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獣使いたちの冒険者記録  作者: 砂霧嵐
旅と弓と寄り道の犬
46/172

46 ダルダット侯爵家

「ポメル!!!良かった無事で!」

「ポメルおにいたま!よかったぁ!うわあああん!!」

「心配したんだぞお前ー!」

「良かったわ…!本当に良かった!おかえりなさいポメル…!」

「心配かけてごめんなさい!ただいま父上母上!お兄様もスコルも!」


一家総出で玄関の外に待ち構え、真っ先に降りたポメルの無事を喜んでもみくちゃになっているのがシャグラス王国の獣人貴族、ダルダット侯爵一家。

犬系獣人と猫系獣人がもみくちゃになり泣きながらポメルを撫でている。良い仕立ての服が外の地面で汚れるのもお構い無しに家族の無事を心から喜んでいるのが分かる。


「本当に…ポメル坊っちゃまがご無事でよろしゅうございました…。ああ失礼致しました、自己紹介もせず。私、ダルダット家筆頭執事でシャーフと申します。サイ様は以前お会いしたことがあるかと」

「ああ、俺はこの屋敷来たことあるからな。こっちは俺が今パーティー組んでる冒険者だ」

「ビショップ級冒険者でパーティ『世界の邂逅』のミツル・マツシマです。ミッツて呼んでください」

「ミッツ様ですね、かしこまりました。この度はダルダット家のお見苦しい所を…」

「いや構わない。…いや構うっちゃ構うけど……今は急ぎではないナルキス村への小旅行中でな、ちょうどミッツの冒険者としての経験にもなったさ」

「俺女装して変声しただけやけどな」

「機転の問題だよ。結果さえ良ければ女装だろうが何だろうがいいんだ」

「左様です。そろそろ主が落ち着かれる頃ですので先に屋敷の応接室へご案内します。ひとまず少しお寛ぎ下さいませ」


まだ落ち着かない一家の横を通って羊の執事に屋敷の中に案内され、一見シンプルにも見えるが調度品などが綺麗に並べられた応接室でお茶を頂いていると、汚れた服を着替えた一家が訪ねてきた。


「挨拶と礼が遅れて申し訳ない。サイ殿は以前お会いしたがそちらの方は初めてお見受けする。初めまして、私がダルダット侯爵家当主、ハウダ・ダルダットだ。ポメルを守ってくれて本当にありがとう!それから…」

「妻のアーショ・ダルダットですわ。ポメルを救って下さって本当に感謝しておりますの…!詳しいお話を聞かせてちょうだいね」

「初めまして、ダルダット侯爵家長男のビグル・ダルダットです!弟を守ってくれてありがとう!」

「あたちはスコル・ダルダット、でしゅ!ポメルおにいたまをたしゅけてくれて、ありあとうごじゃまちゅ!」

「改めて、ポメル・ダルダットです!本当にありがとう!」


「ご丁寧な紹介、ありがとう存じます。前にもご挨拶させて頂きましたがあれから少し肩書きが変わりまして、改めて挨拶を。

冒険者パーティ『世界の邂逅』リーダーのサイ・セルディーゾ。ゴッド級冒険者です。そしてこちらがパーティメンバーで…」

「初めまして。マナーの前にちょっと常識も怪しいんで失礼あっても勘弁して下さい。

ミツル・マツシマと申しまして、普段はミッツと名乗ってます。ビショップ級冒険者になったばかりの渡り人で、今はサイに色々教えてもろてるとこです。よろしゅうお願いします」

「渡り人!?それはそれは…。冒険者最高峰と異世界からの来訪者に救って頂けるとは………シャーフ!このポメルの件、我がダルダット家に末代まで語り継げるようしっかりと記録を!ああ、それから二人共、私のことはハウダで構わない」

「一冒険者に寛大なるお心をありがとう存じます、ハウダ様」


貴族から名指しを許されるのは、その家そのものに気に入られており今後も便宜を図るという意味である。サイは有難く礼を言い、ミッツにも軽く説明をする。

シャーフは応接室を出てすぐに紙とペンを持って戻ってきた。


「にしても末代て…」

「いやいや、そのぐらい奇跡的な話だ。是非ともポメルをどこでどう助けて頂いたかをお話し頂きたいのだが…、そうだ!シャーフ、サイ殿たちはフェリルに着いてから真っ先にこちらへ来たのだったな?」

「は。私が馬車を最速で走らせ、フェリルの門から一直線にここまでお連れしました」

「そうかそうか!では宿もまだということだし、とりあえず今日と明日ぐらいはこの屋敷へ泊まってゆっくりしてくれ!マナーは気にせずで構わん」

「ハウダ様、我々は急ぐ旅ではありませんから嬉しいのですが、よろしいので?」

「ダルダット侯爵家の恩人を宿が決まってもいないのに追い出すことがどうして出来ようか。まずは夕食の準備をさせるので客室へ。シャーフ、メイドを何人か専属で付けろ」

「既に心得ております。サイ様、ミッツ様。どうぞこちらへ。お部屋は個室を2つご用意しています」


サイたちはそれぞれの客室へ案内され、少し休憩を取ってからメイドに広間へ案内された。

この世界へ来て初めての豪華なディナーを食べながら、ミッツは保護した時のことを、サイは誘拐犯捕縛のことを語っていく。


「…ふむ、大体のことは理解出来た。本当に運が良かったとしか思えないな」

「本当に星のお導きね」

「それにしても、まさかメイド長が裏切っていたなんて…許せないですね父上!」

「ああ、ミチェリアに奴らが着いたら連絡を受けるだろう……我々に敵対する者の名を聞かねばな」

「おそらく明日にはミチェリアへ到着すると思うので、フェリルの冒険者ギルドに情報を送って貰おうかと思ってますが」

「そうか、ではサイ殿。情報を得たら我々にも伝えてくれるか」

「もちろんです」


ハウダ→ハウンド

アーショ→アメリカンショートヘア

ビグル→ビーグル

ポメル→ポメラニアン

スコル→スコティッシュフォールド

シャーフ→羊(ドイツ語)

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