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獣使いたちの冒険者記録  作者: 砂霧嵐
旅と弓と寄り道の犬
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44 冒険者体験 半日コース

「本当に大丈夫?俺あとで侯爵に怒られないかな?」

「本人の意思やもん、しゃーないやろ」

「せめてユニコーンにでも乗せるべきか…?安定性だとスレイプニルとか…」

「いいの!冒険者って馬に乗る人もいるけど大体が徒歩なんでしょ?なら僕も歩く!半日ぐらいなら大丈夫!」

「まあ半日ぐらいやったら許されるんちゃう?昼ごはん食べてからまた歩いておやつ時になったら誰か呼んだら?」

「…そうだな」


まだ悶々としているサイをさておいて、悶々の原因であるポメルは本来なら体験出来なかったであろう冒険者らしい体験にちょっとウキウキしている。しっぽもぶんぶん振ってすこぶるご機嫌のようだ。

サイはこっそり疲労軽減魔法をポメルにかけておいた。


王都へ向かうクエスト中の冒険者たちと途中まで大街道を共に進み、狼吼里フェリルへ向かう街道へ差し掛かる辺りでしっかりと別れの挨拶をした。

冒険者たちを見送ると、サイたちは街道が通る森の中を進んで行く。


「フェリルは森の中にあるんやっけ?」

「うん!ご先祖様が森を拓いて里を作ったんだって!その頃は獣人迫害が酷かった時代とかで、隠れ里みたいに作ったんだって」

「今は獣人でもドワーフでも貴族になれる、魔物のことさえ無ければ一応平和な時代だからな。隠れ里にする意味が無くなったのでこうしてちゃんと街道も通してあるんだ」

「へー」

「まあ森は徒歩だと丸1日と少しってとこだ。おやつ時を過ぎたら、ポメルくんに申し訳ないが急ぐために簡易契約で乗れる獣に来て貰う」

「うん。こんな経験ちょっと出来るだけでも嬉しいから大丈夫。家でもちゃんと剣術とか訓練してるから体力には自信があるんだよ!」

「まあ…そうだよな、貴族だし。俺としては侯爵のことを考えて早くお送りしたいが、しかし、うーん…」

「子供の夢潰すのは如何なもんやろか」

「やろかー」

「ぐっ……そうだな、おやつ時までな」


ミッツとポメルが多数決で勝ち、サイはせめてこれ以上ポメルに危害がないように周りを注意深く見ることにした。






「この白い花は何?」

「これは甘寒百合、花びらは甘いけど身体が冷えてしまうんだ。熱出した患者への処方薬などに使われるよ」


「あの木の実は何?」

「あれはバチバチクルミやな。美味しいけど採取ん時気ぃつけな中身弾けてまうねん」


「あの動物可愛い!」

「ほんまや可愛い!地球で有名な架空のくまさんにちょっと似とる!」

「ミッツ、ポメルくん抱えて走れ!あれハニーグリズリー!可愛い顔(ハニーフェイス)すっごく狂暴(グリズリー)な動物だ!ヒップアタックで木を薙ぎ倒すぞ!」


「これは何?」

「…これは…その…」

「大人になれば意味の分かる歴史ある品です。さあ行きましょう」

「なんで急に敬語になるの?ねぇこれ何?」



途中、草木についての質問や割とやばい動物との遭遇、大人のちょっとしたアレなものをやんわり回避したり、なかなか冒険者らしきことをこなしていると明光星が2つになっていた。そろそろお昼ごはんである。

今日はポメルもいるので一から野外料理をすることになった。


「どないしよかなー。五目鹿もまだあるし牛肉も豚肉も鳥肉(鶏ではない)もあるんよな…あとちょっとだけ魚もあるし」

「何でもいいけどチキュウの料理食べたい!出来ればお魚よりお肉!」

「こっちとあんまり変わらんと思ってんねんけどなぁ」

「シチューもチョコレートも初めて食べたよ」

「そうだそうだ」

「うーん…ちゃんとした台所とかやったら色々凝ったもん作るんやけどな。適当に作るわ」


旅が決まってから急遽2日かけて煮込んだ野菜スープの鍋を取り出しながら、貴族の子供でも満足するようなメニューを考えつつミッツは準備を進めていく。

この間にサイはストレージポーチから折り畳みテーブルや折り畳み椅子を取り出し、ポメルもちょっとだけ設置をお手伝いした。


30分後、「米…!米があれば…!」と悔しそうにしながらミッツは鳥挽肉たっぷりの半熟オムレツと野菜スープとパン、そしてポメルにだけ木の枝で作ったお子様ランチ風の旗をオムレツに付けてテーブルに置き、初めて見る料理とよく分からないけど自分にだけ付いてる特別な旗に興奮したポメルであった。尚、旗の絵はミッツの手書きポメラニアン。

この世界に卵料理はあまりレパートリーがない。サイも大分喜んで、二人してミッツに礼を言ったがミッツ本人は「お子様ランチといえばオムライスなのに…!」と悔しそうにしていた。


ちなみにまだ米は見つかっていないし、サイたちも知らない。

シャグラス王国には存在せず、大陸最南端にある孤島連邦に属する小さな国にのみ存在することを知るのはまだまだ先の話である。



鶏肉ではなく鳥肉。この世界ではニワトリによく似た、ニワトリを風船のごとく膨らませたようなマルマル鳥という鳥の家畜がいる。

卵はフルフル鳥という家畜が産む。めっちゃフルフルしながら産む。

牛と豚は普通の家畜とこの世界特有の家畜、両方がいる。


あとお子様ランチはオムライスだと勝手に思ってます。

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