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獣使いたちの冒険者記録  作者: 砂霧嵐
旅と弓と寄り道の犬
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49 結果報告と獣人信仰

「ミチェリアからの報告によると、あの誘拐犯たちは大部分が雇われた傭兵崩れの盗賊。残りが洞窟街ベランザで指名手配中の女盗賊ネルギとその手下。ネルギを潜入させるために5年前雇ったのはピスパ伯爵の使いだったと供述、本当ならポメルくんではなくスコル嬢を誘拐予定だった、だそうです」

「ピスパ……ああ分かった。うちの可愛いスコルを嫁に寄越せと言ってきたあのクソ長男の…」

「嫁って……スコル嬢は確かまだ」

「4歳だが?スコルが2歳の頃に突然スコルの顔を見に来て嫁に寄越せと言ってな。もちろん断ったし殴った」

「うわ…」


ギルドの報告を持ち帰ったサイはミッツを子供たちの元へ先に行かせ、帰ってきたハウダに報告をしていた。

ピスパ伯爵は元々政敵であり、ダルダット侯爵の内情を探るスパイとしてネルギを潜入させていた。そこへ超ロリコン趣味長男(27歳)による逆恨みがついでに重なったらしい。


「そんなわけで誘拐事件についての真相は以上となります」

「ご苦労、後はこちらの領分だ。本当に助かったよ」

「いえ、こちらも無事解決出来て良かったです」

「ああそれと、ポメルのことをくん付けならビグルとスコルもそれに沿った呼び方で構わない。無論私の前でもだ」

「かしこまりました」


ハウダの書斎を出たサイがミッツのとこへ戻る。

シンデレラ朗読会は終わっていて、子供たちからフェリルの話を聞いていた


「へー。じゃあその石像、みんな信仰してはるんや」

「うん!祭壇に奉られてて、季節の変わり目にお祭りもあるんだよ!」

「ただいま、何の話だ?」

「サイお兄さんおかえりなさい!フェリルの狼石様についてお話ししてたよ!」

「おっきいんだよ!」

「狼石様?俺もよく知らないな…前はクエスト終わってすぐにフェリルを出てしまったから」

「そうなんですか。なら…僕うまく説明出来るか分からないから、シャーフ!お願い!」

「では僭越ながら…簡潔に説明させて頂きます」


最早恒例のようにルーズリーフを出したミッツとサイは話を詳しく聞く。

子供たちも復習がてら聞いてはいるが、ミッツの出したお菓子をつまんでいる。


「この狼吼里フェリルは元々獣人が迫害を受けていた時代にダルダットのご先祖様が作られた里だったのです。名前は今と変わらずフェリル。この名は当時の村で信仰されていた狼の王から来ているとされています」

「狼の王?」

「王と言いますか、当時の獣人からすれば守り神のような存在だったとか。何せ里を襲う国や獣人狩りを撃退していた、大きな神々しき白狼だったと聞きますから」

「おお、なら神に準じる存在…準神として奉られても納得だ」

「…あの、サイ。もしかしてこの世界、神さんおるん?実在する?見たことある?」

「………えっ?チキュウにはいなかったのか?!」


急にざわつく室内。子供たちはもちろん、シャーフも驚いている。


「おらん…わけちゃうと思うんやけど。宗教問題はめっちゃ複雑というかナイーブというか、うん。少なくとも日本で、『私は神を実際に見た!』なんて言うたら頭の診察されてまう可能性もあるというか、その割に八百万の神がいてはると言われとったというか」

「実在するしないからの問題ですか、それはまた…」

「この世界では神々は実在するぞ。この大陸から離れた南の島に実際に住んでいて、『神ノ島』と呼ばれている。歴史の節目には大陸に御降臨され、平和となった今では年末年始にシャグラス王国の王都へ吉凶を占いに来られる。王族の一部と俺たちゴッド級は実際に神の一部と話したこともあるぞ」

「そうなん?!え、神さんが島住まい…?」

「まあ神ノ島に着くのは人生を100回分懸けてようやく着く可能性が生まれる、と言われているがな。だが絶対他の奴に『神はいない』とか言うなよ?ミッツは渡り人だから一度は許されるだろうけどな?」


話が脱線したが再びフェリルの信仰へ戻る。


「で、その狼の王は迫害の時代から見事里を守り抜き、役目を終えたかのように石と化し、今も尚その石は里の守り神として奉られておられるわけでございます。これが里の中心にある狼石……神狼王様というわけです」

「へー」

「……ん?」

「どないしたん?」

「神狼王…?」


サイは少し考えると、狼石へ案内を頼む。

ハウダはピスパ伯爵を絞めるための仕事があるため屋敷に残るが、侯爵夫人のアーショと子供たちは狼石の元へ着いていくこととなった。






道中にある冒険者ギルドにサイがミッツを連れ寄り、侯爵家の馬車はフェリルど真ん中にある広場の、更に中心にある丘のような所へ到着した。

小さな丘には白い石で作られた祭壇があり、石の階段の上には木の祠で保護されている立派な狼の石像があった。大きさはあのマンティコラぐらいある。普段から信仰厚いらしく、お供え物もたくさんある。

苔むした狼の形の石は意志があるかのようにどこか尊大な神々しさを放っており、通りすがるフェリルの住民は必ず拝んで前を通っている。


「こちらが神狼王様の石像…通称狼石にございます」

「これが…」

「ミッツ、確認していいか?」

「へ?」

「さっきギルドで写した称号見せて」

「あ、はい」


ミッツは先程サイに言われて書き写した測定結果の称号をサイに見せた。

サイは一つ頷くと、アーショやシャーフたちにも見て貰う。


「こ、これは…!?」

「そう、ミッツはフェリルどころかこの大陸にも縁のない渡り人だ。なのにこの称号…、何かあるとしか思えんだろ」

「確かに!これはサイ様が確かめに来られてもおかしくないことですわ!」

「え、何?俺?」

「称号読み上げてみ」


「え?えーと称号。渡り人は分かるねんけど他が相変わらず分からんなぁ。精霊の寵児やろ、精霊王の加護やろ、導かれた人やろ、神狼王の贔屓や…………あっ」


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