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獣使いたちの冒険者記録  作者: 砂霧嵐
旅と弓と寄り道の犬
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57 ハーフエルフと音楽と星魔法

シンとした木の空間にミッツの世代で大流行していたロボットアニメの主題歌が流れ、曲が終わってもウルスは一言も喋らず目を瞑り顔を天井に向けていた。


「…なあ、俺選曲ミスったかな?アニソンじゃない方が良かったんかな…俺は好きなんやけど。『魔獣戦機ベルガーナイン』の初期主題歌」

「よく分からんし俺もベルガーなんとかを知らないが、あれは噛みしめてるんじゃないか?あんな軽快な音楽あまり聞いたことないし」

「え、うそぉ」

「あと言葉も理解出来なかったし」

「え?そうなん?」


日本語を話しているつもりのミッツは不思議だなぁと思っていると、ウルスが目を見開き一気に問い詰める


「今のは何だあんな高低差のある音程でいて音の調べは崩れることなく調和し尚且つ陽気な曲調決して貴族向きの上品なものではなくあくまで庶民的であるがついもう一度聞きたくなるし口ずさみたくもなるそんな素晴らしい音楽がそちらの世界にはあるのかアニソンという曲名なのかいやその様子だと曲名というよりそういう分類というべきか歌っているであろう者の言語は残念ながら理解出来なかったがその熱き情熱は聞く者に伝わってくるそう言葉ではなく心で想いを伝えるそんな歌なのだな是非他にも聞かせて欲しい!」

「おお、オタク特有の早口。俺の友達にもおったな」

「息継ぎ無く話せるのかあんた…」

「あっ失礼……つい気持ちが昂って…」


咳払いをしつつ、熱弁のために思わず立ち上がっていたウルスは座り直した。

まだ昂っているが少し落ち着いたようだ。


「で、それは何だい?」

「これ?音の魔導書。元々は俺のおる世界…地球の学校で使っとる教科書やってんけど、なんや知らんけど魔導書になっとったらしい。地球の音楽なら基本的になんでも聞けるみたいなんやけど、聞きたい曲思い浮かべながら捲ったらその楽譜が現れて音楽も流れるみたいやわ」

「ほう、そんな魔導書が…」

「まあ音楽プレイヤーみたいなもんかなぁ」

「音楽ぷれいやー」

「もっと小型の音楽再生機」

「もっとよく分からんがまあいい。ウルス、これで注文は受け付けられるか?」

「もちろん!500年ぽっちの寿命でこんな体験が出来るってことだけでも素晴らしいことだよね!僕で良ければ弓矢を作らせて貰うよ!」


早速弓矢の作成に必要な質問をしていく。

まずは使っていた弓矢を聞かれ、腰から小さい木の欠片を床に置いた。


「これが壊れた市販の弓の欠片」

「わあ…ちょっと失礼」


ウルスは額に欠片を当てると、何やらもにょもにょと唱え始めた。

弓矢の欠片は群青の霧状の魔力に包まれ、ウルスの体も薄青の霧状魔力に包まれていく。時々、銀色の粒のような魔力が光の中を弾け回り、まるで夜空と星のように見える。


「これは?」

「これはエルフ族のみ使えるとされる『星属性魔法』……星魔法のひとつ、物魂交信術(エンドメッセージ)だ。壊れた物や枯れた土地の記憶を星を介して読み取ることが出来る」

「星属性?火とか光とかなら分かるんやけど、そんなもんあるん?」

「この世界において星は全てを浄化すると言われる象徴であり、星と繋がりを持つと星属性が使えるようになる。ただ星なんて人の手に届くものでもない。

ところで、エルフは種族の中でも長く生きる種族だろ?昔物好きなハイエルフが長いことかけて魔力を天に伸ばし続けた所、見事とある星に魔力が届き、星との交信に成功。初代星魔法の使い手となったと」

「ほえー」

「理論上は人間族も星魔法を使えるようになるはずだぞ?150年ほど健康に生きて、エルフぐらいの魔力を身につけ、小さい頃から1日の大半を魔力を練り上げ空に伸ばし続ければ星と交信出来る計算だ。やるか?」

「俺まだ帰るの諦めてへんし、魔力もそこまでないからやめとくわ」

「そうか。ちなみに星魔法は魔物に対して効果絶大でな、うまく使うと星魔法で軽く突いただけでワイバーンの脳天に穴が空いたというケースもある。人体や自然に影響はない」

「怖…」


星魔法についての説明を受けていると、霧は消え、ウルスが話しかけてきた。


「うん、丁寧に使ってたみたいだね。最期に納得してないみたいだけど」

「奇遇やなぁ弓、ハニーグリズリーは俺も納得してへんけど」

「なんであのハニーグリズリー、弓矢だけ叩き落としたんだろうな」

「まあええわ、どうせ作って貰いたかったんやし!で、どうなん?」

「うん、さっきの魔法でだいたいの癖は読み取ったからある程度は解った。あとは好みとかを聞いて、5日くらいで出来上がると思うよ」

「好み?」

「そう、いくら馴染みあるように作っても嫌いな色とかだとちょっと気分的に嫌だろう?だから好きな色とか装飾とかを聞いておくよ」

「ほんま?!ほな俺こうして欲しいねん!」


ミッツは気合いを入れて自分の意見をプレゼンし、ウルスは渡り人の発想力に感銘を受けてどんどんと意欲が湧いている。

その様子を眺めながら「ああこれは時間かかるな…」と察したサイはお茶のおかわりを勝手に用意していく。


ちなみにミッツの要望は先程流したアニソンのアニメ『魔獣戦機ベルガーナイン』に出てくる装備の具現化である。厨二病まではいかないが、ミッツもお年頃なのだ。やはりカッコいいのがいい。


魔獣戦機ベルガーナイン

作者がふわっと設定考えた、架空のロボットアニメ。特に覚えなくて大丈夫。


突如世界各国の上空に時空の歪みが生じ、そこから謎の生命体『魔獣』が世界を攻撃し始めた。

秘密裏にその事態を予見していた世界組織『アースシールド』は創設者マイン・ベルガー博士の遺した設計図を元に、世界を守る9機の人型戦闘ロボット、心を持つ『ベルガーナインシリーズ』を作り上げていた!

若者の精神干渉により戦えるベルガーワンからエイトの内8機を選ばれた子供たちが操縦していたが、最後の1機ベルガーナインを操縦出来る適合者がどうしても見つからず早1年。どうにか戦えているが徐々に人類は不利になっていく。

そんな時、日本に『魔獣』が一気に侵攻。ベルガースリー、ベルガーエイトと共に戦っていた自動操縦のベルガーナインが戦闘中に街中へ叩き込まれてしまう。

倒れたベルガーナインの傍には、マンションの崩壊に巻き込まれながらも奇跡的に助かった、虐待されながら暮らす一人の少年がいて…───


人の優しさを知らず育った少年スバルと仮初めの心を持つロボット・ベルガーナイン、そして戦友たちとの絆が今、世界に刻まれる!

『魔獣』に、世界の危機に立ち向かえ!ベルガーナイン!

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