4 お互いに知らない国
「サイさん、あとシルフちゃん、ちょっと聞いてええ?」
「ん?うん」
「…俺の知っとる国の名前なんぼか挙げるから、知っとるのあったら言うてな」
「分かった」「いいヨー」
覚悟を決めたのか、深呼吸をしたミツルが真剣な顔で向き直るのでサイたちも答えられるものは答えるようにしようとした。が、
「なるべく小さいとこから聞こ……スイス」
「うーん…」
「ほな…ベトナム!」
「知らナーい」
「…うん、ア、アメリカ!」
「アルテミリアなら行ったこともあるが」
「アルテ…?アメリカも知らん?…いや後回しや、イギリス!スペイン!えーとえーとヨーロッパ!!」
「うーン?」
「ヨーロッパは国ちゃうかったわ、次、次で最後にする。……中国。もしくはチャイナ!」
「…分からないな」
「……中国も知らんのは流石に認めざるを得んなぁ…」
このようにサイたちは初めて聞く名前ばかりである。
途端に目に涙を浮かべそうになったミツルは目を片手で押さえ俯く。
サイがまた慌てそうになるが空いたもう一方の手で止め、5分程経ってからミツルが再び語り始めた。
「大丈夫か?」
「ありがとさん。ええねん、なんとなく分かってたわ」
「分かってた…?」
「いやとにかく!次サイさんらが知ってる国の名前挙げて!」
「…分かった。まず大陸最大のシャグラス王国。」
「あかんもう知らん…」
「は?シャグラスを知らない…?」
「え、ええから次!次の国!」
「アルテミリア…は先程言ったな。ではファジュラは?遺跡とダンジョンと浪漫の国ファジュラ。」
「うわダンジョン出て来た…!ダンジョンなんてほんまにあるんや…!でも知らん!」
「これも知らないとなると…あとは小さな国や島が集まった孤島連邦くらいだな。そもそも大陸の名前を知っているか?ここはユラ大陸だが」
「うーン、アメリカ?とかチャイナ?とか、孤島連邦にあルのかナ?私も知ラないけど」
「いや、たぶん無いんやろな」
きっぱりと言いきったミツルはまた考え込む。
「つまりお互いがお互いの国を知らん言うことやな?」
「そうなるな…信じ難いことではあるが」
「いや俺も信じたないけど…少なくとも俺がさっき言うた国の一部は言うほど小さないし、なんなら大国やわ。」
「だが、ユラ大陸には3国と細々とした国しかない。他に大陸があるのかはまだ解き明かされていないし、もしかしたら別に大陸があるのかも…」
「…一つ考えられんのは…」
考えがまとまったミツルはこの場での最後の質問をサイにぶつけた。
「サイさん、なんかこう、別の世界からこの世界に来たって話とか聞いたことある…?」