発動する。ナビリス、お前が伝達係だ」

「分かりました!その後に打ち上げをお願いしますね!」

「おう!冒険者共!とりあえずそこで待ってろ!誰も出て行くなよ!そんで誰も中に入れるな!」

「クロルドさん!扉封鎖してます!」

「よしお前らそのまま誰も入れるなよ!ナビリスは着いてこい!屋上行くぞ!」

「はい!あっミッツさんありがとうございます!」

「俺とりあえずここにいる冒険者の振り分けだけでもしときますから!」

「サイ助かる!頼んだぞ!ミッツ!ありがとうな!」


「なあサイ『パレ」

「先輩、『パレード』てことはビショップ級以上全員ってことっすか?ならポーン級のあたしたちはどうすれば…」

「そうか、『パレード』は初めてだったな。『ナイトパレード』なら人手はいくらあっても足りないからお前らも必要になってくる!

ナイト級とポーン級とE級とF級!お前らもやることはあるぞ!補給天幕とか救急天幕におそらく配備される!魔力に自信のある奴はひたすら光魔法だ!今の内に行けそうなとこ決めておけよ!」

「そっか!夜っすもんね!あたし補給にするっす!」

「お前はドワーフだもんな、力仕事は任せたぜ」

「ポーン級でも役立てるなら嬉しいっす!いやでも嬉しいとかフキンシンっすね、さーせん」

「いや存分に役立ててくれ。いつもはこんな準備出来ることなんてねーから今回は例外だからな?普通は突然起きるんだからな?渡り人ありがとよ!」

「うっす!渡り人、ありがとっす!」

「え、はい…おおきに?」


目の前で喋っていたドワーフのポーン級と先輩らしき冒険者が別のパーティと合流したのを見て、ミッツとモモチはとりあえずサイが指示を出しているのを見ておくことしか出来なかった。

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