表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣使いたちの冒険者記録  作者: 砂霧嵐
旅と弓と寄り道の犬
65/172

65 貴族と冒険者の報告会

ダルダット侯爵家に着くと用意された部屋でさっさと部屋着に着替え、食卓へと案内された。

食卓にはハウダが座ってワインを飲んでいて、アーショや子供たちは既に寝ているらしい。ハウダの後ろにはシャーフとヤギ系獣人女性が控えている。新しいメイド長のようだ。


「ようこそ、一週間ぶりだな」

「ハウダ様!お出迎えありがとうございます。また一泊だけお世話になります」

「うむ、一週間後に来ることは分かっていたので元々また泊まって貰おうと思っていたんだがな。獣人族がこんなにも早く集まるとは思ってなくてな、見通しが甘かったよ」

「ライラムが近くにいたらしいですね」

「ああ、ドラゴニュートの冒険者ライラム殿。実はサイ殿たちがフェリルを出た翌日にふらっと寄られたんだ。これまでにもたまに来里してくれて狼石に珍しい酒や食べ物を供えていたんだが、復活した神狼王様を見た時に5度見して酒を落としそうになっていた」


獣人族の中でも最強の部類に入るドラゴニュートは寿命も他獣人族よりは長く、最強故に獣人族の中でも崇拝対象となっている。最強故にちょっとやそっとのことでは驚いたりすることはかなり少ない。その代わり脳筋タイプが非常に多い。

サイもドラゴニュートが動揺しているのを見たのは一度ぐらいで、まだ小さい孫ドラゴニュートをバカでかい鳥に連れ去られて呆気に取られた老ドラゴニュートのぽかんとした顔は忘れられない。


その数秒後には、だいぶ焦がし過ぎた焼き鳥が出来上がっていたが。


「あー…ドラゴニュートですら動揺するなら、今頃ギルドを通じて他国にいる獣人たちに情報が行ってるだろうし、すごい騒がれているだろうな」

「動揺していたがとりあえず神狼王様に酒を供えて、許可を貰ってから先祖化でフレイムドラゴンになって、真っ直ぐ王都の方角に飛んで行ったよ。

ダルダット侯爵の名で王都には連絡していたんだが、直接キング級冒険者がわざわざ先祖化して報告に出向いたんだ。ますます情報の信憑性が上がったということで、ユラ大陸全ての冒険者ギルドに連絡が行ったというわけだ」


ミッツはふむふむと頷きながら『ライラム。キング級。ドラゴニュート。フレイムドラゴンになれる。』とフェリルに関してまとめていたルーズリーフに書き足していた。


「後はまあ、知っているだろう。連日獣人族がやってきては神狼王様にお参りして行ってるよ。いつの間にか『拝謁』と呼ばれていて、国王陛下に今度会った時何と言えばいいのやら」

「あー拝謁…拝謁かぁ…。まあ相手は準神ですからねぇ」

「拝謁で間違いないんだろうけど、複雑な気持ちだな」


ハウダはため息をつきつつ、ワインを飲み干す。

すかさずシャーフがワインを注ぎ足し、メイド長に軽食を増やすように伝えた。


「ふう、で?ナルキス村ではどうだった?」

「えっと、ハニーグリズリーと鬼ごっこしてサイの夢を邪魔して地球の技術と食べ物投入して異種族交流して弓作って貰いました」

「情報多いな」


ナルキス村までの出来事を詳しく、だが簡潔に話していく。

その間に食事も手早く済ませた。


「まずフェリルを出てしばらくして、ポメルくんと遭遇したのと同じ個体のハニーグリズリーに出会いました。子連れでした」

「んで、強制鬼ごっこ(デスレース)が始まって、めっちゃ逃げたんやけどリラックスする音楽で親子共々寝て貰いましたわ」


「ナルキス村には無事着いて、ハーフエルフの知り合いに発注かけたのですが、ミッツの故郷の音楽ですごく感動させました」

「俺も好きなアニソン…うーんと、子供も大人も楽しめる映像技術があって、それに関する歌を聞かせたんです」


「俺はいつも村に行ったら冒険者露店を開くのですが、今回はミッツも一緒だったので、チキュウのお菓子なども売ったんです」

「調味料もルーズリーフも売ったんやけど、人見知り激しいはずの職人も様子見に来てくれたんですわ」


「ミッツが村の氷室のことを知って、食料を冷やすことで腐敗を遅らせる魔道具レイゾーコとレイトーコをナルキス村代表のドワーフに伝えたり」

「まだ出来とらんけど、別の魔道具も生まれたで。夏場の室内をひんやりさせてくれるやつ、そのうち売られるんちゃうかな」


「ミッツが時々、ニホンで有名だった架空の物語を語って、その都度俺の夢にそれが出て来たり」

「あれはほんますまんて」


「まあ、そんな感じですかね」

「いつ聞いてもサイ殿もミッツ殿も話題に事欠かないな?」

「そんな褒めて(もろ)ても」

「ミッツ、たぶん褒められてはないぞ」

「…ごほん、まあ、なんだ。疲れただろうし、今日はゆっくり寝たまえ。明日は子供たちの相手を少しで良いからして、神狼王様の元へ行ってくれ。一週間ずっと拝謁されててちょっと疲れておられる」

「「あー」」


拝謁2日目から、『拝謁は1人3分まで』『拝謁時間は明光星3つ出てから宵待星が出るまで』とルールを決めたグランドフェンリルの気疲れをなんとなく察した。

おそらく今、閉めきった祭壇小屋の中でべっしょりと伏せして寝ていることだろう。

サイとミッツは食後のお茶を頂くと、今日は徒歩で疲れた体を休めるべくさっさと寝ることとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ